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超短編小説 「途中」

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140字くらいの小説が入っています。よろしくお願いします。
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#ショートショート

夏の過ごし方、メロンの食べ方

夏の過ごし方、メロンの食べ方

妻と暮らしはじめたころ、メロンを真ん中で半分に切り、スプーンですくって食べようとしてとても驚かれたことがある。以来、夏が来ると妻は僕のことを「メロンさん」と呼ぶ。今、僕たちは歳を重ねたので、半分のメロンを仲良く二人ですくって食べて夏を過ごす。「食が細くなったね」なんて言いながら。
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花の養分

花の養分

花屋に寄った。妻に花を買って帰ろうと思ったのだ。見慣れぬ黄色い花がある。「ヒマラヤの奥地に咲く希少な花です」店主が言う。「愛が養分になり、いつまでも咲き続けると言われています。愛は永遠、ですね」一年後、まだ花は咲き続けている。もっとも養分となる愛は、別の女性に対するものなのだが。
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夜中の出来事

夜中の出来事

「痛っ!」夜中、妻の声で目が覚めた。トイレに行こうとしてどこかをぶつけたようだ。「大丈夫?」体を半分起こして声をかける。「頭が。」頭?妻は小柄で、頭をぶつけるほど背は高くないはずだが。立ち上がり明かりをつけると、30センチは超えるであろう長い角が、妻の頭から真っ直ぐに生えていた。
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