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鍼灸師は本当に食えない仕事なのか?12年のキャリアを収入と振り返る。

どうも豪華客船鍼灸師のリョウタです。

今船はモンテネグロのコトルという街に寄港しています。


タイトルにある通り、いきなり給料明細だけばーんと公開しても良いのですが、僕が豪華客船鍼灸師として本当に伝えたいメッセージとは何なのか?

というものを加えて話さないと、違った方向で解釈される可能性があるなと思ったので、最初に少しだけ話します。

先日こういったツイートをしました。

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鍼灸専門学校の入学前と後の違い~入学前~鍼灸師は国家資格です!東洋医学が注目を浴びています!卒業生達はこんなフィールドで活躍しています!~入学後~実際鍼灸で食っていけるのは5人に1人程度が現状です。なんでなん?😂


こういったことが起こる背景として、鍼灸師は「国家資格」だから安定して稼げるだろうと思っている人が学校に入学し、色んな現状を知る中で、こんなはずじゃなかった!という思いの齟齬からきているように思います。

それは学校にも責任があるかもしれませんが、そもそもどの業界でも成長しない人というのは、食べていくことが難しいのが常識です。



[豪華客船鍼灸師]収入と共に振り返る自分のキャリア史 [給料明細公開]

いきなりですが今の職場、環境で自分が成長できている!って実感、みなさんはありますか?

僕の場合、後から振り返ってみると

「自分はあの環境で成長できたな。」

とか

「あの事がきっかけで変われたかも。」

なんて思うことはありますが、中々、現在進行系で自分成長できてる!なんて思える人は少ないのではないでしょうか。

ドラクエみたいにレベルが上がった時、音楽でも鳴ってくれれば良いのですが、現実世界はそうではありません。

でもその“成長”って何なの?どう頑張ればいいの?って人は結構多いと思います。

そんな鍼灸師のキャリア形成について、個々の事例で紹介しているのが「ハリトヒト」さんで、鍼灸師に限らず、治療家として生きる全ての人にとてもオススメの本です。


僕のnoteも昔の自分が読みたいものを書く。というコンセプトで書いています。

そして昔から知りたいものとして「「キャリア」と「収入」の相関でした。

当たり前ですが、これは医道の日本にもハリトヒトにも書いてありません笑

治療院の求人とか見ても給料は20~50万※経験を考慮。とか書いていて“幅が広すぎ!”って思いませんか?

50万円もらえるにはどんな経験が必要なんでしょうか?マサチューセッツ工科大学を主席で卒業し、その後、宇宙飛行士になった経験でもあれば50万円もらえるのでしょうか。

今回は鍼灸師になって10年以上になる自分のキャリアを当時の月収と共に簡単に追っていき、今最終的にどれくらい稼げているかを見ていきたいと思います。


卒後〜4年目 関西のクリニック勤務時代〜つくばの研修生期間 月収8〜20万


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やばい月収ですね。これ免許取得後です。よくこれで1人暮らしして生きてこれたなと思います。

卒後すぐ1年だけ働いた関西のクリニック、そこに勤めていた頃は20万円くらいもらって、実家暮らしでした。

ボーナスは無かったですが、実家だったので余裕で暮らせていました。

問題はその後のつくば研修生時代です。当時1人暮らししていたのがエアコン無しの家賃3万5千円のアパート。

つくばおろしが部屋の中を容赦なく吹き抜け、常温保存でOKと書かれているオリーブオイルが、うちの常温では凍って使えなくなりました。

シャワーの勢いが弱すぎるため、かなりアグレッシブにシャワーヘッドの下に体をねじ込んでいかないと水を浴びることが出来ないなど、問題だらけのアパートでした。

週4回は大学の付属病院で臨床研修し、生活費はそれ以外の曜日や時間にアルバイトをしてやりくりする生活。

多分8万円くらいバイトで稼いでいましたが、家賃と光熱費、通信費で5万近くは吹っ飛んでいくので、残りの3万円で食事を含む、全ての生活費を賄っていました。

もう飲み会なんかに誘われた月の残りはもやし食って生き延びるしかないくらいギリギリでした。糖分ゼロのコカコーラを飲んでる人を横目で見て、糖分がいらないなら、僕にその糖分をくださいと言いたい気分でした。



4年目〜7年目 医療法人付属鍼灸院スタッフ、院長〜ホスピス事務長 月収22〜35万円

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研修を終えた僕は、つくばの隣にあるれんこんの生産日本一でおなじみの土浦市で就職します。

初めはその医療法人がやっている鍼灸院のいちスタッフでの採用だったのですが、院長先生のクロックスを懐に入れて温めておくなどの気配りが功を奏した結果、豊臣秀吉並みの爆速で出世し、いきなり事務長を任せられます。

もう僕の上には院長と総事務長しかいないという状況です。

正直訳がわかりませんでした。

この時は年棒制で400万円で契約していました。それプラス、つくばの研修生時代から行っていたクリニックのアルバイトが週一回加わり、年収にすると500万近くありました。

