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嗚呼、憧れのアメリカ~NY編(2)

宿泊したホテルは、セントラルパークにもタイムズ・スクエアにも歩いていける、便利な場所にあった。女一人旅で、積極的に動くためにも、治安のためにも、ホテルの立地条件はかなり重要だ。

夕方チェックインした後、まず出かけたのはタイムズ・スクエア。夜でも人が多く、明るいから、女一人で歩いても大丈夫だろうと思ったのだ。
実際行ってみると、思いのほか周りに観光客が多かったことに安心した。アメリカ人でも田舎から来たんだろうな、と明らかに分かる人たちも多かった。
NYという街にビビるのは、私のようなアジア人だけじゃないんだ。自分の国であっても、この大都会にビビるアメリカ人もいるはずだ、と思ったら、急に気分が楽になった。
だから、最初にここに行ったのは、正解だっただろう。ウォール街で闊歩するニューヨーカーに出くわしていたら、きっともっとビビっていたハズだ。

かといって、すでに夜なのだから、油断して長居は禁物。簡単に食事を済ませて、早々にホテルへと退散した。

翌日は、いよいよSATCロケ地ツアー。
逸る気持ちを抑えて、10時の集合時間の前に、セントラル・パークを散歩することにした。朝のセントラル・パークは、明るく、爽やかだ。こんな緑豊かな公園が、大都市の真ん中に広々と横たわっているのがすごい。

映画やドラマにも何度も登場する有名な公園を、自分が歩いている、それが嬉しくて興奮した。いっぱしのニューヨーカーになれそうな、そんな錯覚さえ覚える。

初の地下鉄に乗って、集合場所へ行き、ガイドの日本人女性、ツアー客の女性3人と男性1人のメンバーと落ち合った。友達同士の女性2人組を除いた、私と他の2人は1人での参加。こんなツアーに来るのは、女だけだろうと思っていたら、まさかの男性もいた。この行動力が、SATC好きの共通項かと思ったら、なんだか嬉しくなった。

ロケ地ツアーは、基本的に地下鉄やバスを利用して、点在するロケ地を歩いて巡るものだった。ホンモノのファンが自分で歩いて作った渾身の地図を元にしているだけあって、マニアックなロケ地を効率的に見られるようによく工夫されたツアーだった。
こういうツアーって、ホントにファンじゃないと、まったく意味不明な場所へ行く。ドラマを観ていると、「あの時入った店の、あのドアー!」とか、「サマンサが落ちた穴!!」とか大興奮なのだけど。

ニューヨークの人たちも、こんな観光地でもない場所で写真を撮りまくって、興奮しているアジア人たちを見て、不思議だったに違いない。

ただ、ほぼ観光地化されて、付近の住民からも苦情が来るくらいの名所がある。それが、主役のサラ・ジェシカ・パーカー演じるキャリーのアパートメントの玄関だ。ここは、その苦情のせいで、長居はできず、もちろん騒いだりすることもできない。確かに、そこは閑静な住宅街の一角にあり、住民にしたら、観光客が頻繁に訪れるのは迷惑以外の何物でもないだろう。

昔はこの階段に腰かけて写真を撮ったりできたらしいが、すでに立ち入ることができないように、チェーンが付けられていた。仕方ないとは思うが、ちょっと残念だった。キャリーがここに腰かけての名シーンが数々あるのに。
ここに座って、キャリー気分で写真撮りたかったー!
こういうことがあるから、ロケ地ツアーはマナーがすごく重要だと思う。近年、日本でもアニメの聖地が観光地化していると聞くが、ファンならマナーを守って、訪れるべきだ。そうやって、聖地を守っていくのだ。

ツアーは、五番街近くのプラザホテルの前で解散となった。
ここも、キャリーが自分と別れたMr.ビッグと若い女が結婚すると知り、彼を振り切って颯爽と歩いていこうとする名場面のロケ地。あの回の、自分を「じゃじゃ馬」に例えて、「私は男の言いなりになるような女じゃない」と決意をあらたにするキャリーの姿がカッコ良くて好きだ。

ツアーでニューヨークの街を歩き回ったおかげか、到着した時の委縮していた気持ちはすっかり消えていた。
この街は、訪れる人に覚悟なんか求めていなかった。

あなたは好きなようにこの街を歩けばいい。
あなたが好きなように生きればいい。

そう言われて、すべてを肯定されている気がした。だって、街行く人たちは誰も、他の人を気にしていない。皆、オシャレなわけでもないし、人種だって、懐具合だって、千差万別の街。他人の目ばかり気になって、他人との距離感に気を遣う日本の街より、ここはずっと自由だ。

ニューヨーク滞在2日目にして、すでにこの街が好きになっていた。

つづく。

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