余興

忘年会で、余興を披露することになった。
世間ではよく聞く話だが、私には初めてのこと。

今年の上半期の業績が県内で最も良かったということで、三課を擁する当事業所が最優秀事業所賞とやらをもらえた。その副賞でもらったお金を使うべく、三課合同の忘年会を催すことになった。

そこで、事業所長に呼ばれたのが、私とMくん。
幹事と、チームごとに発表する余興の仕切り、を命じられた。
たぶん、直属の上司である所長から見て、目立ちたがり、仕切り屋の我々に白羽の矢がたったのだろう。

私は嬉しかった。
世間でよく言う、忘年会の余興ってやつ、やれる!!
血沸き肉踊る。

そして、その日の夜すぐに、何をしようか考えた。
私のチームは、事務員が7人。そのメンバーをフルに使って、何か面白いことを。
所長に与えられたテーマは、「団結」

それで思い付いたのは、バンビーノのダンソンをアレンジしようということ。
ダンソンで狩猟(ニーブラ)する側に2人、私を含めた4人を次々にニーブラしていく。もう1人の女子は音楽係だ。

本物のダンソンでは、動物を狩猟するという設定だが、それを現実の人間を狩猟するというものに置き換える。
ニーブラする時に、それぞれの人間の特徴を活かした方法でやるのだ。
その特徴が、同じ職場で働く観客たちには、「あるある」となって、面白いはずだ。

もちろん、60人近い参加者の中には、ダンソンを知らない人も、我々の特徴だっていちいち知らない人もいるだろう。でも、全員にウケなくても、極内輪ウケでもいい。これなら、余興として、成立する。イケルぞー!

寝る前にベッドの中で考え出して、眠れなくなるほど、興奮した。
早く誰かにこのアイディアを伝えたかった。
本当に面白いのか、賛同者が欲しかった。

翌日、ダンソンする役にと考えた後輩を呼び出し、話してみた。不安だったが、彼は笑ってくれ、協力を快諾してくれた。
それに気分を良くし、チームの他のメンバーからも賛同をとりつけ、練習を重ねている。

自分のアイディアが形になること。それがこんなにも楽しく嬉しいことだとは。初めて知った歓び。
早く発表したい。
もうすべっても、多少失敗しても、いい。

幹事を一緒に進めているMくんは、別のチームを率いている。彼とは、お互いの余興を秘密にしているが、最大のライバルだ。
5チームが発表する余興は、最優秀チームに賞品が贈られることになっている。
賞品はもちろん欲しいが、一番面白い、一番がんばった、という評価・栄誉が何よりも欲しい。

そんな中、他のチームが「ビンゴ大会」をするという情報を入手。
は?ビンゴって、どういうこと?それは余興じゃねぇよ。しかも、2時間の忘年会で5チームも余興するのに、お前らだけで尺どんだけ使う気だよ!

Mくんと話し合い、ビンゴ大会はナンバー抽選会方式にするよう画策。時間も15分以内で、とそのチームリーダーに指示した。

我々のダンソン、さすがにビンゴ大会には勝てると思うが。
てか、勝たなきゃおかしいよ。怒るよ。

さぁ、忘年会は今週末。
熱い戦いの火蓋が切られる。
(こんなに熱くなってるの、私だけかも……)

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