もう正直自分は勝ち組だと思いました。お給料前にお金が無さすぎて愛車のスーパーカブに60円だけ給油してもらったつくばの研修生時代から人生が一転しました。

スーパーカブにハイオクで満タンぶち込んでやりたい気分でした。ハーゲンダッツを結構食っていました。ヨーグルトの上蓋に付いたヨーグルトを食わずに捨ててました。調子に乗ってオープンカーを買いました。

しかし鍼灸の臨床が週に1回しか出来ませんでした。主な仕事はレセプト、お給料管理や新人さんの採用面接でした。

最初は優しかった院長も事務仕事能力ゼロの僕に苛立ちが募っていき、怒られる日々が続きました。辛かったです。

結果完全に病みました。いつしかもやしばっかり食ってたあの頃より体重が減りました。

辞めようと思いました。



8年目〜現在 豪華客船鍼灸師時代 月収30〜100万

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豪華客船に乗る最初の契約前、交通事故にあいました。

苦楽を共にしたスーパーカブ君が廃車になるほどひどい事故で、僕は意識を失い、気づいたら見知らぬ天井でした。

顎と右の腕の骨がバキバキに折れました。顎は右の下顎枝、左の顎関節と折れていて、骨を固定するため上下の歯を歯列の矯正器具のようなもので口が開かないよう針金のようなものでロックされました。

食べ物を1ヶ月、口から取ることが出来ませんでした。

そんな中でも体は元気なので口がまともに開かない中、入院中にもオンライン英会話に励んでいところ、フィリピン人講師に「あなた滑舌悪いわね。」と言われましたがそれにもめげず、毎日頑張り続けました。


そうして2013年の12月より僕は豪華客船の仕事をはじめ、今に至ります。


僕が給料明細を公開する事で伝えたいメッセージ

自分のキャリアについて、ダラダラと書きましたが結論から言うと、鍼灸師に世間一般でいう安定というのは、ほとんど期待できません。

しかし一方で今社会全体の大きな流れとして、トヨタのような大企業ですら終身雇用が崩壊し、『個』の時代に移りつつあります。

僕の友人に免許を取ってから、家の近所の接骨院に10年近く勤め、サラリーマン的な鍼灸師をしている友人がいます。

一つの所に長く勤め上げるということは少し前の価値観であれば、とても評価される事かもしれません。

ただ今の時代だとそこで学べるスキル等が高くなかったり、人脈が得られなければ、そこから独立してうまくやったり、転職して更に良い条件につくのは相当厳しいと思います。

大げさに言って20〜30代で大した経験や実績が無ければ人生の選択肢を詰んでしまう可能性さえあります。

僕自身、色々回り道をしたり鍼灸じゃないこともやってみたりしましたが、今そのキャリアから得たスキルを組み合わせることで船で働けています。

具体的に言うと、国立大学の卒後研修で臨床の基礎を学び、事務長として人前に立って話すことに慣れて、英語を勉強したおかげで外国人に治療を提供できる。

僕の船での収入は月に大体7,80万くらいもらっていて、これは僕が日本で鍼灸師として働いた額のどれも上回っています。

僕は若いうちにある程度まとまった、お金を稼ぐということに意味があると思っています。本来なら労働で失われてしまう、若くて健康な頃の自由な時間をお金で買うことができます。

自由な時間を使って海外旅行をしてみたり、勉強したかった治療法を学びに勉強会へ行ったり、経験や感性を若いうちに養うことが出来ます。

それだけでも世の中には、こんな楽しいことや、可能性がたくさんあるんだということに気づけます。

世界でしか見ることの出来ない数々の素晴らしい景色があり、世界には面白い人がたくさんいて、そして世界には鍼灸に限らず、もっと面白い治療法もあります。

僕はすごく勉強できたわけでも、特に能力が優れているわけでもないのですが、働く環境を海外に変え、日本鍼灸×英語のようにスキルを組み合わせて自分のポジションを確立し、今もなんとか食べています。

旅行しながら世界を見て、お給料を頂き、そのお金で自分のスキルに投資し、そのスキルを使いゲストを治療して感謝される。

この好ループがうまく回っているので、おかげさまで今のところおおむね満足した人生を送れています。

20~30代のうちに治療家としてスキルを獲得し、英語やスペイン語などを習得しておけば、経済的、時間的にも自立でき、人生のコントロールが簡単になります。

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自分の市場価値はどうやったら上がるだろう?

自分が市場や社会に貢献できるスキルって何だろう?

というのを僕含め、色々な鍼灸師の先生のキャリアを元に参考にしてもらえればと思います。


かなり前置きが長くなってしまいましたが、ここからは実際に給料明細を公開していきます。

僕は2017年10月から2018年6月までの約8ヶ月間、日本人鍼灸師としてトップの売上を走り抜けました。

最初に断っておきますが船に乗る目的は旅行、英語、思い出作りなどそれぞれなので、別に売上をあげる=凄い事とは決して思いません。

僕はむしろ会社の売上至上主義を否定したいがために、今日まで頑張ってきたと言っても過言ではありません。(この辺りの自分のモチベーションについて書いていたら5,000字を超えたので、それはまた別の機会に公開します)

では早速



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