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超短編小説 「途中」

80
140字くらいの小説が入っています。よろしくお願いします。
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2019年7月の記事一覧

人間になった猫(140字小説*14)

人間になった猫(140字小説*14)

あるところに人間になりたい猫がいました。ある日、神様が現れて言いました。「君を人間にしてあげよう」すると、猫は人間になりました。人間になった猫は、毎日毎日働きました。やりたくない仕事をし、会いたくもない人に会い、それはそれは疲れて夜は涙を流して眠るのでした。「あー、猫になりたい」
#140字小説 #短編小説 #小説 #猫

約束(140字小説*13)

約束(140字小説*13)

「来世どうする?」「俺は蝉かな」「蝉?」「うん、昔からの夢だったしね」「でも蝉って今大変っていうじゃん。生息場所とか、個数とか」「まあ、なんとかなるよ。お前は?」「うちはもう、代々決まってるから」「縄文杉?」「うん。縄文杉も今いろいろあるけどね」「会いにいくよ」「おー、約束だぞ」
#140字小説 #短編小説 #小説 #来世 #約束 #蝉 #縄文杉

二人の王様(140字小説*12)

二人の王様(140字小説*12)

声の大きな王様と声の小さな王様がいました。声の大きな王様はいつも大きな声を町中に響かせるので、人々は耳をふさぐようになり、王様の言葉は届かなくなってしまいました。声の小さな王様はあまり遠くまで声が届きません。すると、王様の言葉を聞くため、人々はお城の周りに集まるようになりました。
#140字小説 #短編小説 #小説 #王様 #童話

令和生まれ(140字小説*11)

令和生まれ(140字小説*11)

聞くところによると、令和生まれの人間はまだしゃべれないらしい。それどころか歩くこともままならないようじゃないか。人間が聞いてあきれる。その点、俺たち令和生まれの猫はひと味違う。もう自力で歩き回るし、弁も立つ。先週なんか原宿のタピオカ屋に5時間並んだよ。で、なにがうまいんだ、あれ?
#140字小説 #短編小説 #小説 #令和生まれ #タピオカミルクティー #猫

結婚(140字小説*10)

結婚(140字小説*10)

地球の人間と火星の人間が出会い、恋をしました。地球の人間は言いました。「僕と結婚しよう。地球では愛しあう二人は結婚するんだ」「おもしろそうね。結婚しましょう」二人は地球へ行き、親に挨拶をして、役所に並んで、名前を変更して、、、「なにこれ、つまんない」火星の人間は去って行きました。
#140字小説 #短編小説 #小説 #火星人 #地球人 #結婚

狐(140字小説*9)

狐(140字小説*9)

ある村で畑が荒らされた。近くを通りかかった狐が捕まった。狐は言った。「僕じゃありません。僕は畑を荒らしません。ほら、今もそこのスーパーで魚と野菜を買ってきたところです」「嘘をつけ!狐はいつも畑を荒らすじゃないか!」「狐によります。僕は荒らしません」「えーい、うるさい!この狐め!」
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賃料の高い事故物件(140字小説*8)

賃料の高い事故物件(140字小説*8)

あのー、安い物件探してるんですけど。ここだけの話、事故物件でもいいですよ。僕、そういうの全然気にしないので。あります?え?どうして、事故物件なのに賃料が高くなるんですか?毎晩出る?だったら安くしてくださいよ。え?毎晩、日付が変わるころ背中に覆い被さる、若い巨乳の霊。。。借ります!
#140字小説 #短編小説 #小説 #地縛霊

ドラえもんの道具(140字小説*7)

ドラえもんの道具(140字小説*7)

ドラえもんの道具を手に入れた。噂には聞いたことがある。コロンブスのどこでもドアとか、アインシュタインの暗記パンとか。。。で、今度は僕みたいだ。今朝、目が覚めて水を飲もうと冷蔵庫を開けると、翻訳こんにゃくが入っていた。あまりうれしくないのは、僕がこんにゃくアレルギーだからだろうか。
#140字小説 #短編小説 #小説 #ドラえもん #ドラえもんの道具 #こんにゃく #翻訳こんにゃく

野球観戦(140字小説*6)

野球観戦(140字小説*6)

野球観戦のいいところは、楽しみ方がたくさんあることだ。声のかぎりに応援したり、一球一球に目をこらしたり。ビールを飲んでもいいし、サンドウィッチを食べたっていい。君の自由だ。今日の僕は特等席、アンパイアの左肩の上だ。ちょっと怖いけど、なんせ迫力が違う。蝉もわるくないな、なんて思う。
#140字小説 #短編小説 #小説 #野球 #野球場

進化(140字小説*5)

進化(140字小説*5)

古い遺跡から男性の遺骨が発見された。推定、四十歳前後。その時代の遺骨が発見されることは珍しく、遺骨を元に当時の姿が復元された。「博士、乳首があります」「やはりそうか。二千年代初期、当時日本と呼ばれた国では、おじさんと呼ばれる種族の乳首が、とても嫌われていたと記述がある。きっと、、
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遅刻(140字小説*4)

遅刻(140字小説*4)

ある子どもが不治の病を抱えて生まれた。もってあと三日の命だろう。三日たった。子どもは死ななかった。一年が過ぎるころには病は消え、すっかり元気になった。その子は多くの人に愛され、百歳まで幸福に生きた。死ぬ間際、死神がやって来て言った。「いやー、ごめんごめん。百年も遅刻しちゃったよ」
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家に帰ったら床がない(140字小説*3)

家に帰ったら床がない(140字小説*3)

家に帰ったら床がなかったんです。えーと、30分くらいですかね。散歩です。犬の散歩。30分前までは確かにありました。リビングでテレビを見ていたんです。鍵は、、、かけて行きませんでした。散歩だし大丈夫かと。。。はい、もちろん知ってました。でも、まさか自分が床喰いにやられるなんて、、、
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父、河童になる(140字小説*2)

父、河童になる(140字小説*2)

僕はそのとき高校生で、部活を終えて家に帰ると、頭に皿をのせた父が、リビングで新聞を読みくつろいでいた。父は河童になったのだ。父は僕を見ると「どうだい、調子は?」と言い、「うん、まあまあだよ。。。父さん、頭」そう僕が呟くと「きゅうりが無くてな。チーズケーキだ」と父はニヤリと笑った。
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うっかりした(140字小説*1)

うっかりした(140字小説*1)

山菜蕎麦が運ばれてきたとき、僕はうっかりビールの入ったグラスを倒してしまった。拭いてくれたお店の人に礼を言い、山菜蕎麦を食べようとすると、「クスクス」と笑い声がした。山菜蕎麦の椎茸だ。そうか、山菜蕎麦には椎茸がついてくるのだ。椎茸が食べられないのに、僕はまたうっかりしてしまった。
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