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親子の最終(結)戦・3話


~いつかくるその日の前に
  幸せなお別れの準備を始めよう〜


【免許の自主返納】

運転歴がどんなに長くても、
運転の腕がどんなによくても、
加齢とともに感覚は確実に衰えてきます。

視力、聴力、注意力、判断力、予見力、操作行動力…それらを統合して発揮するのが車の運転です。

これらの能力低下による高齢ドライバーの交通事故が後をたちません。

アクセルとブレーキの踏み間違え、逆走、駐車時の物損など、自損事故で済めばまだいいですが、もし人身事故を起こし加害者となってしまったら…

恐ろしいですよね。
しかし本人は自分は大丈夫だと思っています。

事故を起こしてからじゃ遅いのです。
それを分かってもらうためにまわりの人はどうしたらよいでしょうか。

いつ、どんなタイミングでどんな風に言えばいいか、悩んでいるうちに日はすぐ経ってしまいます。
免許返納はなかなか難しい問題です。
一人で悩まず、家族で話し合ってみてください。

そこで、いつどこで、誰が、どのようにお話するのがいいか具体的に提案させていただきました。
家族会議の参考にしていただけると幸いです。


●いつ

お互いにリラックスしていて、時間にゆとりがある時がおすすめです。
例えば、外を散歩しているときや、食後のゆったりとしたとき。(食前は気が立っていることが多いため避けたほうがよさそうです)
次の予定が入っていないとなおよいでしょう。

切り出すタイミングは、
ニュースで高齢ドライバーの事故をいっしょに見たときは絶好のチャンスかと思います。
『お母さん(お父さん)はどう思う?』というように、まずは本人の気持ちを聴きましょう。

離れて暮らしている場合、お盆休みや年末年始の帰省時にお話するのがよいかと思います。

高齢ドライバーのニュースを見て『早ければ早い方がいい!今言わなきゃ!』となる気持ちもわかりますが、そこは落ち着いてください。
急に電話やLINEでその話を持ち出されても、親は頭がそのモードになっていないので強いストレスを感じるでしょう。

相手は責められているような気がして、防御姿勢をとります。
一度そうなると、例えあらためて話を切り出しても、『また責められる!』と警戒されてしまうため、こちらの心配している気持ちが伝わりません。

●どこで

一番リラックスできる場所、なるべく自宅がよいでしょう。
旅行先や外食中は、せっかくの楽しい気持ちに水をさしてしまう可能性があります。
といえ、あなたのカンで今ならいけそうな気がする!と思われたら旅行中でも外食中でも切り出してもいいと思います。

●誰が

こういった話は長子が代表して…と思いがちですが、子どもの中でもとくに親が一番話しやすい人がよいでしょう。
親と同居しているからといって必ずしも同居している子どもが話しやすいということはありません。
離れて暮らしているほうが意外と話しやすいこともあります。
きちんと兄弟間で話し合って誰が適正か決めることをオススメします。
くれぐれも思いつきの見切り発車で話したりしないように。

代表者が切り出したとしても、援護射撃もときにはは必要になります。
よってたかって説得するということではなく、隣で黙ってうなずいたり、わたしもそう思うよ程度でよいかと思います。

また、すでに免許の自主返納している知人がいる場合、その人から話をしてもらうことも有効です。
意外と困らないよ、むしろお金が浮いたよ、メンテナンスもいらないから楽だよ、など、メリットを話してもらうとよいでしょう。

●話の内容

~車はどんなときに乗っているのか聴く〜

・通院
・買い物
・仕事
・送り迎え
・お友だち付き合い
・銀行や郵便局へ行く

だいたいこのような用事に車が必要なようです。

最近は高齢者のための定額タクシー乗り放題サービスなどが始まっているところもあるようです。
地元でどのようなサービスがあるか調べてみましょう。

~返納特典の説明〜

タクシー代10%割引
ホテル、レストラン利用料が10%割引
路線バスが無料
お買い物したものを自宅に無料配送
など、様々な特典が得られます。

詳しくは警視庁ホームページをご覧ください↓


●言い方、お願いの仕方

『あなたは〜』で始まる言い方をyouメッセージといいます。
『(あなたは)もういいかげん歳を考えなよ!』
『(あなたは)危なっかしいのよ』
『(あなたは)頑固なんだから』
『(あなたは)事故を起こしたらどうするの?』
『(あなたは)早く返しなよ』

このような言い方だと、ただ責められた印象を持ってしまい、素直に話を聞けなくなってしまいます。
そこで、相手がお願いを聞き入れやすい言い方をご提案します。

『わたしは〜』で始まるIメッセージです。
上に書いた先程のセリフをIメッセージに変換してみましょう。

『(わたしは)お母さんが前よりも足腰が弱くなっているのが分かるからとても心配なの』

『(わたしは)お母さんにとって車は大事だということはよく分かってる。今急に言われてもすぐには答えられないだろうから、よく考えてもらえると嬉しい』

『(わたしは)もしお母さんが事故を起こして死んでしまったりしたらすごく悲しい』

『(わたしは)お母さんには健康で長生きしてほしいと思ってる』


いかがでしょうか?
歯が浮くような臭いセリフになってしまいますが、これくらい丁寧に言うことがポイントです。
日本人はつねにセカセカして時間に追われているので、短縮言葉が流行る国です。
【ツーカーの仲】ということわざもあるくらい。
しかし、なんでも省略してしまうとその言葉の意味も無くなってしまい味気のないものとなります。

大事なことを伝えるときは、恥ずかしくても、面倒くさくても丁寧に伝えた方が相手にはしっかり伝わります。

Iメッセージで相手にお願いするときのポイント

(1)あなたが…するとき(したので)
(2)わたしは…と感じる(感じた)
(3)なぜならあなたが…だからです
(4)わたしはあなたに今後…してほしい(してくれると助かる、してくれると嬉しい)


都会に住むお年寄りの場合、車より自転車に乗られている方が多いかと思います。
その場合も同じですね。
大事なのはそこに【尊敬と共感と感謝の気持ち】があること。

大人になった子どもは、歳をとり老いていく親より自分の方がしっかりしているように感じがちです。
たしかに、子どものほうが世の中のことには詳しいでしょう。
毎日、毎時、スマホからたくさんの新しい情報を取り入れているのですから。
若くて体力もあります。

親は身体は弱っていきますが、気持ちは『まだまだいける』と思っている人が多いのです。
いつまでも親は【親】で、わたしたち【子】のことを案じている側でいたいのです。
子の方は頼りなくなった親を見て落胆し、自分がしっかりしなくちゃと思うこともあるかもしれませんが、決して上の立場に立ってはいけません。

産んでくれた
育ててくれた
遊んでくれた
教育を受けさせてくれた
応援してくれた

このことを忘れないでくださいね。
【尊敬・共感・感謝】
この気持ちがあれば、自然と言葉や態度に現れ、きっとご両親にも伝わるはずです。

うまくいくといいですね。
心から健闘を祈ります。


つづく

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