見出し画像

嗚呼、憧れのアメリカ~NY編(1)

LAでの1か月滞在を経ても、なお、アメリカへの憧れは消えなかった。ドラマ「Sex and The City」シリーズにハマったこともあり、次はニューヨークだ!と密かに思い続けていた。

でも、2001年入社一年目の私に飛び込んできた同時多発テロのニュース。ニューヨーク行きはしばらく先になりそうだ、と思った。というか、あの時、飛行機に乗って海外に行くこと自体が怖くなった。異常な緊迫感が世界を覆っていた。アメリカ合衆国という大国を揺るがしたテロは、「戦争」という現実感を伴って、全世界に伝播した。

実際、9.11テロ以降、今でも海外旅行はずいぶん窮屈になっている。搭乗前の保安検査は厳しく、機内に水のペットボトルさえ持ち込めない。透明なジップロックは旅の必需品となった。それでも、海外旅行への興味は尽きず、リスクや不安を感じながらも、飛行機に乗ることは止められないが。

やっと、ニューヨークに行く決心がついたのは、2009年秋。
9月に「シルバーウィーク」と呼ばれる大型連休が誕生した年だ。この連休にどこかに行こう、と思った時、夫は休みがとれないと判明した。彼の会社は、毎週土日は完全に休日になる代わりに、祝日は休日にしていなかった。
だったら、一人で行けばいいじゃないか、と思った。そして、一人で行くなら、公共交通機関で容易に移動できるような都市が良い。よし、NYだ!

ニューヨークでしたいこと、を考えた。
自由の女神やタイムズ・スクエアなど、名所は当然行くとして、前述のドラマ「SATC」のロケ地を見て回りたい。そこで、このドラマのファンでロケ地の地図を作った人がいて、彼女が企画したロケ地ツアーに申し込んだ。彼女は日本在住だが、NY在住の友人がガイドとなって、ロケ地を巡るというものだった。2008年の映画公開を経て、翌年公開される映画第二弾を撮影中だったこともあって、当時私のSATC熱は俄然高まっていた。
今回の旅はこれがメイン!と決めた。

SATCは、私の海外ドラマ人生で、一番好きな作品だ。
全テレビシリーズと映画2作品のDVDを持っているし、大学時代からレンタルビデオをこつこつ借りて観てきた。
自立した30代の女性4人が、性生活をあけすけに語る、ということで注目を浴びたり、特に男性から揶揄されがちなドラマだが、内容はもっと深い。人生とは?本当の愛とは?女性が生きていく上での障害や克服の仕方を、きちんと描いているのだ。セックスだけを描いているのではないが、それが重要なファクターであることは、現実生活と同じではないか。
女性もセックスが好きだ、そう言ってもいいんだ、と社会に認めさせた、あるいは認めさせようと試みた作品だと思う。少なくとも私は、それでいいんだと思えた。私の下ネタ好きは、このドラマによって免罪符を与えられた。

空港からホテルまでの送迎車の中で、ガイドから説明を受けながら、興奮した。イエローキャブ、オシャレなカフェ、地下鉄の駅、目に入るものすべてがカッコよく見えて、写真を撮りまくっていた。

ちなみに、写真を見返したら、近年ハマっているgleeの看板が見切れていた。当時はこのドラマの存在さえ知らなかったから、この時から縁があったようでちょっと嬉しい。

外国で空港から街に到着すると、いつも新鮮な感動があるが、ニューヨークは他の都市とはまたちょっと違う気持ちだった。
自分にこのニューヨークを歩く資格があるのか、車窓から見える風景に、それを問われている気がした。「お前は覚悟があるか?世界一タフなこの大都市で、一人歩くことができるのか?」と。別に住むわけじゃないのに、立ち入ることさえ生半可な覚悟じゃ許さない、と言われている気がしたのだ。

そんな緊張感を持って、私はニューヨークの地に降り立った。

つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?