約束 2
2年の月日を経た。
あれから俺は野球に打ち込み、県内でも指折りの実力を持つ高校へ進学することが出来た。
大阪○蔭高校程の実力には及ばないものの、近年野球に力を入れている高校にスポーツ推薦で行ける程の実力をつけた。
全ては天との「約束」の為だ。
まあ、当の本人は覚えてないだろうけどな(笑)
でも、夏の風物詩である「甲子園」、そこへ出場して優勝でも出来た暁には天に想いを伝えるつもりだ。
幼い頃に約束した、一緒に頂点を取る。
他に何の取り柄もない俺にはもうそれしか考えられない。
1年生の頃は手伝いばかりだったが、夏に3年生が引退してからは徐々に試合にも出させて貰えるようになった。
そして、俺は高校二年生になった
○:眠い···
友A:相変わらずだな笑
○:練習に備えて体力を備えるのは当たり前だろ?
野球部には推薦で関東から入部してきた部員も多く、話し方も関西弁と標準語が混ざるようになった。
友A:まあそうだけどよ笑、今日はなんと転校生が来るらしいぞ!
○:へえ、この時期に珍しいな
友A:なんでも、東京から来るらしいぞ!しかも女の子!
○:興味ねえ···
友A:お前なあ、少しは彼女欲しいとか思わねえの?
○:全く
俺には心に決めた人がいるのだ、それ以外は眼中にない。
友A:まあいっか、可愛かったら俺がアピールするからな!協力してくれよ?
○:へーい
そう言って友人は自分の机に戻って行った。
間もなくして朝のHRが始まり、いつもと変わらぬ説明をされる。
そして、
先生:以上で終わり、ではなく今日は転校生が来ています
クラス:お
先生:ちなみに女子だ
クラス:おお!!
先生:入ってきてくれ〜
○:(なんでもいいから早く終わってくれ···)
ガラッ
?:失礼します
クラス:すっげえ美人···
ザワザワ
○:(どことなくあいつに似ているような···)
でも、雰囲気がまるで違う。
白い肌に綺麗で艶のある髪の毛
どれもあいつとは正反対だ
先生:それじゃあ自己紹介よろしく〜
天:東京都から来ました。山崎天です、元々は大阪出身なので仲良くしてくれると嬉しいです。
ニコッ
クラス:うおおおおお!!
○:!?
ガタン!
先生:どうした○○?まさか、2人は知り合いか?
○:知り合いも何も···本当に天なの?
天:そうだけど···
○:何で急に···!
転校生はまさかの片想いの離れ離れになった天だった
先生:おーい、もう一限の授業始まるから席に案内するぞ···丁度いい、○○の隣が空いてるからあそこに座ってくれ
天:分かりました
そう言って天は俺の隣の席に座った
先生:じゃあホームルーム終わるぞー礼
「ありがとうございました」
そのまま一限の授業が始まった
隣の席を何度も見るが、見れば見るほど天は昔の面影を全く感じさせなかった
○:よ、よろしく
とりあえず声をかけてみるも
天:·····よろしく
○:あのさ、
天:何···?
○:やっぱなんも無いわ
天:用事がないなら話しかけないでよ
中学生の頃までの天なら多分語尾に「!」がつくほどの天真爛漫さが出ていたけど、全く感じない
むしろ、同年代の中でも大人びた落ち着いた女性になっている
なんなら話しかけないでって今言ってたよな!?
○:ほんとに天なんか···?
全く別人の天に、頭を悩ましていた
休み時間中に話しかけようと試みるも、天の周囲には既にたくさんの人だかりが出来ていた
女:ねえ天ちゃんって呼んでもいい?
天:いいよー!
女:わ、私も仲良くして欲しいな?
天:ええでー!
·····なんか俺の時と反応ちゃうくない?
友人:よお○○
○:ん、どうした?
友人:お前、山崎さんと幼なじみらしいじゃねぇか
○:そうやけど···
そう言うと友人は両手を合わせて頭を下げてきた
友人:朝言った通りや、頼む!俺と山崎さんがお付き合いできるように手伝ってくれ!
○:無理
友人:はにゃ!?なんでや!?
○:唯一と言っていい人が転校して来やがったからな
友人:まさか···お前の言ってた今はいないけど片想いしてた女の子って···
○:それ以上言うな!
ペシン
友人:まじかよ·····せっかくとんでもねえ美少女見つけたと思ったんに
○:まあでも別にええで?お前がお前なりにアタックするんは
友人:まじで言ってんの?
○:まじだよ
友人:俺が山崎さん取っちまっても恨みっこなしやからな!
そう言ってあいつは天に話しかけに言った
○:まあ大丈夫やろ
天は多分、女の子には優しいのだろう
男が話しかければきっと俺みたいに冷たい対応をとるはず···
俺にまで塩対応だったのは気がかりだけど、多分高校で色々あったのだろう···
考えを張り巡らせているうちに友人が天に話しかけた!
