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How wonderful life is ...

そんなに優しくて、やわらかくて、あたたかくて、荒風の吹く現代を生きるのも大変でしょう。

それでも彼女は、逞しく社会を泳いでいる。

自身を突き動かす音楽を糧に。

学び舎での出会い。声を掛けてくれたのは彼女だった。

それから今日まで、一貫しているのは音楽が好きで、歌っていたいという意志。

カラオケの一室は、いつだってライブハウスのようだった。

彼女の歌声は、深く、澄んでいて、官能的で、力強い。

蓮の花咲く街はずれのカフェで、その晩すこしだけ泣きそうになった。

写真を撮る約束をしていたから、理性を保つことができた。

選曲も、空間作りも、熱のこもった作品のようだった。

スカイランタンの舞う空みたいな、ぬくもりに満ちた穏やかな世界観。

厚みのある、愛の詰まった濃密な時間。

消耗する闘争や沈殿する哀しみの対極で、平和を願い、生命を助く。

音楽のタイムカプセルは、みんなの内側で期が熟すのを待つ。

パワーがほしいとき、勇気がいるとき、傷を癒すとき、力を発揮する記憶のなかの声。

聴いていないあいだにも、その響きは細胞に活力を与え続ける。

突き動かされる衝動は、きっと誰にでもあって、つつかれるのを待っている。

機会はいつも、その扉を開いて待ってくれている。

絶景に言葉を失う瞬間、芳醇な美味に酔いしれる夜、黄金の陽光を全身で浴びる夏の朝。

感動や慈愛や、ほんとうはそういうものに満たされていたいのに容易くないね、原始の時代から。

ーいろいろあるけど空が青いだけで素晴らしいじゃないー歌詞を語る彼女の斜め横顔はぴかぴか光ってた。

ーWhat a Wonderful World ♪

身体があるだけで、人間はもう不自由。

痛みを感じなくてはならないから。

音楽の間、解き放たれる。

どんな時代になっても、木の棒と石と使ってでも、人は音楽を奏でるのをやめないはずだ。

音楽は祈り。宗派を超えた言葉と音のイリュージョン。

そこに居合わせた人々で共有するエネルギー。

頭のなかで創造する映像は、それぞれちがっていたとしても、誰もがみんなやさしい顔で聴いてた。

それを撮るのを忘れたのは、失態の一種かもしれないけれど、

自分もそんな表情でいたんだと思うと、うれしい。

形のないものに、時間やお金をかける人々は、未来もきっといなくならない。

触れないし、残せないけど、実感としてその存在を知っているのは「時間」。

どんなふうにも色付けられるし、味わいの深さも自由自在に変えられる。

時間の使い方は、命の燃やし方と同義だ。

瞬きをするその間にも、こぼれ落ちるように流れゆく。

そんなことを思わせてくれる彼女の歌声は、目が覚めてからも奥深くで響いたまま持続して点火してくれる。

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