効果的な前進とそれでも「改善されない」課題

J2リーグ第9節 東京ヴェルディvsFC琉球(H)@味の素スタジアム
前半1-0/後半0-1 合計1-1

両チームのスターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

首がかかり始めた時期

前節全く流れがつかめない中、逆転負けという結果に終わったホワイトヴェルディ。3試合の間、修正が思うようにできず柏戦の戦い方をベースにずるずると相手に飲み込まれてしまった。やはり今回のタイトルである「効果的な前進」というところが最も大きな課題であり、山形戦からの1週間でどのように修正するのか注目である。
そして今節の対戦相手は5位の琉球。直近4試合は3分1敗と勝ちがなかったものの、開幕4連勝でJ2を席巻しているチームだ。樋口監督に監督が代わってからも、J3時代にも強みであった攻撃力を武器としている。この試合ではその攻撃力を抑えられるかも大事になるだろう。
それではいつも通り攻撃と守備の2局面に分けて振り返りたいと思う。

攻撃

今節のスタメンは4-3-3とシステムを変えた上に、中盤の3枚を渡辺・潮音・優平とかなり機動力を重視した編成となった。やはり定位置で力を発揮するタイプの内田や若干展開力に欠けるヨンジなどの序列が下がってくるのは当然の流れとなるだろう。その中で森田や河野が出場機会を増やしてくるかもしれない。

そしてビルドアップの形に大きな変化が現れた。(下図参照)

潮音をCB間に落とすことで持ち前の展開力を生かす。そしてSH-CH間に優平と皓太を配置し相手SHにヴェルディのSB・CH・CBという複数のプレス対象を突き付けて、迷わせることに成功していた。

さらにはこのビルドアップの形で3つの動きがみられた。(下図参照)

①インサイドのWGが落ちてIHが裏へ動くパターン
②IHが低い位置へサポートに行き空いたスペースにインサイドのWGが落ちてくるパターン
③両CBが相手の2CFの脇からドライブして前進するパターン

もちろんこの図には載せていないが、皓太や優平による個人での前進や攻撃時に3-2-5に近いフォーメーションを取ったため、効果的な前進に必要だった幅の確保ができ、相手4バックのカバーできない逆サイドに展開しPA脇に多く侵入していた。(下図参照)しかしこの試合では右アウトサイドレーンに若狭が入り、1v1という意味では迫力が足りなかったので、小池を右SBに置いて、右WGにインサイドで仕事ができ守備時にしっかりサイドで勤勉にやれる選手という配置が望ましいなと思った。そうすることで中央からの前進と突破に加え、サイド攻撃も輝けるのではないかと思う。

前半は琉球が2枚のCFがプレスをかけ、もしいなされたら潔く少し引いた守備をしていたので、相手の1stプレッシャーラインを超えるだけで容易に前進できていたため、今まででもベストに近い前半を過ごすことができた。ゴールシーンに関しては琉球が前半では取り組んでいなかった前線からのプレスでマークがずれてしまい、うまく前進しゴールを決めた。一瞬の隙を見逃さない点では、今年のヴェルディの良さを感じたのではないだろうか。

しかし後半は今シーズンよく見た停滞具合となった。その原因としては下図のようなプレッシングを琉球が実行してきたことが大きな要因だろう。

このプレッシャーによりビルドアップの出口を失い、地上からの前進ができなくなり、前にロングボールを蹴る回数が多くなってしまった。この追い込まれ方は、少し形が違うものの山形にやられたプレッシングと同じである。タイトルに書いた「改善されない課題」というところである。今節もビルドアップの形を変えある程度の改善は見られたものの、相変わらず前プレ耐性が無いのである。ホワイトは常に課題に向き合いある程度の解を得続けてきているので、次節新潟戦での改善に期待したい。

また潮音→森田、優平→河野、渡辺→ヨンジの交代もうまくいかなかった。潮音の交代によりCB間落ちする選手があやふやになり、更に前進を放棄した形になり、押し込まれ始め自然と5バックの形になっていた。(下図参照)

さらに河野の投入が失点を招いたがそこは守備で触れたいと思う。(上図の説明に関しては後述します)

守備

今節の守備は4-5-1のセットディフェンス(下図)で琉球の攻撃を封じた。

琉球も攻撃時フォーメーションは3-2-5。しかし、CHをCB間落ちさせるヴェルディとは違い、左SBの徳元を片上げするタイプの3-2-5。さらに違う点は中盤の構成。琉球は散らすタイプの中盤構成のため、皓太と優平がそこをある程度自由にさせず、受け手の限定ができればさほど苦労しないので、前半はある程度守れていた。(何度かスライドが遅れたシーンでチャンスは作られていた。)

もちろんヴェルディの攻撃時と同じサイドチェンジの攻撃も仕掛けていた。

トランジションの話をすると、正直ぎりぎりだなと感じた。中盤の選手はビルドアップからフィニッシュの部分まで関わるので押し込んだ時に全員が前に集まり間延びして被カウンター耐性がない場面も見られた。そして残っている選手にスピードのあるプレイヤーがいないため最悪守備の決壊もあり得るのかなと思っている。

話を戻して後半の守備。攻撃面で触れた低い位置でのボールの放棄により全体の重心が下がってしまい、さらに運動量の低下により純輝が徳元について下がったり、林のプレッシングに後ろがついていけなかったり、潮音や優平が琉球のタクトを振る上里と風間にプレスへ行けなくなったりさらに重心が下がっていく。(下図参照)

そして河野が投入されると、上図でいうと渡辺の位置に入ったのだが、河野だけが林と並ぶくらいの高さまでプレスに行ってしまい、徳元や大外に流れた河合などへのパスコースを与えてしまい、最終的には失点のきっかけのPA脇への侵入を許してしまった。これはピッチ内の選手の意図と、ホワイトのメッセージのズレが出てしまい上手くいかなかった。これは明らかな采配ミスであり、なんならもっと攻撃時に前進を促すような交代が切れるようになると良いなと思った。

まとめ

この試合がかなり良かったので、方向性としてはいいのではないかと思う。中盤の構成がこのメンバーなら、ゲームメイクからフィニッシュまでの仕事を求められるので、今まで出場機会のあったヨンジや内田などの序列は低くなっていくのだろう。また前線の選手も攻撃時と守備時のタスクが内と外など違うものの能力が求められるので、こちらもまた出れる選手が限られてくるだろう。また試合のクローズを考えたときに、陣地回復を単独で担える選手も欲しいなと感じている。
今シーズンの中でもかなり良いほうのゲームではなかっただろうか。内容の改善も見られているので、また来週も期待しておきたいなと思う。次は、前プレに耐えられるビルドアップができているのか注目したい。

最後まで読んでいただきありがとうございました😊



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?