原慎治

道産子/大学は早稲田出身 /現在はストラテジックプランナー 書く事・描く事が好きで、そ…

原慎治

道産子/大学は早稲田出身 /現在はストラテジックプランナー 書く事・描く事が好きで、その書くことを上達させる為にも未熟ながらにも、noteを用いて小説やエッセイを発信しております。 反応頂ければ嬉しいです! ipad買って描く事も上達したくなったら、絵も載せてみます✨

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最近の記事

【同じ時間・異なる考え】

「Bちゃん本当ごめんだけど、宿題見せて欲しい!宿題やる暇がなくて」 高校生だというのに、なんとも恥ずかしい頼みだ。でもここは恥をしのんででもお願いしないといけない。なぜならあたしは勉強なんてまるっきし苦手で宿題に目すら通していなかったからだ。そして、この宿題は未提出でも、間違いだらけでもどちらにせよ、間違いがあれば放課後残ってやり直さなければいけない。だから自分でやっても仕方がない。そういう理由もあって戦略的にやらないことにしたんだ。苦手なものとは、誰かに頼むまでのことだとも

    • 【夜のとばりが降りる頃に】

      「死にたい」 いつも塞ぎがちな彼女が、泣きながら呟いた。潤んだ瞳に力はなく、その視線は僕ではなく、宙に投げられていた。何百回目の「死にたい」だろう。これまで僕は、その言葉を受けては励ましたり、そんなこと言って悲しませるな、と怒鳴って見たり、ただ純粋に聞いてみたりと。色々して、その日は泣き止ませさせることができた。 でも次の日になれば泣き続けるばかりだ。でも諦めるわけにはいかない。今回は言葉に依らず、聞くに依らず、そっと手を握りしめてみる。彼女の小さく、冷たく、力のない、その手

      • 【弱いひと・弱いこころ】

        「そういえば、1組のC君ってイケメンだよね。芸能人とかにいそう」 同じ高校の同級生C君を褒めるBちゃん。そうだね、かっこいいね、とやんわり返す。 誰がかっこいいとか可愛いとかそういう話がBちゃんはとにかく好きだ。一緒にいるときは、常に誰かの話をしていて、その誰かを評価したがる。高評価だけならまだいい。聞いていて、不愉快に思うところはひとつもない。でもそれだけじゃない。だから帰り道が一緒の彼女と、偶然鉢合わせになって嫌な予感しかしないのだ。 「うんうん。だよねえ。逆にD君とか

        • 【わたしと義母と世間と】

          「そろそろ子供が欲しいもんだね〜」 つまらなそうにぼやく姑。シンクに溜まっていた食器を一緒に洗っている時のことだ。 私は手を止めずに、「そろそろってどう言う意味ですか?」と聞いた。この言葉に怒りだとか嫌悪感だとか、特筆するような感情は込めていない。昔から単純に気になることだから聞いた。それより上も下もない。 ばつが悪そうに、険しい表情を見せる姑。言葉に詰まっている。彼女はいつだってそうだ。自分の言いたい事は遠回しに言うだけ言う。だけどその意味するところについて尋ねると、いつも

        【同じ時間・異なる考え】

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        • RAIN
          7本

        記事

          【RAIN⑦〜嘘つきは誰?〜】

          映像には、白壁を背景に五人の男が横並びに映っていた。 みんな同じ服装をしている。皆が皆おしなべてつば付きの帽子、青い作業着、白いスニーカーを履いていて、個性はてんで感じられなかった。これから出す問題を解かせるに当たって、個性という要素を無くしたいのかもしれない。だとしたらこちらとしては命がかかっている。ありがたい限りだ。しかし、問題形式が出題者が変わっているのかもしれない。 一方で作業着にはゼッケンが縫い付けられていて、左から田中、中西、西川、河村、村木と書いている。この並び

