見出し画像

ギレルモ・デル・トロが選ぶ2017年見るべき8本の映画

主にホラー/ファンタジーの観点から紹介されているのが面白かったので訳してみました。出典はcultura colectiva。


 ギレルモ・デル・トロやスティーブン・キングのようなアーティストは、受け手を怖がらせるためだけにホラーやファンタジーを物語るのではない。彼らメキシコの映画監督と米国の作家は、魂の暗黒面と人間の意思決定や恐れ、欲望の影響を探求する新しい物語を作り上げようと常に取り組んでいる。二人とも前世紀と現在のファンタジーの分野における最高のストーリーテラーだ。
 また、彼らはSNSでクリエイター達に好影響を与えた作品を積極的に薦めることでも知られている。熱心な読者でもあるキングは、想像力を刺激してより重要な社会を作り出すための訓練には読書がいいと確信しており、事あるごとに本を推薦する。同様に、桁違いの映画愛好家であるデル・トロも常に新しい作品を観ては世間へ紹介している。
 その点、ハリスコ(訳注:メキシコの州)出身の監督は昨年非常にアクティブで賢明だった。彼のリストにはそれぞれ異なるスタイルを持つ、素晴らしく貪欲な視点のストーリーが並んでいる。以下のリストを見てみよう。

Inglid Goes West (2017) Matt Spicer
 インスタグラムがフェイスブックを超え最も頻繁に更新されるSNSになった時代で、特定の界隈のインフルエンサー(影響力の強い者)に固執しいとも簡単に感動してしまう少女の危険な狂信をベースに物語は展開する。インフルエンサーの人生に割り込もうとロサンゼルスに移住した少女を演じる女優、オーブリー・プラザは、あらゆる面でポテンシャルの高い、昨年で最も優れた演技の一つを見せた。未来を念頭に置いた若者の解釈だ。

Brawl in Cell Block 99 (2017)  S. Craig Zahler
 デル・トロはザウラー監督の処女作「Bone Tomahawk」も公開当時「優秀かつ残忍だ」と褒め倒したが、今回もこの暴力的なストーリーに打ちのめされた。「Brawl in Cell Block 99」は、妻の命を救うため、一人の囚人を殺そうとセキュリティが最大レベルの刑務所に入る男の物語である。出演の機会を掴んだヴィンス・ヴォーンの見事な手腕によって、暴力は路上に息づいていることが示された。

ゲット・アウト(2017) ジョーダン・ピール
 この恐ろしく超常現象的なスリラーはファンタジーというジャンルの観点から見て最も優れた作品の一つである。皆がよく知っている商業的な映画に、非常に質の高い脚本と説話的な構造を組み合わせた今作は、当ジャンルでの同僚たちの優れた動向には躊躇わず賛辞を贈るデル・トロをやはり称賛させた。人種差別主義社会が未だマイノリティに対し拒絶と深い軽蔑を抱いていることを、主演のダニエル・カルーヤは鍵とも言える象徴的な恐怖のなか提示する。

Tigers Are Not Afraid (2017)  Issa López
 デル・トロを揺るがしスティーブン・キングの称賛を受けた本作は、既にメキシコでホラーとファンタジーの古典となっている。暴力と暗闇が覆う複雑な世界で起こる幼少期の寓話は、スペイン語の原題「Vuelven」(訳:帰郷する)の通り世界を圧巻したのち凱旋し、たちまちジャンルのファンを驚かせるタイトルの一つになった。デル・トロは「メキシコの新たな恐怖の声がイサ・ロペスであることは栄光だ」と述べている。

グッド・タイム(2017) ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ
 ジョシュアとベニーの二人は比較的業界では新人だが、ヴァンパイア役で有名だったロバート・パティンソンをニューヨークでストリートの正義から解放されようと最高潮のアドレナリンで疾走する小物の泥棒に変え、直近のカンヌでコンペティション部門に選出された。パティンソンは綺麗な子供という立ち位置から、勝手知ったる領域を離れ、業界の俳優が持ち得る機会を探求するためにはリスキーな仕事を受ける必要があると証明した。

レディ・バード(2017) グレタ・カーウィグ
 大学入学へと一歩踏み出し、カリフォルニア州サクラメントと自分自身から逃げ出して自由になりたいと切に願うティーンエイジャーのクリスティーン・”レディー・バード”・マクファーソンをシアーシャ・ローナンが見事に演じる。荒々しくも激しい母親との確執の解決までが見どころ。グレタ・カーウィグの巧みな演出で、ユニークなキャラクター達が交錯する本作は若者の感情そのものが主役となり、観客を笑いと涙に誘うだろう。

スリー・ビルボード(2017) マーティン・マクドナー
 専門家によると、本作は劇場鑑賞を逃してはならない作品だ。(メキシコでのプレミアは1月26日)フランシス・マクド―マンドが行方不明になった娘の事件の解決を試みる女性を演じる。納得のいく答えを提示してくれない警察署長へ向けて3つの看板を使ってメッセージを送ったことが、意固地で白黒つかない署長ウィロビーとその部下ディクソンとの闘いへと発展する。観客の記憶にいつまでも残る本質的な映画だ。

A Ghost Story(2017) David Lowery
 本作ほど幽霊の物語を詩的に、そして感動的に描いた映画はない。かつての住まいで彷徨う死者を演じたケイシー・アフレックからは、物語のどの場面でも痛みと記憶と喪失の感情があふれ出し、忘れがたい印象を残す。やがて観客は愛する人を失った際の圧倒的な痛みとノスタルジアを目撃するだろう。デル・トロが今作を2017年最高の一本と呼んだのは言わずもがなだ。

 いかなるジャンルや芸術活動においても、その道の偉大な識者たちのアドバイスを参考にすれば、あなたは最も優れた作品の証人になるだろう。 デル・トロの映画愛は、作品へと昇華され、彼をスクリーンの巨匠の一人にしただけではなく、彼の奇妙とも取れるファンタジーを創り上げるインスピレーションの源となった映画とそのアーティスト達にも注がれているのだ。

https://culturacolectiva.com/cine/las-mejores-peliculas-segun-guillermo-del-toro/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?