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【後編】徳島県上勝町にてゼロ・ウェイストを考える


前編では上勝町がどんな町か、そしてどんなごみ処理システムを採用しているか述べた。
後編ではそれがなぜ成り立つか、最後にリサイクルについての私見を述べた。

ごみの分別に協力的な町民たち

 さて、上勝町の町民たちがなぜ45種類ものごみの分別に協力するか疑問に思わないだろうか。
 私の住む東京都では、ごみの分別は「可燃ごみ」「不燃ゴミ」「大型ごみ(粗大ごみ)」の3種類に分けられる。対して上勝町は13種類45分別である。これだけ多くの分別が実現できるのは単に町民のモラルの問題ではなく、3つの理由があると藤本(2012)は述べている。

広々とした敷地に複数の籠が設置され、そこにゴミを入れていくことで分別する仕組みだ
公式サイトより引用
ほとんどのものがリサイクルされるため、可燃ごみはこのような表記をされる。印象的だった


 一つに、「いつでも出せる」という利点がある。上勝町では、いわゆるごみステーションはゼロ・ウェイストセンターだけで、自分達でごみをここまで持ち込む形式をとっている。町民が少ないためごみも少なく、ここで1年間貯められたのちそれぞれの処理場に運ばれる。つまり、収集日などにとらわれず「いつでも出せる」のである。

 第二に、ごみを「その場で分ける」ため、家庭での分別と質的に異なること。

 そして第三に、「ゼロ・ウェイストセンターが日比ヶ谷にあること」だ。というのも、先に述べた通り上勝町では平成9年頃まで野焼きが行われていた。その野焼きをしていた場所が現在のゼロ・ウェイストセンターのある場所と同じ日比ヶ谷なのだ。つまり「日比ヶ谷までごみを持っていく」ことは町民にとって元々当たり前であり、野焼きを分別に変えただけなのである。
 以上の理由から町民はゼロ・ウェイストに取り組み続けている。

1990年代の日比ヶ谷野焼き場
「上勝町ゼロ・ウェイストの歴史」より引用

リサイクルはどこまで必要なのか
─バーテンダーとしての私見

 ここまで上勝町のごみの分別、もといリサイクルについて述べてきた。
カクテル制作にあたり、リサイクルについて調べるうちにバーテンダーにできることの少なさを感じるようになった。もとより、私はサスティナブルカクテルに懐疑的であったが、よりその気持ちを強める結果となった。

 まず、リサイクルやゼロウェイストの目的は最終処分場の圧迫を遅らせることだ。
そして、処分場を圧迫しているのは生ごみではなくプラスチックなどの不燃ゴミである。生ごみは小さな灰になるためそこまで場所を圧迫しないし、それでも気にするのであればコンポストで堆肥化すれば良い。
生ごみはいくら出してもいいとは言わないが、余ったフルーツの皮などを使用することがサスティナブルなのか、違和感を感じざるを得なかった。確かに二次利用になってエコかもしれないが、質が落ちるのであれば意味がない。

 実際、資源のリサイクルでも質の低い二次利用や買い取り手のつかない資源が問題になっている。「リサイクルの善信仰」により、リサイクルすること自体が目的になっていないだろうか。革新的で美味しく、不必要な手間をかけないサスティナブルカクテルがあるとしたら、是非飲んでみたい。 

《参考文献》
『科学的に見る SDGs時代のごみ問題』, 松藤敏彦,2019
『徳島県上勝町における廃棄物政策の歴史と「34 分別」の背景』, 藤本延啓,廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 23(0),57-, 2012
『徳島県上勝町における地域ブランドの確立と移住者による認知』,石川菜央,広島大学総合博物館研究報告,7号,p1-14,2015
『徳島県上勝町における阿波晩茶の商業化と社会変容』,水上亮・木村自,応用社会学研究,63巻, p175-183,2021
上勝町人口状況(住民基本台帳), http://www.kamikatsu.jp/docs/2011012800173/(最終閲覧日12/12)
上勝町ゼロ・ウェイスト政策, http://www.kamikatsu.jp/zerowaste/sengen.html(最終閲覧日12/12)

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