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面接官が気を付けること

前回「就活ハラスメントのいろいろ」を書きました。

前回の記事にも紹介したような、立場を利用したセクハラ、暴行などは論外です。
内容が重い・軽い問わず「いい大人が何やっているんだ。恥ずかしい」こと。

一方で「えっ?それもダメなの?」ということがあります。
それは面接時の質問です。

…ところで、面接の質問で
「尊敬している人は?」
「どんな本を愛読していますか?」
と聞くのは良いのでしょうか。

この答えと、その理由は労働局のホームページを見ながら説明したいと思います。著者の解説も交えます。

大阪労働局のホームページに詳細が記載されています。

1. 本籍に関する質問
● あなたの本籍地はどこですか。
● あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか。
● 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか。
● ここに来るまでどこにいましたか。

NG理由
本籍を質問することは、結果的に就職差別につながるおそれがあり、公正な採用選考から同和関係者や在日韓国・朝鮮人の人たちを排除してしまうことになりかねません。

著者は北海道出身で、東京に出てくるまでは同和関係者や在日外国人の方が就職差別を受けることがあるということがよく分かっていませんでした。
知らないならNG質問をしても仕方がない、ということにはなりません。
面接官や面接を取り仕切る仕事を行うのであれば、様々な方がいることを理解し、差別に対してアンテナを高く持つことが重要になると思います。

2. 住居とその環境に関する質問
● ○○町の△△はどのへんですか。
● あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか。
● あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか。
● あなたの自宅付近の略図を書いてください。
● 家の付近の目印となるのは何ですか。

3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
● あなたのお父さんは、どこの会社に勤めていますか。また役職は何ですか。
● あなたの家の家業は何ですか。
● あなたの家族の職業を言ってください。
● あなたの家族の収入はどれくらいですか。
● あなたの両親は共働きですか。
● あなたの学費は誰が出しましたか。
● あなたの家庭はどんな雰囲気ですか。
● あなたは転校の経験がありますか。
● お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか。
● お父さん(お母さん)は病死ですか。死因(病名)は何ですか。
● お父さんが義父となっていますが、詳しく話してください。

4. 資産に関する質問
● あなたの住んでいる家は一戸建てですか。
● あなたの住んでいる家や土地は持ち家ですか、借家ですか。
● あなたの家の不動産(田畑、山林、土地)はどれくらいありますか。

NG理由
応募者の適性・能力を中心とした選考を行うのではなく、本人の責任でないことがらで判断しようとしていることです。このことは、前近代的な身分制により形成された部落差別により、教育や就職の機会均等の権利を侵害されてきた人たちを排除することにもつながるものです。住宅環境や家庭環境の状況を聞くことは、地域の生活水準等を判断することになり、主観的判断に属する事柄です。これらは本人の努力によって解決できない問題を採否決定の基準とすることになり、そこに予断と偏見が働くおそれがあります

冷静に考えて…採用面接の場でこれらの質問は全く必要がないことではないでしょうか。家族構成、親の仕事などを聞いても、親を含めて家族がその会社で働くわけではありません。

ただし家族に競合他社の現役社員がいないかということは情報漏洩の観点などから業務上の合理的必要性があり確認を行っても良いでしょう。

5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
● あなたの信条としている言葉は何ですか。
● 学生運動をどう思いますか。
● 家の宗教は何ですか。何宗ですか。
● あなたの家族は、何を信仰していますか。
● あなたは、神や仏を信じる方ですか。
● あなたの家庭は、何党を支持していますか。
● 労働組合をどう思いますか。
● 政治や政党に関心がありますか。
● 尊敬する人物を言ってください。
● あなたは、自分の生き方についてどう考えていますか。
● あなたは、今の社会をどう思いますか。
● 将来、どんな人になりたいと思いますか。
● あなたは、どんな本を愛読していますか。
● 学校外での加入団体を言ってください。
● あなたの家では、何新聞を読んでいますか。

NG理由
思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属することがらです。それを採用選考に持ち込むことは、基本的人権を侵すことであり、厳に慎むべきことです。思想・信条、宗教などについて直接質問する場合のほか、形を変えた質問を行い、これらのことを把握しようとする企業がありますが、絶対に行うべきではありません。

これは冒頭の質問「尊敬している人は?」「どんな本を愛読していますか?」と聞くことがNGであることを説明しています。

ただし社風に合うかを確認することは必要です。
世間一般と比較して、突発的な対応があり業務時間が多く責任が重い仕事をこなす会社において「残業断固拒否」のような価値観の方は合わないでしょう。

チームワークが重要な職場で、1人で黙々とやりたい人は、馴染めない可能性があります。

そのようなことを確認するときは「仕事において、どのような価値観ですか」「会社を選ぶときの判断基準はなんですか」など、就職するというそもそもの目的に合わせ質問することが良いでしょう。

6. 男女雇用機会均等法に抵触する質問
結婚や出産後も働き続けようと思っていますか。
●当社は、女性(または男性)は少なく、また長く働き続けられる仕事ではないが、それでも入社しようと思いますか。
●(男性だけに、または女性だけに)残業は可能ですか、また転勤は可能ですか。
※労働条件の事前確認のため、応募者全員を対象に質問することを妨げるものではありません
●スリーサイズはどれくらいですか。

NG理由
性別を理由(または前提、背景)とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反する採用選考につながります。
また、男女共に同じ質問をしていても、一方の性については採用、不採用の判断に影響がなく、他方の性についてはその返答が採用、不採用の判断要素となるような場合は、採用において性別を理由として差別していることになります。

男女雇用機会均等法ができて50年経ちます。
いいかげん性別で判断することはやめましょう。
流石に露骨にスリーサイズを聞くことはないかもしれませんが、長く働けるかどうか確認するために出産や結婚について質問する会社はまだまだあります。

「長く働けるかどうか」を気にするよりも、長く働ける仕組みづくりを整える方が先ではないでしょうか。

1~6まで例を挙げましたが、若い人ほど差別意識は薄いと言えます。

なぜなら、「男性は外で働き 女性は家を守る」ことについて考えるきっかけになった男女雇用機会均等法は50年前にできました。
企業にセクハラの対策義務ができたのは15年前
「部落差別解消推進法」「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」ができたのは6年前です。

差別の概念そのものがなかった時代に会社員だったの中にはアップデートできていない人もいるでしょう。

差別はする側・される側どちらにもなりえます。そもそも差別をしないことがフラットな状態です。

就職という人生の大きな決断の場において、差別が無くなることを願います。


それから最後に。
「やっちゃいけない」で終わらせてしまってはもったいない。
面接という機会はうまく活用しましょう。

面接は、直接応募者と対話ができる機会です。
2022年の新卒は売り手市場です(中途採用も売り手の業界が多い)。

質問を投げかけるだけでなく
・応募者の得意なことが、どんな仕事に活かせるか
・どんな人が働いているか、応募者と近い立場や同じ同期で活躍している社員について
・キャリアアップについて
などを具体的にイメージできるよう伝えていくと、応募者のモチベーションが上がり採用がしやすくなるでしょう。

やっちゃいけない質問に時間を割かず、その分良い対話が生まれると良いですね。


面接時の質問について
参考:厚生労働省 大阪労働局


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