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超短編小説 「途中」

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140字くらいの小説が入っています。よろしくお願いします。
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記事一覧

三センチの秘密

人間は生まれて八〇年たつと三センチだけ浮くことができるんだ。ほんとだよ。僕はおばあちゃんが大好きで子どものころずっと一緒にいたんだけど、あるとき、浮くところを見せてくれた。次の日おばあちゃんは遠くに行っちゃったんだけどね。誰かに聞いてみな。次の日遠くに行っちゃうかもしれないけど。

鳩とコーヒー

鳩とコーヒー

日課の散歩をしていると雨が降ってきた。すぐやみそうだったので近くのコンビニで雨宿りをしていると、コーヒーを飲みたくなり購入。外に出ると雨はもうあがっていた。コーヒーを手に近くの公園へ行くと、鳩が集まってお茶会を開いているので仲間に加えてもらう。鳩たちはチャイを飲んでいた。ポッポー

口の中の秘密(140字小説)

口の中の秘密(140字小説)

口内炎がよくできる。治ったと思うとまた新しい口内炎ができるので、ほぼほぼ一年中口の中に何かができている。病院は嫌いなので行きたくない。そんな暮らしをどのくらい続けてきただろう?今、僕の口の中には得体の知れない生きもののようなものが住みついている。女性にはモテるようになったのだが。

おならと初恋(140字小説)

おならと初恋(140字小説)

かつて僕は、おならを自由に操ることができた。音、匂い、頃合い、全て自在だ。ある昼休み、僕がビートルズのイエスタデイをおならで演奏していると、隣のクラスの梨乃ちゃんが見に来ていた。僕は梨乃ちゃんのことが好きだった。その日以来、僕はおならを操ることができなくなった。そう、僕の初恋だ。

靴靴靴(140字小説)

靴靴靴(140字小説)

街で気になる靴を見かけた。立ち止まり足を向けようとするのだが、意思に反して足は先へと進んでいく。しかもペースが上がった。「待てって」僕がそういうと「やだ」と靴はいう。「来年まで買わないって約束した」「見るくらい、、、」「絶対にやだ」これさえなければ本当履きやすくていい靴なのだが。

この星で一番速く走るために生まれた友人の話(140字小説)

この星で一番速く走るために生まれた友人の話(140字小説)

「この星で一番速く走るために、俺は生まれてきたんだ」友人は成長し、誰よりも速く走れるようになった。そんな友人が怪我をした。一緒に山を登ったときに熊に襲われそうになった僕を助けようとして、脚を捻ったのだ。友人はもう速く走れなかった。「星をゆっくり歩くのもいいものだな」友人は言った。

ある冬、オリオン座が。(140字小説)

ある冬、オリオン座が。(140字小説)

ある冬の話。夕方まで降っていた雨は上がり、空を見上げるとオリオン座がきれいに見える。瞬間、僕は理解した。今、自分が犬であるということ。プー太という名前。この家のこと。飼い主の家族たち。そして僕には、人間だったときの記憶が残っている。遠い昔、僕は妻と一緒にオリオン座を見ていたのだ。

薬屋➖「確実な長寿」お売りします。(140字小説)

薬屋➖「確実な長寿」お売りします。(140字小説)

「ありがとうございます。それでは百歳までサポートをさせて頂きます」うちの家業は薬屋だ。普通の薬屋ではない。子供の頃聞いた話では、最初の顧客は卑弥呼だとか。そう、邪馬台国の卑弥呼だ。看板は掲げないし、コスメや食料品は売ってない。頭痛薬もなければ風邪薬もない。商品は「確実な長寿」だ。

仮面(140字小説)

仮面(140字小説)

風呂上がりに僕がビールを飲んでいる。そんなとき、僕の目は少し潤んでいたりする。僕はいわゆる"いいひと"だ。性格は善良だが臆病で、意思が弱く、勇気というものがどうしても持てないまま大人になってしまった。そして僕はお酒に頼るようになった。お酒を飲んでいるときだけ僕は少し生き生きする。

ウミイグアナの夢をみた(140字小説)

ウミイグアナの夢をみた(140字小説)

昨夜、ウミイグアナになった夢を見た。しかも僕と妻二人ともだ。寝る前にガラパゴスを特集した動画を見たので、たぶんそれが原因だろう。「あら、あなた泳げないわよね」と妻が言う。妻イグアナは海中を泳いだようだ。「うん、僕イグアナは岩盤浴」夢だからって、そんな簡単に泳げるわけではないのだ。

猫はロックを飲まない(140字小説)

猫はロックを飲まない(140字小説)

毎晩家でひとり、お酒を飲む。私が飲んでいる間、隣ではいつも猫がすやすやと寝息をたてている。最近、私は猫にロックグラスを購入した。私が飲むとき、猫にもウィスキーのロックを用意する。猫はロックなんか飲まないと思うけれども、私はこんな酒で、あんな酒で、夜を乗り越えてきたんだ。なんてね。

後悔(140字小説)

後悔(140字小説)

ある朝、早足で駅へと向かっていると「どこへ行くの」と声がした。見ると近所の猫がほぼ小走りで僕に並走している。「急いでるんだ」そう言うと僕は駅へと走った。途中、赤信号で止まったとき振り返ると、猫は少し寂しそうな顔をして立ち止まっていた。たぶん僕はそんな風に言うべきではなかったのだ。

つきあいのよい猫(140字小説)

つきあいのよい猫(140字小説)

つきあいのよい猫がいて(もちろん僕が勝手に思ってるだけかもしれないが)僕が仕事帰りに近くの公園で缶ビールを飲んでいるときなどよく寄ってくる。今日、大事な仕事でミスをした僕が公園で落ち込んでると、「そんな日もあるさ」とその猫は言った。猫はビールを飲むと少し顔をしかめて、げっぷした。

妻との出会い(140字小説)

妻との出会い(140字小説)

ある朝、家を出ようと玄関を開けると、待ちかまえていたかのように猫が一匹飛び込んできた。そのままにしておくわけにはいかないので、家の中で猫と追いかけっこをするはめに。なんとか猫を追いやることができたけど、結局、一時間ほど遅れて会社へ向かうことに。そんな日に出会ったのが、今の妻です。