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パスの受け手のこと考えてる?〈長崎戦レビュー〉

試合情報

J2リーグ第30節 V・ファーレン長崎 vs 東京ヴェルディ
@トランスコスモススタジアム 18:00KO
前半1-1/後半1-0 合計2-1
〈得点者〉
【V・ファーレン長崎】
玉田(27分)、角田(70分)
【東京ヴェルディ】
新井(6分)
〈交代〉
【V・ファーレン長崎】
55分:玉田→イバルボ
76分:角田→黒木
【東京ヴェルディ】
39分:新井→河野
66分:クレビーニョ→永田
84分:小池→井上

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

得点すらも危ういこの頃

今節の対戦相手はV・ファーレン長崎。順位も近く負けるわけにはいかない相手だ。
ヴェルディは新加入新井を左WGで先発起用。他は特に変更なし。
長崎は攻撃陣が強烈な面々。今シーズン17ゴールの呉屋に、未だキック精度に衰えを感じさせない玉田。ベンチにはイバルボも控えている。
そしてCHには新加入2人組。この試合、というかこのチームはこの2人の存在はなくてはならない存在だと感じた。攻撃から守備までのタスクを柔軟にかつ正確にこなしており、さすがにJ1から借りているだけあるなと感じさせられた。
この試合のヴェルディはシュート5本、ボール保持率48%。シュートはまあいつも通りだし、ファイナルサードの連携は以前からの課題だが、今節の最大の課題はボール保持率である。50%すら切ってしまい監督の理念にかなり反する内容になってしまった。今回のレビューではこの辺りの原因に迫っていければいいかなと考えている。
それでは攻撃と守備、そして今回は「攻撃停滞の理由を探る」と題し、考察していくコーナーを設けて書いていきたいと思う。

攻撃

ヴェルディのビルドアップについてまず触れたいと思う。

前半序盤に関してはこのようなビルドアップ経路が多かった。序盤の長崎の守備は前線から制限をかけに来るシーンが何度かあった。そうなると長崎の後ろの選手もコンパクトな状態を保つ。するとヴェルディはサイドチェンジが有効になってくる。そこにSBのインナーラップがタイミングよくかかわるだけで相手SBを中に引き留めることができ、先制点のような新井のドリブルのシーンが生まれていた。
2つ目のライン間への楔に関してである。前線から来る長崎が少し間延びする瞬間がある。その時に楔を打ち梶川などが前を向くシーンから前進していた。梶川が良いところは最初の選択肢としてしっかりと前を向くことも持ち合わせていることだろう。

しかし長崎も守備を修正し少しセットディフェンス移行を優先し、下図のような状況になる。

まず中央圧縮で縦パスを遮断。2CFの守備はアンカーのカバーシャドウをしつつ寄せる守備に変わった。前半序盤のように、相手が能動的にズレを作るようなことがなくなり、ヴェルディからの能動的な動きが必要になった。しかしここから選手の交代をしてもなかなか変わらなくなってしまう。後ろのビルドアップに焦れて前の選手がどんどん下りてきてしまった。とにかく後ろに重心が下がってしまい、前進できない状況に。長崎からすれば中盤の前やFWの前に選手が多くいる状態は守りやすいと考えられるだろう。DFラインはマークがはっきりすることも含めてである。ここからはシュートもままならなくなってしまった。長崎はマークをぼかして、1人で2人以上守るのが上手かったなと感じさせられる。水戸戦は人についてくる守備だったのに対し、長崎のようにゾーンでマークをぼかされる相手に関しては弱いなと感じた。逆に言えば水戸に対して勝ったのも腑に落ちたとも言える。

そして押し込んだ後の攻撃にも触れておきたい。

ヴェルディは大外を使ってからのポケット攻略を狙うシーンが多い。その中で相手ディフェンスラインはチャンネルを埋めてスペースを空けてしまったり、チャンネルを埋められない場合がある。しかし長崎はCHがとても気が利く。上図のようにCBがチャンネルランへの対応をした場合にはCHがCBの位置に下りて5バック化。もしくはヴェルディIHにCHがついていっての5バック化などしっかりとヴェルディの攻撃パターンに順応し、確実にヴェルディの攻撃を封じてきていた。正直今のヴェルディに成す術はなかったなと考える。

守備

今節も4-4-2でのセットディフェンスを基本としていた。

長崎の攻撃時は2-4-4。水戸戦同様、2CHvs2CHの局面ができてくるため長崎もそれを回避しようとしてくる。それも水戸と同じ回避策のCB間落ちとチャンネル落ちである。特にヴェルディが弱いのはチャンネル落ちである。ここに選手が下りてくる場合、レアンドロはここまでは頑張って追わない。小池は右にはSB、左にはインサイドに絞ったSH。クレビーニョもSHにまずはつこうとしていた。つまり動いたら負けだし、動かなくても負けというかなり厳しい状況が続き、ボール奪取ポイントが相手を深く引き込んだPA付近になってしまいポジトラが不利になるシーンが多かった。ボールホルダーに強度の高いプレッシングをかけるポイントを定めていないため、ボールを奪えずにずるずる下がるシーンは多く、支配率が低下する一因になったといえるだろう。特に香川にはフリーでボールを受けられてしまいクロスを上げられたり、そこのマークのズレからPA内に侵入されるなど、やはり守備の改善は待たれるだろう。


