晴れの日のドーナツ
「バムとケロのにちようび」という絵本がある。
雨の日の日曜日。せっかくのお休みなのに遊べない。
家を綺麗に掃除して、ドーナツを作って、絵本を読もう。
しっかりもののバムはとっちらかった家の掃除に取り掛かる…。
お話が面白いのはもちろん、この絵本に出てくるドーナツが、とにかくおいしそうなのだ。
お皿にこんもりと盛りつけた、きつね色のドーナツ。
ドーナツが食べたくてたまらなくなる。
今日は休みで、もうすぐ11時になろうとしている。
外は明るくていい天気だ。けれど、特に出かける用事もなく、スマホやらテレビやら見ていたら一日が終わってしまいそうだった。
作ってみよう、と思った。
作り方をスマホで調べる。次々と出てくるレシピから、家にある食材で作れそうなのを選んだ。
人によってはおからを使ったり、豆腐を使ったり、揚げないものもある。
いろいろな事情や願いから、工夫して作られている。
「レシピ」の語源は、元はラテン語で「受け取る」を意味する「recipe(レキピオ)」からきているという。
昔は代々と親から子へと受け継がれてきたのだろう。
今では多くの人のレシピを受け取ることができる。
作り方はシンプルだ。材料を混ぜて、型を抜き、油で揚げる。今回はトッピングもしない、素朴そうなレシピにした。
油に入れると、クリーム色だった生地が、じゅわじゅわと音を立てて、こんがりと色が変わっていく。
ひっくり返して、両面がきつね色になるのを待つ。
一つ、網に取り出した。
揚げたてを半分に割ってほおばる。
表面はサクッとして、中はほろほろとしている。
お店に行けば出来上がっているものを、自分の手で1から作ることができた。
何もすることのなかった一日のはずが、心がワクワクとしていくのがわかる。
あとはバムとケロのドーナツよろしく、お皿に積み上げていった。
すべて揚げて、キッチンを片づける。
せっかくの楽しみの後に、憂鬱な片付けが残っているのは嫌だ。
ソファの横にお皿を置き、ようやく一息ついた。
まだ温かいドーナツからは、甘い匂いが漂ってくる。
窓から、陽の光が入ってきた。時刻は、12時を回ったばかりだった。
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