友人:あの!や、山崎さん!俺とも友達になってください!!
○:(当たって砕けてもらった方が俺にとっても都合ええし、ごめんな笑)
帰って来たら慰めてやろうと準備していた矢先
天:ええで!私も皆と仲良くなりたい!!
○:ん···んん!?
友人:ほんま!?
天:ほんま!
友人:いよっしゃぁぁぁぁ!
○:う、うそやろ···!?
天は□にも変わらぬ笑顔で対応していた
□:よ、よろしく!俺は□!
天:よろしくね!距離感じるからさん付けいらんで?笑
□:OK!
○:一体何が起きてるんだ···
その後も休み時間目いっぱい、天は男女問わずに話しかけられて友達を沢山作った
その日は俺は天に話しかける隙を与えられなかった
唯一話しかけられた掃除の時間にも
○:教科書貰ったばっかで思いやろ?持つわ
天:いらん、○○の手なんか借りんでも持てる
○:な·····
そう言いながら重たそうに教科書をロッカーに運ぼうとする
女:天ちゃん重たそう···手伝ったる!
天:まじ?ありがとー!!
○:えええ!?
一体どういうことだってばよ···
部活中も天の事が頭から離れず、普段ならしないミスを連発してしまった
キャッチャー:センター!バックホーム!!
○:おらっ!
=≡Σ((( つ•̀ω•́)つビューン⚾️
投げたボールはキャッチャーのはるか上のバックネットに直撃した
○:くそっ···
日中の出来事とプレーの情けなさに苛立ちを隠せない
すると
監督:一旦全員集合!
ベンチの前に全員が集合すると、監督が話始めた
監督:今日からマネージャーが1人増える!
部員:おおおおお!
監督:来てくれ!
なんだろ、すごいデジャブを感じる···
天:き、今日から転校してきました。山崎天です···不慣れではありますが精一杯頑張るのでよろしくお願いします!!
○:はにゃ!?
部員:か、可愛い!!!///
困惑する俺と歓喜する他の部員達
監督:それじゃあ皆、練習に戻るぞー!
部員:おっす!!
天がマネージャーに加わったことにより、チームに活気が生まれた
俺1人を除いて···
練習が終わると、マネージャーがボトルを選手に渡してくれる
天以外にも数名マネージャーはいるため、効率よく手渡されていく
天:これ、どうぞ!
部員:あ、山崎さんありがとう!
天:いえいえ!
先に道具の手入れをしていた俺は、渡される順番が最後になり、天がボトルを持ってきた
○:天、ありがとうな
天:·····はい
うーん、この塩対応···
これじゃあ疲れた体に更に重石が乗っかるみたいだ
天:ねえ、早く受けとってよ
○:····悪ぃな
天から早々にボトルを受け取り口に含む
すると
○:ん···これアクエリやん
いつもマネージャーから手渡されるのは水だが、天から手渡されたのにはスポーツドリンクが入っていた
○:美味っ···けど、どうして?
天:○○のだけやからな((ボソッ…
○:なんか言った?
天:な、何も言ってないわ!///
何故だろう、心做しか天の顔が赤いような···
天:ほら!飲んだらさっさと帰る!
○:分かったよ、笑 ありがとうな〜
そう言って俺は自分の道具を片付けに部室に戻って行った
天:全くもう···///
でも、これで彼の理想に近づけているのかな···?
私は東京の学校に転校した後、○○の好みの女の子になるために最大限の努力をした
「髪はロングで女の子らしくて肌が白くて綺麗な綺麗な感じで…あ、あとはツンデレ?みたいな子やな!」
あの日○○がそう言ってから、転校先でも部活はせずに美容関連について猛勉強した
短かった髪も伸ばした。まあ長風呂は嫌いだからおざなりかもしれないけど笑
その後ツンデレについても色々な漫画や雑誌を漁ってなりきれるように頑張った
全ては○○の理想の女の子に近づくため
色々研鑽を重ねていくうちに、男の子から告白されることも増えた
ありがたいけど、私には○○しか見てないから断り続けた
そして、高校1年が終わりそうな冬に、父の転勤が決まって大阪に帰る事を聞いた時は嬉しくて泣きながら飛び跳ねたくらいだ
直ぐに友達に○○の高校を聞き、そこへの編入試験を受けた
聞いた所によると、まだ野球を続けているらしい
天:マネージャー·····やってみよう···!
今度こそ、今度こそ私の想いが伝わるといいな···
それに、野球を続けてるってことはきっと○○はあの
「約束」を···///
そうして転校してきた日
凄く緊張したけど、周りの雰囲気を察するに、少しは○○の理想の女の子像に近づけた気がする···
けど、冷たく接することは慣れそうにない。
なんで男の子ってツンデレが好きなんだろう···
一日を通して○○とは何回か会話を行ったが、上手く話すことが出来ない
冷たいからのデレの意味が未だに分からない
·····待って
じゃあ未だに私、ただの冷たい女やん!?
天:うわぁ···どうしよ···
--next--
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