これが先ほどのボール奪取ポイントが定まらないことの弊害の一つ。簡単にサイドチェンジされるパターンである。これはロングボールのパターンだが、中盤の選手の横向きのドリブルからサイドを簡単に変えられたりと、ボール保持したいのにボールはなくていいの?と聞きたくなる守備であった。

攻撃停滞の理由を探る

それでは今節起きた事象から、攻撃停滞→ネガトラの流れに関して軽く考察をしようと思う。まず今節目立ったのは、レアンドロのポストプレーでのボールロストが多かったことだ。まずは25:48のシーン。

続いて49:35のボールロストシーン。

そして最後の52:02のボールロストから被カウンターのシーン。

この3つのシーンをピックアップすると共通点が出てくる。それは後ろに下げる選択肢を受けてのレアンドロが持ちにくいこと。あとはレアンドロが下がって受けるまでは良いものの前を向く選択肢を全く選ばなかったことである。2つ目に関しては他の選手も該当する。

基本的に縦パスの後ろにサポートがないのは受けた選手がすぐにパスできないということになる。最低でも他の方向を向くためだったり、他の選手が後ろのサポートを作るまでのワンテンポが余計に入ってしまい、ボールを取られてしまうということになる。上図のプレーはすべて自分で前を向ける上に、後ろに確実なサポートが用意されていない(敵が近いなど)。ただ前を向く選択肢を持っていれば少し話は変わるが。
下りる動きと前に上がる動きが同時に起こるとスペースを突きやすいのは当たり前なのだが、とはいえ後ろに下げる選択肢がないのは問題である。無論後ろに下げてボールを受けた選手が、前に動き出した選手にパスを出せることも、後ろにサポートが必要な理由でもある。
筆者がここから読み取ったのは、ポストプレーをした選手は自力で前を向き展開するタスクがあるのではと予測できる。1つ目のシーンに関しては梶川がいるべき場所で我慢できず、前にランニングしてしまったのも原因であると考えられるが。

ここで大事なのがレイオフの考えである。下図を参照したい。

レイオフは後ろ向きのポストプレーに対して、前向きの3人目が関わることで前に前進する一連の流れのことである。ヴェルディにはこれが足りないんじゃないかと考える。後ろ向きを用意できれば、その選手からでも展開できるからである。そしてヴェルディで3人目の役割を担うべきはアンカーの選手もしくはSBの選手が内側に絞ってプレーしても良いだろう。上の3つの例で大事なのはCB→レアンドロの流れだということだ。つまりアンカーの理仁が3人目として関われば、ボールをイージーにロストせずに、さらに展開できるのではないかと考える。つまりCFに絶対自分が展開しなければならないような状況を減らすということだ。

そしてこのレイオフの考えは攻撃だけにはとどまらない。守備にも関連してくる。もう一度上図の3つの例を見てほしい。すべてアンカーがも少しボールサイドに寄れば相手のカウンターを正面から対峙することができ、ネガトラの改善につながるのではと考えている。あくまで机上の空論の域を出ることはできないが。筆者の考えではレイオフ、もしくは後ろ向きのボールホルダーに対する真後ろに下げる選択肢があれば、攻撃とネガトラの両面でプラスな効果が発揮できるのではと考えた。

ただ覚えておいてほしいのは、当たり前だがなるべく前線の選手は下りることなくライン間で受けることや、そのエリアで前を向くことが好ましい。
しかし長崎戦を見た感じだと、前線の選手が動かないがためにビルドアップが停滞し、一番楽な方法である下りる動きに頼ってしまっているのが現状である。これによりサイドチェンジをしても選手が下りているためサポートが間に合わずボールロストをしてしまう。これが前半途中から起きてしまう。さらに守備の未整備により守備の時間が増え、体力を余計に消耗し、攻撃で足が止まり先ほどの下りる現象に戻るループになっていると筆者は考えている。その解決策が先述したものであるという順序だ。少しわかりにくい文章かもしれないが、何か疑問があればTwitterで聞いてほしい。よろしくおねがいしたい。

まとめ

今回は文章の構成を変更して、考察と解決策の提示をさせてもらった。何か意見あれば先ほどと同じくTwitterへ。タイトルの「受け手の選手のこと考えてる?」というのは、後ろも横のサポートも作らずにレアンドロに出してよろしく~って任せてんじゃないのっていうところ。受け手が他の選手でも同じである。そこで僕は後ろに選択肢を提供すべきではという解決策を提案させてもらった。
あと、今節に関しては良い時間帯すらなかった。あったとしても長崎が守備をアジャストする前の10分くらい。前進の仕方をもっと工夫しなければボールロストはかさみ、負けることに今後もなると考える。これからの変化に期待するしかない。攻撃面も守備面も。
また次の記事でお会いしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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