なぜ有効打を貫けなかったのか。もっと自信を持て。

試合情報

J2リーグ第26節 京都サンガF.C.vs東京ヴェルディ @たけびしスタジアム京都 18:00KO 前半3-0/後半1-0 合計4-0

〈得点者〉
【京都】一美(16分・26分)、ジュニーニョ(17分)、宮吉(48分)
【ヴェルディ】なし
〈交代〉
【京都】
73分:ジュニーニョ→中野
80分:宮吉→冨田
88分:小屋松→金久保
【ヴェルディ】
46分:平→内田
46分:李→澤井
62分:レアンドロ→端戸

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

試金石の試合

永井体制4試合目のこの試合。筆者はこの試合を試金石としてとらえていた。強い相手に対して自分たちのサッカーを自信を思ってできるかがとても大事なことだと考えていた。もちろん4試合目でそこまでの完成度は求められないかもしれないが、途中就任である以上は今期に結果を求めるという視点ではこの試合での完成度は必要だろう。
対する京都は今シーズン好調を維持し2位。攻撃の場面から守備の場面までつながりを持った組織的なチームである。近代的なサッカーでJ2リーグではずば抜けた完成度だろう。
それではいつも通り守備と攻撃に分けて振り返りたいと思う。

攻撃

ヴェルディは4-4-2でのスタートを選択し、もっとも前半で有効だった攻撃は下図のパターンである。

京都は4-1-4-1から4-4-2への可変守備を選択。平やヨンジは2-3-5vs4バックの利点を生かすサイドチェンジからの攻撃を使う機会が多かった。実際この形からはチャンスシーンや純輝が仕掛けるシーンにまで発展しており、京都に対してもかなり有利な試合運びをできていた。純輝に預けてから井上あたりのフリーランもあり、ある程度は勝負できているなと感じた。

また今までからの変化として山本のSBはハーフスペースに位置しており、中盤の補助的な意味合いもあったのかなと考える。もしくはライン間の選手が下りてくることを避けたかったのかもしれないが、すこし特徴的な位置取りだった。

そして相手の狙いが実った1失点目、ハイプレスによって奪われた2失点目と立て続けに失点したところで5-4-1⇔3-2-5へ変更。そこからは下図のような形で窒息する場面が増えた。

まず一美は皓太にマークにつきそこからの前進をキャンセル。宮吉は井上につきながらリヒトにボールが出るとプレス。そこを庄司が埋めて4-4-2へとシフト。小屋松は少し内側に絞ってハーフスペースの選手を消し対応。
平にボールが出た際にはジュニーニョまたは重廣が出ていき、行かなかった選手が優平をマーク。庄司が重廣の空けたスペースを埋めて4-4-2へシフトしていくという、理想的な可変を実現させていた。
さらに素晴らしかったのはヴェルディのWBにボールが入ったときにはディフェンスラインがスライドしてSBがプレス。幅が足りない逆サイドのヴェルディWBには京都のSHが下がってサイドチェンジをキャンセル。ヴェルディがバックラインにボールを戻したタイミングで4-1-4-1に戻るという完成された守備を見せつけた。
正直な話、ヴェルディが4-1-4-1の時にやってほしかったのはこの守備なのである。もう過去の話にはなるが。

そして後半は2枚替えから4-4-2へ変更。何度か見られた形が下図の形である。

左サイドで密集を作ってから右サイドで攻略するパターンである。ディフェンスラインの裏に抜け出す動きが多くなりボールサイドに京都を圧縮させることに成功し、サイドチェンジからチャンスを創出した。特に端戸を投入した後には裏への抜け出しと、下りて受ける動きが同時に発生するシーンもあり非常に攻撃は活性化されていた。もちろん相手の試合運びのペースが変わったことにも起因するが、前半のロングボールからのチャンスメイクに匹敵する攻撃だったと考える。

またこの試合では疑似カウンターの形も上手くいっていた。特に前半最大のビッグチャンスとなった前半8分のシーン。あれはゴールキックから相手を自陣に引き込みその裏のスペースを見事についた攻撃だったと考える。

個人的にはヴェルディが4-4-2で攻撃している時間帯に関しては相手に受動的な変化を引き起こさせることができていただけに、前半での5-4-1への変更は受け入れがたいうえに理解しがたいものとなった。唯一の利点としてはリヒトの持ち上がりからの縦パスだが、縦パスの入った後がなかなかゴールに近づけず不発に終わった。

