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なぜ出版社を立ち上げたのか

出版社を作る!と決意してから数ヶ月。

なぜ出版なの?


なぜいま出版?斜陽産業でしょう?と良く言われます。

本当にそうだと思います。
かつて本が飛ぶように売れていた時代を考えると、今なぜわざわざ出版なのかという気持ちもよくわかります。

でも先日訪れた「本は港」という神奈川の、面白い出版社が集まるイベント。そこで感じたのは斜陽という言葉とは真逆のイメージ。
集まった出版社のみなさんは目をキラキラさせて自分たちが作った本をそれはそれは嬉しそうに語ってくれました。
私が出版社を立ち上げたばかりだという話をすると、素晴らしい!と頑張って!と全力で応援してくださり、どんな情報も教えてくれる素敵な方々ばかり。

写真はLOCAL BOOK STOREで開催されていた「本は港」の様子

大手出版社のように次々作りバンバン売るとは違う世界。同じ出版でもそうじゃない世界。
全力で本作りを楽しみ、それを喜ぶ人たちと共有する。言葉一つ一つを妥協せず。本っていいよねって言い合う優しい世界。
私たちが目指すのはこの世界だと確信しました。

ただ、もっと本を作りたかった


私はもともと出版社を作りたい!という夢があったわけでもなく。
というかまさか自分が出版社を立ち上げるなんて夢にも思っていませんでした。

ただ、前職の出版社でブックデザインを担当させてもらい、そこで本を作ることの喜びに目覚めてしまいました。
退職後もただただ「もっと本を作りたい」という気持ちだけが強く残りました。

本づくりは大変です。
1冊を作り販売するために多くの人や会社に関わります。
著者、編集、ライター、デザイナー、印刷会社、製紙会社、出版取次、書店‥イラストレーター、カメラマンなども。雑誌になればそこにたくさんの取材先。

そこで行われる数々のやりとり。
どんな本にするのか、誰のための本なのか、どこで誰に手に取って欲しいのか、どのくらいの大きさの本なのか、どんな紙にするのか、
どんな表紙のイメージなのか、どんなイラストを使うのか。
そして制作に入り、絶対にミスがないよう何度も何度もチェックする作業も。

非常に骨の折れる仕事ですが、そうして出来上がった本のなんと愛しいことか。
それが本屋さんに並んでいるのを発見した時の感動。
それを読んだ方から感想をもらった時の嬉しさ。
もう全てが愛しかったのです。
大変な記憶が全て吹き飛ぶほど、本当に幸せな時間でした。

単純に好きなのです。本づくりが。

ちいさいころの自分を支えてくれた本たち


ちいさい頃わたしは不登校気味で
小学校に行ってもクラスに馴染めずすぐ図書室に行ってしまう子でした。
みんなが授業を受けている間、とにかく本を読みまくりました。
ファンタジー・ミステリー・伝記・図鑑・エッセイ・目につくものなんでも。
家でもいつも本を読んで、読むものがなくなったら家電の説明書も好んで読んでいました。
当時は逃避だったと思います。授業をサボって読んでいるという後ろめたい気持ちが、さらに読むスピードを加速していきました。
でも読んでいる間は本と自分だけの世界。
夢中で読んで、物語に入り込んで、読み終わった後も余韻が私を幸せにしてくれました。
誰かが作った本が、小さい頃の自分を支えてくれていたんだと思います。

もしかすると今はその頃の小さい自分に向けて作っているのかもしれません。
斜陽でもなんでも、誰かの生きる力になるならやっぱり作り続けたいとそう思っています。

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