3月③ヤング・アダルト・ニューヨーク

無理して若者に合わせるのとか、ダサいよね。
40代後半になる旦那はよくそう言う。30代後半の私は、正直まだあんまりピンときていなかった。

40代前半の子ナシ夫婦が、25歳の夫婦と出会う。同世代の友人たちの子育て自慢にうんざりしていた彼らは、個性的で自由な感性を持った若者たちに夢中になる。夫婦はともに、若い夫婦の趣味や活動、オシャレなんかに影響を受けマネするのだ。

こういうおっさんおばさんって痛いよね、と言ってしまえるならまだ若い。私は、怖いと思った。自分もやりかねないということが。旦那がよく言っていた冒頭の言葉は、自分への戒めでもあったのだと気づく。

途中までうまくいっていた若夫婦との交流だが、徐々に様相を変えていく。実は野心家だった若い男(映画監督志望)は、40代夫婦の妻の父親(映画監督)とコネクションを作るために、彼らに意図的に近づいたと判明するのだ。
自分が成功するために、彼らを利用し、モラルに反するようなこと(ドキュメンタリー映画のやらせ)だって平気でやる。そんな本性に気づいた40代夫はすべて暴露し、若い男を貶めようとする。

しかし、若い男のやり方は周囲に許容され、まんまと復讐に失敗する。その時の情けなさったらない。この主役の40代夫を演じるのはベン・スティラー。最近、情けない中年を演じることが多いが、今回もこの役にピッタリである。顔か?情けないフェイスなのか?

それでも、美しい妻ナオミ・ワッツは支えてくれる。夫を慰め、自分たちらしい道を探していこうとする。1年後、養子にする子供に初めて会いに行くところで映画は終わるのだ。その時見ていた雑誌で、若い男が成功していることも知らされる。だが、ベン・スティラーはもう若い男を恨んでいない。
「悪魔が世に放たれたわね。」という妻に向かって答える。
「あいつは悪魔じゃない、ただ若いだけだ。」

そう、若いから、許されることがたくさんある。
若いからこそ、無礼でも、人見知りでも、野心を隠さなくても、大口たたいても、許されちゃう。でも、必ず人は年をとり、経験値が増えることによって、そのままでいることを恥ずかしいと思うようになる。
そして、若い人たちを許容する。自分たちも通ってきた道だから。きっと彼らもそのうち気づくはずだから。

無理して若い人に合わせるのは、確かにダサい。
だから、そろそろ40になる私がこれからやるのは、若さを許すことだ。
20代の人に何か文句を言いたくなったら、心の中でこっそり言おう。
今は、それでいいよ。」って。

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