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日記 特等席

私は学校があまり好きではない。
別にいじめられてるとか友達がいないとかそういうものは一切なく、むしろ仲の良い友達にも囲まれ、良い先生にも恵まれている。
それでも学校を好きだと思えたことはあまり無い。

毎日何十分もかけて登下校するのは体力のない私にとっては苦痛であるし、だんだん難しくなっていく学習内容に辟易してしまうし、学生の自分というひとつの人格を抱えて人と接するのはやはり気疲れしてしまう。
贅沢な悩みだなぁ、と自身でも思うのだが、好きじゃないものは好きじゃない。それは事実であり確固たるものなのだ。

そんな憂鬱とした毎日のうちの一日。今日、授業中にふと周りを見渡してみた。
居眠りしている同級生。風の音。先生の声。いつもと何ら変わらない景色の中で、私はひとつあることに気がついた。
今自分が座っている席、つまり窓際の席から見える青空がそれはもう、ものすごく綺麗だったのだ。

まず真っ先に思い浮かべたのは、自身の推し、甲斐田晴(以下:甲斐田)だった。

彼は「晴」という名前の通り太陽と青空がとても良く似合う人で、窓から見える景色はそんな彼の姿を想起させた。
青空と云えば……と私は次に、彼のオリジナル曲を思い出した。
「何色」という曲だ。


「何色」は甲斐田の最新のオリジナル楽曲である。
彼の様々な素晴らしい曲の中で、私は特にこの「何色」という曲が好きだった。
甲斐田のどこまでも晴れ渡っているような透明な声と、作曲家の堀江晶太さんが彼を抽出して解釈して描き出した世界が融合して、美しくも誰かを抱きとめるような囁かな優しさを感じられる、そんな曲だ。

この曲には、素敵なアニメーションMVが存在する。
そのMVの中で、甲斐田が布に愛おしそうにくるまった後、それを空高く飛ばすシーンがある。
空高く飛んで行ったその布は、晴天の空にたなびきながら、沢山の人々の目に留まる。

私は学校の教室という狭い世界の中から大空を見て、その布を自然と探してしまっていたのだ。その上、他の席からは木々や建物が邪魔して空が綺麗に見られない。つまり私の席は今この教室の中で1番綺麗に空が見える場所だったのだ。布を探すにはうってつけだ。
そのことに気がついてからは、憂鬱な気持ちになった時は必ず窓の外に目をやるようにしている。甲斐田が飛ばしたかもしれない布を探していると、自然と心が穏やかになっていくような気がするのだ。

些細な幸せを生活の中に見つけられたことが嬉しくて、私はまた今日も、甲斐田に感謝することになったのだった。

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