          【RAIN⑦〜嘘つきは誰?〜】

          【いいたいこと・いえないこと】

          「彼女の写メ見せてよ」 大学の授業を控える昼休み。何気なく繰り広げられていく会話の中で、唐突に彼女の写メを見せるよう要求してくる友人。このように言われると僕は、内心戸惑ってしまう。面倒臭い。 というのも、彼女がどんな人かは別として、この手の写メを見せたいのか、それとも見せたくないかは友人の性格に依存するからだ。そしてあいにくにも、この友人は後者、つまり見せたくない側に属すために対応にひどく困っている。そんな具合だ。 「あはは、実はそれがね、写メ無いんだよね」 苦笑いをしながら

          【いいたいこと・いえないこと】

          【RAIN⑥〜生と死と・そしてその狭間と〜】

          「え、さっきの部屋に映っていた、仮面の男はどうしたんだ」 呆気にとられる青年。少女も少し驚いた様に、目を見張っている。生とか死とか、そう言った類の言葉が脳裏をよぎる。冷静に考えれば、こんな屋敷だ。何が起きてもおかしくは無い。 「死んだ。役目を果たしたからな。そして私はパンダの仮面男の様に無駄話をするつもりはない」 淡々と述べ。二人の反応を確認する仮面女。そんな彼女の言葉を受けても、青年も少女も表情を変えなかった。しかし、青年はというと、脇腹を冷や汗が伝うのを感じていた。少女も

          【RAIN⑥〜生と死と・そしてその狭間と〜】

          【RAIN⑤〜立ち込める闇・溢れる疑問府〜】

          中に入ると、ひたすら暗闇が立ち込めている 備え付けられているモニターにパッと白い静止画が映し出された。部屋のものを認識できる程度の明るさになり、辺りを見回す青年と少女。 部屋全体は先ほどのコンクリート打ちっ放しの部屋とは打って変わり、木造だ。歩くたびに木が軋む音がかすかに聞こえてくる。この屋敷もまた木造で、さっきの部屋はたまたま表面コンクリートで塗り固めただけなのであろう。そこにどんな意味があるのか、少し考えて見るも、青年にはわからなかった。・ 部屋は相変わらず窓が無く、不気

          【RAIN⑤〜立ち込める闇・溢れる疑問府〜】

          【暗がりとその中で】

          「どこまでいっても不公平だなあ。人生って。なんでわたしなんだろう」 真っ暗然とした部屋の片隅で、瞳いっぱいに涙を浮かべ、小さくつぶやく美咲。就職活動に失敗し、就職浪人が決まったという。返す言葉が見つからず、彼女の手をそっとにぎりしめる誠。差し伸べた手を握り返す力もなく、依然と部屋の片隅ですすり泣く美咲。 「奨学金の返済の為にバイトだって平日も土日も頑張って来たし、大学での勉強だって真面目にやったのに・・・・・・他の子のようにサークルなんて入って遊ぶこともなかったのに。なんでわ

          【暗がりとその中で】

          【Aの角度、そしてBの角度】

          「Bちゃんはいつも本読んでて、真面目でえらいよね。」 「え?」とわたしの方に向き直り、目をぱちくりさせるBちゃん。教室で、黙々と本を読んでいるところにいきなり話しかけたんだ。無理もないよね。でもいつも見ていて思っていたことだ。私は本を長く読み続けるほどの集中力がないから、羨ましい。 「そんなことないよ」と微笑みながら、謙遜する。決して驕らない。謙虚なところも彼女の魅力だ。 「そんなことあるよ。わたしなんて漢字苦手で、読み進められないもん。もう中学生だと言うのにやばいよね。それ