守備

京都の攻撃の基本陣形は偽SB採用の2-3-5。ヴェルディは攻撃の中心である庄司に優平をマンツーマンでつける4-4-1-1を選択した。それが下図である。

京都の攻撃で再現性のある動きはまずヴェルディ中盤ラインの前に1人下りてきてヴェルディのCHをつり出す。つり出された選手の作ったスペースにCFまたは逆サイドのIHが下りてきてマークの選手をつり出し、ディフェンスラインにギャップを作り、WGが抜け出したり、CFがポストプレーをするものだ。実際、1失点目はその動き出しから一美にポストプレーをされかけたところから始まっている。ジュニーニョは裏に動き出すようなそぶりを見せており、一美にロングボールが出たのち落としたボールのサポートに行きかけたところでヴェルディのパスミスを拾い、最後は一美のゴールにつなげた。事故のようにも見えるあの失点の根底には、京都のしっかりした狙いがあったと考えられる。

そして5-4-1へ変更。その時同時にヴェルディは庄司へのマンツーマンを辞める。これが3失点目の引き金となってしまう。

上図は5-4-1変更後の守備だ。庄司が空いてしまうため、ボールサイドのCHはプレスに行かざるを得なくなる。その空けたスペースにはCHがスライドしきれず、京都に自由に使われてしまっていた。そこに選手が下りてきてヴェルディのHV、CBを引き出し裏へ抜ける形だ。
3失点目は4-4-2の時点から裏を狙い続けていたジュニーニョにつられてラインを下げた奈良輪のギャップを使われ、一美に抜け出しを許し失点。パスの出どころは庄司だった。ここまですべて京都の狙い通りであり、5-4-1への変更または庄司を手放す判断は1つもメリットがなかったといってもいいだろう。真意を聞きたいところである。

そして他の攻撃パターンとしてはCBが高い位置で持ちヴェルディのマークをずらし、そこにIHが下りたり、SBがチャンネルランで平の空けたスペースに走りこんだりする下図のような形もあった。

レアンドロをスタメンとして使う以上は守備はほぼ10人で行わなければならない。(レアンドロに明確な守備タスクがあれば別)そのなかで守備の重心を低くしたのはミスだと考える。偽SBのチャンネルランや精度の高いキックを持ったCBのいる京都に対してレアンドロのスタート起用は守備タスクが完全に整備されてない以上はリスクだったのではないかと考える。これに関してはホワイトと同じ轍を踏んでしまったなという感じがする。

そして後半、ヴェルディは4-4-2へ変更し、庄司へのマンツーマンに再度取り組んだものの澤井のポジショニングの悪さが目立ってしまった。それが下図である。

本来であれば守備時4-4-1-1であるべき状態なのであるのに対し澤井がディフェンスラインに吸収されてしまい、偽SBの黒木にプレスに行く選手が潮音になってしまい、中盤に大きなスペースが生まれる結果となった。ただ澤井だけが悪いのかというとそうではないと考える。4失点目の時点で安藤のキックが脅威であることは確かだった。そこにプレスがいけない状況ではなかなか逆サイドを捨てられない展開であったことも確かだ。このように守備の未整備がチームに混乱をもたらし、バランスの悪さを生んでいた。

また4失点目に言及しておくと、京都が前半から仕掛けていたWGのバックラインのピン留めの完全に引っかかった形となった。CBが下りた選手に反応して上がってしまったにもかかわらず、SBは幅を取るWGによってラインを上げられずにそのギャップを使われ失点。相手の思うつぼという失点であった。

まとめ

試金石と位置付けた試合で0-4と完敗。個人的には今シーズンさらに飛躍するのは難しいと考える。もちろん長期的視点であればそこまで問題の無いことであるが。また2失点後のフォーメーションチェンジにも納得がいっていないのでそのあたりは非常に気になっている。人海戦術で行こうとしたのなら間違いだし、あまりにもメリットがなさ過ぎたかなと思う。
あと選手達には自信をもってやってもらいたい。ポゼッションには勇気がいる。ヴェルディが後ろからつなぐサッカーを選んでいる以上は当たり前の話だ。もちろん今節のような試合は存在するが、それでもやらなきゃいけない。永井監督は複数年続けると考えているので、ここからさらに発展していくことを願っている。
京都に関して触れておくとやはり完成度は段違いだなと思わされた。この試合に関してはリアルタイムを含めて4回フルタイム視聴したが、設計の素晴らしいところが多く、京都に勝つのはJ2では至難の業だなと感じさせられた。昇格候補筆頭だろう。そして一指導者としては興味深いチームでもあるので、これからも注目していきたいと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました!!


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