cahier

美しい眼差し、直線ではっきりと見えるような、何もかもを今は拒んでいるように思う、視界の切れかかった境目に、肩幅だけが広い後ろ姿だけをもった忌まわしい何かがいる、何かの痕跡がある、それは或いは自分自身の姿なのかもしれないと思う刹那、宗教画と俺の忌まわしい夢の後味として残ったのだった、ところで、さて、もういいかな、確かに見知っている死者たちの顔のほかに、どう見ても知らない顔もいる、全くもって無表情な顔だ、お前を激しく弾劾したあの書物をもしかして読んだのかね?革命の歴史に現れる革命家のすべては革命への自らの利用者にすぎぬと、どこへ?向こうへ?さあ、もう確かめようじゃないか、お前自身が実に下らない人間で、浅はかで、もう何も生きる手段もないと認めようじゃないか、この俺が覗きにきたもの、見知らぬ死者たちとは全く異なった種類の何らかの誰か、光と陰の境の向こう、よるすべもない、吐きそうだ、否応なくすべて掴んでしまう自分自身の感覚を呪いたい、これは到底人としてやっていく資格を得ない、恐らく普通は遮断しているものを何らかの知覚が触発されて、たとえば体温が43度のまま、白昼夢と現実の見境がつかず、朧気に、気儘に、何かに情熱を捧げ、それは何であったのか、私は確かにこの先もこんな世界が続いていくだろうとは思わなかったし、それを認めたくはなかったのだが、どうやらその思惑はそろそろ途切れてしまうようだ。社会革命なるものが無論血の通った人間の間で浸透するとは私も思っては当然いなかったが、本質的に人間を変えると決断したとき、何やらそんなことが出来そうな気がしなくもないと愚かにも思っていたのは事実だ、一人一人を下らない銭勘定や家族、病気、社会生活あらゆるつまらない事柄から脱出しようと試みれば、普通に、当然に、あらゆるこういった呪いから解き放たれれば、人はどうやら「健全に」生きるはずだと思ったのはあまりに浅はかだったか純粋だったと言えるのか、さあ、分からない、真っ逆さまに降りてきて、啓蒙する何かが、存在への従属の完璧なる転覆、実に見事だ、不可能で最初で最も恐ろしいこの課題を自分でも恐ろしくなるほどのめり込んだときに、不意にいきなり遠くから呼び出されて、他ならぬこの私自身が夢想の状態にいたということはあっさりと認めようじゃないか、この時に恐らくこの駄文は遺書となる、その敗北をはっきりと認めてしまえば、楽にはなれるだろうか、生と存在の革命が、人間そのものの革命が、情熱的に私はその目的にすべてを注いだときに、いったい何が変わると思う?あまりにも惨めな結果が見えてくるとはいえようが、実は何も諦めていないし、諦めたくはない、発端と終末の中間あたりに冷静な観察力だとぶら下がっているとは言えそうだ、驚くべきことに休息はない、また耳鳴りがする、厄介な夜だ、存在と非在の麗しめ、過言、脆くも崩れ去るような言葉と終焉とその間へと継承される、あの真っ白な顔たち、すべてが完全に窶れきっていて、身動きもしない、低く低く唱え続ける言葉、呪詛、思想にお前が耐えられるかな、この不可解で奇妙な現実にお前が耐えられるか、隙間をもった空間すべてが襲いかかってきて、一種恐ろしいほどの透明な秘密だ、考えてもみろよ、血の通った人間がいるかよ、事物生成の歴史の圧縮、発端から究極までに及ぶ、お前が夢想し続けた革命はこの俺のところでしか成し遂げられなかった、どいつもこいつも薄汚れている、さあ、お前さえ、時間が幸せな瞬間で止まるように祈ろうとも、地べたで這いつくばるウジ虫は耳の穴から出てくるって有様、意識がただ無意識だけに支えられて、崇高性のまぎれもない証明(照明)者はいずこへと、自足する淡い光の透明さへ、お前自身がお前を照らす光へと、そう信じても俺は確かに不服だぜ、自在の世界とまったく似てしまってはないかい?やたらめったら詩的な言葉遣いをするのはどうなんだい?お前の悪い癖だとは言えないか?何かを言いくるめようとするならば、不在を不在のまま置いたらそれでいいわけだからな、存在の苦悩だとか苦痛だとか夜に怯え夜に愉悦し朝はお前が目覚めぬまま何もせず空虚な日々をやり過ごすために薬をつかいお前がよしとするものをすべてお前が受け入れるとは限らないだろうぜ、それが本当にお前のやりたかったことなのか?真の確信、意識、変容、言葉たち、残響、満たされる泣いている魂、お前の最初の問いかけはどういう種類の落とし穴だったのか、数知れぬ推移、数知れぬ思惑、数知れぬ錯乱、現実と現実が一致するとき首を括ることになることだけはどうやら明瞭なようだが、他に何もしはしない、まだ夢をみる、俺は夢をみるんだ、こんなにも苦しい処刑をお前自身が叱責するときに何か煌めくようなものがあるとするならば、お前のやっていることもまるで無駄ではないようだが、よく憶えておくといいだろうよ、お前の理想が理想でなくなったときに華やかに散れ、お前自身の狂気と正気はさして違いがない。自分を屈服させること恐ろしいまでに、空は鮮やかでペンキで塗りたくったような鮮血が、ここにあなたはもういない、愛の深い心の一片ではなく、無自覚に劣らず、またこの長きにわたる耐えがたい拷問は一体誰に向けられているのか。

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