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一人暮らしとジャコおろし

18際の頃、大阪に出てきた。

初めて住んだ街は西中島という街。梅田からは二駅の近さだ。家賃5万円。エレベーターなしの4階。窓を開けると隣のマンションの壁。光が差すことのない部屋だった。

高校を一年で中退し、なんの当てもなく実家暮らしでアルバイトをしていた。17歳の頃から大阪のイラストスクールに通うことになった。当時は思春期真っ只中でとにかく両親に頼ることが嫌だった僕はイラストスクールへ入学するためのお金100万程を10ヶ月で貯めた。実家暮らしで100万貯めるのはとても簡単だった。当時まだ17歳だったがバカみたいに働いてたので給料は20万ちょっとはあった。

そのスクールは2年制だった。18歳になると大阪へ出ていくことを決めていた。17歳の頃に大阪での遊びを覚えてしまい、よく年はそこまでお金を貯めることができず、引越し資金に消えた。二年目の授業料は親に甘えた。

念願の一人暮らし。しかしお金がない。最初は冷蔵庫も洗濯機もなかった。

友人と1人暮らしの家具を買いに行き初めて買った家具がゴミ箱だった事はなんというか、僕らしいなぁとよく覚えている。

西中島という街はなんとも特殊な街で、ビジネス街と歓楽街と専門学校などなどがごった煮になったような街。初めて出てきたそんな街に放置されてあった車には明らかに銃痕のような穴が空いていた。当時はヤクザも多かった。

そんなヤクザが取り締まっている、なんてことも当時は知らずに駅前高架下にある焼き鳥屋台によく通った。発電機の鈍い音、鳥の焼ける匂い、すぐそばを足早に歩く仕事帰りのサラリーマン達。

焼き鳥も美味しいのだが、その店のメニューには「ジャコおろし」と言う大根おろしとジャコをあえたツマミがあり、安くて美味くて大好きだった。

あの頃の僕は1人でそんな店に通い、お世辞にも綺麗とは言えない街を眺めながら、一体何を考えていたのかなぁ。

あれから18年経った。

大阪で絵画制作や美術活動をしつつ、ARTspace&BARアトリエ三月を運営しています。サポート頂いた分は活動費やスペース運営費として使用させて頂きます。全ての人がより良く生きていける為に 美術や表現活動を発信し続けます。