家族は夫・4歳息子・豆柴きなこ。うつ病療養中。目標は『自分に優しく過ごせるようになるこ…

家族は夫・4歳息子・豆柴きなこ。うつ病療養中。目標は『自分に優しく過ごせるようになること』

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【小説】ワーママ!vol.2-2

前回の話はこちらから。 その後も、何度か“亜美さん”の都合がつかない時にシッターとしてアルバイトに呼ばれた。真波が予想以上に公佳に懐いたという点も大きかった。 ほぼ毎日、真波から「今日はキミちゃんは来ないの?」と聞かれると百合香に苦笑まじりに言われ、とても嬉しかった。 百合香を好きということもあったが、それ以上に真波が可愛く、成長を見守りたいという気持ちも大きくなってきていたのだ。 また、バイトを続けるにつれ、真波が眠った後にリビングでお茶を飲みながら昼間の報告をするのが常

    • 【小説】ワーママ!vol.2-1

      2.田嶋公佳 二十五歳 パートナー・子供有り 「キミちゃん、おかえりなさーい!!」 玄関を開けると、真波の元気な声が出迎えてくれた。 「真波(まなみ)、ただいま。お米研いでおいてくれた?」 「バッチリだよー。あ、ママは打ち合わせで遅くなるって。さっきLINEあったよ」 「うん、私にも届いてた。てか、グループLINEじゃん。じゃあ先に私達だけで食べてようか。今日は鍋だよ」 「やったあ!鍋の美味しい季節になってきたもんね!」 言うことがどんどん一丁前になってきてるなあ…と苦笑

      • 【小説】ワーママ!vol.1-2

        前回の話はこちらから。 復帰して最初の一年は、はっきり言って殆ど記憶が無い。 咲良は毎週のように風邪を引き、発熱し、時に感染症にかかって保育園を休んだ。その度に映美は早退してお迎えに行き、咲良が回復するまで会社を休むことになる。 運良く病児保育の枠が取れても、病院を受診した上で預けに行かなくてはならない為、遅刻は免れない。病院が混んでいた時などは、お昼頃に這々の体で出社し、休憩を取る暇もなく数時間働いて帰社…なんてこともあった。 ウイルスの洗礼は本当に怖いよ、と子持ちの友人

        • 【小説】ワーママ!vol.1-1

          1.国立映美 二十九歳 シングルマザー 「申し訳ありませんが、お先に失礼します!」 国立映美(くにたちえみ)は同僚達にほぼ九十度の角度で頭を下げると、素早く職場を後にした。 昼休みが終わり午後の仕事に取り掛かったところで、娘の咲良(さくら)の通っている保育園から映美の携帯電話へ着信があった。 咲良が発熱したので迎えに来て欲しいという連絡だ。 片付けなくてはならない仕事は幾つも残っていたが、同じ班の同僚に謝罪しつつ、分担してやって貰えるようお願いした。 「こっちは任せてくだ

        【小説】ワーママ!vol.2-2

          【小説】しあわせ

          私は幼い頃、「しあわせ」を「しやわせ」と言っていた。 美味しいものを食べた時。 遊園地に行って楽しかった時。 欲しかったものを買ってもらった時。 「しやわせ~」と言いながら“にしゃっ”と笑った私の顔を、父も母も微笑みながら「とっても可愛かったよ」と語ってくれた。 私が就職した年、父母は交通事故で他界した。 実家のクローゼットに仕舞われていたアルバムには、「しやわせ」な顔をして笑う私の写真が年齢順に綺麗に整理されていて、ページをめくる度にはしゃぐ私にカメラを向けていた父の姿と

          【小説】しあわせ

          【小説】あの日の君

          今日も暑い。 外ではシャワシャワシャワと蝉の声が響いている。 まるで木そのものが鳴っているかのような大きな音だ。 その音を聞きながら、千鶴子(ちづこ)は線香を灯した仏壇に頂きものの最中を供えた。 夫の敏明(としあき)が亡くなって5年が経つ。 定年退職後も嘱託として勤め、その後も雇いのマンション管理人の求人を見つけて働いていた。亡くなったのは、そこを退職してすぐのことだ。 「散歩に行く」と家を出た途中で倒れ、千鶴子が病院に駆けつけた時には既に意識が無く、さよならを言う間もない

          【小説】あの日の君

          【小説】おにぎり屋一粒種

          「はぁぁ、つかれた…」 無意識に声が漏れる程に、美帆は疲弊していた。 担当している仕事にトラブルが発生し、ここ10日は終電ギリギリでの帰宅が続いている。 夕飯は、同期の夏希が差し入れてくれるコンビニ弁当かファストフードだ。 外に食べに行く余裕が無い訳ではないが、少しでも早くトラブルの元となったバグを修正したい。 なので、夏希の好意はとてもありがたいし、毎日違うもの(一昨日はハンバーガーセット、昨日はパスタとサラダ、今日は幕の内弁当)を選んでくれる気遣いもとても嬉しい。 けれ

          【小説】おにぎり屋一粒種