          【Aの角度、そしてBの角度】

          【美しい瞬間】

          「美しい」 抱いた感情が思いもよらず、言葉となって、口を出た。感嘆とはこの様な感情を指すのだろうか。 コテージのテラスから眺める夜景は格別だ。久々のアウトドア。田舎のキャンプ場では、野原が一帯に広がり、遠くには広葉樹が林立しているだけで他に視界を遮るものは何もない。生い茂る、緑と深緑で埋まっている。何もないということ、余白、空白というものはそれ自体が美しい。 しかし、そんな広大な大地の、はるか頭上にある星空はさらに、さらに美しい。 そんな私の思いとは裏腹に、「美しい」という言

          【美しい瞬間】

          らしさのくるしさ

          「Aさん(私)って恋人はいるの?」 会社の宴会での席、以前から気になっていた女性社員、Bさんが私にストレートにも聞いてきた。私は決めつけられることが非常に嫌いだ。だから、「彼氏」でも「彼女」でもない、「恋人」という表現は、いささか心地良かった。質問は直球過ぎるくらい直球だけれど、やはりBさんは素敵な方だ。 「恋人なんていないよ。Bさんは?」 内心ドキドキしながら、聞き返してみた。彼女に恋人がいるかどうかで、私の今後の仕事のモチベーションが変わる気さえした。おそらくいるのだろう

          らしさのくるしさ

          RAIN④〜薄暗い場所、暗い場所〜

           ドアを開けると、正面にはひたすら廊下が続いていた。青白い照明の下で、敷かれているペルシャ絨毯は不気味で、それだけで恐怖を煽るには十分であるように思えた。窓に駆け寄ると、針葉樹の林が窓を覆うように生い茂っており、そのため月も星も見えない。木々の隙間から遠方に海が見える。ここは階上だ。少なくとも、一階ではない。青年は、部屋に閉じ込められていた時以上の悪寒に身震いした。窓を開けようにも、立て付けが悪く、ガタガタと乾いた音が鳴るだけ。結局は、行動範囲が少しばかり広がっただけだ。状況

          RAIN④〜薄暗い場所、暗い場所〜

          RAIN③〜謎解き、次なるステージへ〜

          タイマー終了のアラームが鳴った。映像は切り替わり、パンダのお面の男が現れる。 「終了だ!!!」その甲高い声は、コンクリートの、狭い室内にはよく響いた。青年は耳障りだと、モニターに映る、その男を細目で睨みながらも、ぐいと口角を上げ、口だけで笑った。不敵な笑みだった。「威勢がいいね。では早速本題だ。犯人と本当の事を言っている人間をそれぞれ答えてくれ。もちろん三分も与えたんだ、単なる運試しでは無い。その理由とセットで聴こう。そして最後に。チャンスは一度だけ」と仮面男。相も変わらず、

          RAIN③〜謎解き、次なるステージへ〜

          【たしかなこと】

          チリンチリン。風になびいた、風鈴がその音色を優雅に奏でている。その音色は、鳴るたび部屋を彩る静寂を破った。しかし、それはかえって、部屋に一人で佇む少年に、静けさも寂しさも感じさせた。ふと音の鳴る方へ目を向ける。風鈴は、ガラスでできていて、そこには満月を背景に2匹のウサギが、夜の海を駆けている絵が描かれている。並走しているというよりは、一方がもう一方を追いかけている、そんな具合だ。彼らは野山でこそないが、「うさぎ追いし、かの山」で始まる名曲を思わせるものであった。もっとも、多く

          【たしかなこと】

          【RAIN②〜嘘つきは誰?〜】

          「早速だが、問題について話を始めよう。今私が映っている、モニターの映像が切り替わり、これから五人の人間によって劇が行われる。その劇の中での登場人物は五人。そしてそのうちの一人が、監禁事件の犯人という設定だ。それぞれ容疑者として、証言を行うが、その5つの発言本当のことを言っている人間は一人で、四人は嘘をついている。つまり、4人が偽証罪を問われる案件となっている。そしてその発言の真偽を考え、犯人と本当の事を喋っている人間を当てて欲しい。制限時間はそうだね、初めてだし、長めに与えよ

          【RAIN②〜嘘つきは誰?〜】