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33歳で11億の借金連帯保証人に

当社はヒイ爺さんが創業した割と長い社歴の会社です。
社歴が長いということは、少なからずとも借金もつきもの。
3代目の父が経営していた1980年代は、バブル期と呼ばれる時代でした。
当社もその波に乗り、銀行から金を借りまくったのです。
銀行は将来のビジョンなんて持っちゃいません。
とにかく借りて、土地買え!みたいな腐った時代だったと想像します。
父は仕事と言いながらゴルフ三昧。当時の接待交際費を見ると、額が半端じゃない。
と、まあいい時代だったんでしょうね。
私はそんなことは露知らず、金に困らず大学に通えていたので、父の会社の経営の内情は全く知りませんでした。

私が就職し、3~4年経過したころに、父親から実家で働けと言われました。
どうやらバブルがはじけ、売り上げが半減し、営業利益も赤字の状態。
銀行の返済もままならないようでした。
しかし父の会社とは言え、入ったばかりなので、とりあえずは諸先輩から言われる業務を行っていたわけです。

突然2005年私の父親が病気で急逝しました。
余命3か月と告げられたすい臓がんです。酒の飲みすぎでしょう。
会社の借金は11億。
社長には母が付きましたが、当然その頃は連帯保証が求められる時代。
嫌だと断りましたが、結局会社をつぶすか、借金を負うかの2択しかありませんでした。
なかなか普通の人だと無いですよね、そんなカイジとか賭ケグルイみたいな選択(笑)

結局33歳で11億の借り入れの連帯保証人になりました。
ちょうどその頃5歳の息子がいまして、心臓の病気を抱えていました。
心臓に穴が開いているので胸を開き、心臓を一旦止める手術が必要でした。
パパーママーと泣き叫ぶわが子を、看護婦さんに手渡す時ほど苦しかったことはありません。
手術は成功したものの、ICUの窓越しに全身点滴やらドレインやらで繋がれた子供ってのは、いつ思い出しても涙が出ます。

会社も無茶苦茶、家族も苦しい、借金11億、こんな状況で、よく病気にならなかったなーと思います。
とりあえず父親の生命保険が入ってきて、その年の資金は周りましたが、財務内容がひどかったので、リストラを断行せざるをえませんでした。

バブルのころは目指せ50億!なんて言ってたらしいので、とにかく固定費が多かった。
積極的な拡大路線を取っていたのですが、このままいったら地獄1本道。
そこで私は会社の縮小に走りました。
とにかく利益を出す体制にしないといけない。
まずは遊休不動産の売却をしました。
銀行の阿呆どもからけしかけられ、見栄っ張りの父が買った不動産の半分を売却。
当然、B/Sなんて真希波マリ言うところの、しっかちゃめっちゃかの状態です。

思えばこの時に、いい不動産屋さんに助けてもらえました。
かなりいい条件、かつ安い手数料で売却してもらったので安堵できました。
そして50人程度いた社員のうち段階的に約40人にやめてもらいました。
後ろからナイフで刺されるかもしれないという不安がありましたね。
それ以来、私は人を雇いたくないという選択をします。(ゴルフも絶対しません。)
人を増やすくらいだったら、最先端の機械やシステムを導入しますし、そのような決断をしてきました。
私は人を辞めさせられないんですよね。こういう人物は会社を大きくはできないと悟りました。

そこから数年は、真っ暗なトンネルを歩いているようなものでした。
どっちが出口なのかわからない。光が全く見えない。
時々灯りが見えたと思ったら、スーッと消えてしまう。
借金が返せないから、会社をつぶすこともできない、そんな状況でした。

ほんの小さな光が見えたのが2009年でした。
営業利益で黒字が出ました。81319円。
それ以降営業利益は黒字が続き、赤字に陥ることはありませんでした。
EC事業の牽引がなんとか光明となったのです。

あれから10何年、EC事業を中心に会社をリストラクチャリングし、なんとか返済のめどが立ってきました。
とはいえ、まだ大きい額ですが。
そしていまだに80年代バブルの後始末をやっていることを自覚します。
何も考えていなかった学生時代、しかしその裏では着実に積み重なっていた膨大な借り入れ。
融資という魔物。それに喰われた父。銀行は常に甘いことを言ってきますが、闇金ウシジマくんと同類です。
おそらく似たような経験を持っている中小企業の跡取りはたくさんいらっしゃるでしょう。

でもなんとかなります。
それには正しい会計の知識が必要です。
P/L、B/Sは時々嘘が書かれています。
売上上げてコスト下げれば利益が出てくるなんてことはありません。
売上額や販管費を目標値にしたら終わってしまいます。
売上を上げなくても利益があがればいいんです。
必要な販管費はかけなければ利益は上がりません。
お金に関する知識が私も含め、みんな持っていないのです。
私はようやくお金の正体が少し見えてきた気がします。

とまあ好き勝手書きまして、最後の結論ですが、借金は必ず返せる、そう信じましょう。

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