豚の角煮

とにも かくに も 「わからん」料理

昨夜は、安く買えたスペイン産の豚バラ肉を使って角煮を作った。我が家の近くのスーパーではどういう輸入経路か知らないがスペインやフランスの豚野郎がときおり入荷するのです。

食べながら、もう少し長時間煮込んでふるふるに仕上げたほうがよかったかなと反省しつつ、ふと思った。これ、何も考えずにスペイン産の豚を使っているけど、角煮ってそもそもいつどこで生まれた料理なんだろうか? これでも和食? 

角煮だけに確認してみたくなった。

すると、どうやらもともとは長崎の卓袱料理であるらしいことがわかった。卓袱料理というのは別名「わからん(和華蘭)料理」とも言われ、中世(江戸時代)に文字通り和食と中華と西洋料理(蘭)が互いに入り混じって独自の発展を遂げた料理のこと。

日本がまだ鎖国していた頃、長崎の出島は公式には唯一の海外への玄関口で、オランダなどから船が着くだけでなく、大勢の中国人(華僑)が居住してもいた。そこで西洋と中華と日本の食文化がちゃんぽんになって生まれたのが卓袱料理というわけである。

角煮の先祖というか原型は浙江料理の「東坡肉(トンポーロー)」であるとされ、今でも長崎の卓袱のコースでは東坡煮と呼ばれて卓に上るようだ。

興味深いのが、他にも同様に卓袱料理にルーツを持つと言われているのが、天ぷらとエビパンだということ。

天ぷらは諸説あるが、長崎から西洋の揚げ物あるいは中国の揚げ物が入ってきて卓袱料理を通じ和食の天ぷらに変化したと言われていて、そのルートは実は中華料理の「天ぷら」と同じだと思われる。町の中華料理店にありますね、小海老の天ぷらとか豚肉の天ぷらとか。つまり売っているお店が違う程度で、実は日本の天ぷらと中華の天ぷらは実のきょうだいなのだと推察できるのだ。

そしてエビパン。エビのすり身をパン生地に挟んで、油で揚げた、まことにビールに合う、まあまあハイカロリーな食べもの。きっと日本独特の下町居酒屋メニューだと思っていたら、卓袱料理では「ハトシ」と呼ばれているとのこと。

中国語(広東方言)に詳しい人ならばピンときますね。「ハ(蝦)」=エビ、「トシ(多士)」=トースト(パン)である。なんと、エビパンと角煮と天ぷらは卓袱料理を通じ日本に馴染んだ、言うなれば同級生だったのだ。

いやエビパンの存在感の薄さよ。天ぷらは押しも押されもせぬ和食界のスーパースター、角煮だってまあまあの地位を築いているというのに。

大阪・ミナミのくわ焼き「たこ坊」のエビパンが好き。


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