大学三年生の秋のことだった。少し寒くなってきた十月頃に、大学のカフェで僕の彼女になったばかりであったアスカは、少しニヒルな笑みを浮かべながら口を開いた。 「低級な知性と、高級な知性の間にコミュニケーションは成立しない。そうは思わない?」 簡単に言えば、彼女が言いたいのは「バカとは会話が成り立たない」ということだった。アスカは自分の知性に凄く自信を持っている人で、悪く言えば傲慢だった。上から目線で、言い方を変えれば嫌なやつだった。不運なのは、彼女には悪気が全く無いことだ
「俺さ、ガールズを踊りたいんだよね」 1回生の頃、たまたま大学寮で同じ大部屋になったコウキはそう言った。ガールズとは何だろうか。そう僕が尋ねると、動画を見せてきた。 ガールズって言うのは、主に女性が踊るフェミニンなダンスらしい。僕はダンスをやったことがないのでわからないが、どうも他のジャンルとは違うようだ。 コウキはこの動きが良いんだよ、といって真似していた。僕は「なんかクネクネしているね」としか言えなかった。僕にダンスのセンスは無いから仕方が無い。 ウキウキ
「ようこそ、春木君。何もない家だけど、ゆっくりしていってね」 小学生のころ、仲良くなったユミちゃんの家に遊びに行ったときに、彼女の母親に最初にそう言われた。 彼女の家は、確かに何もなかった。言ってしまえば、貧乏だったのだろう。確かによくよく考えると、ユミちゃんの服は少し古くて解れていたし、体型は痩せていた。 家には物は多かったけど、高価なものや流行の物などはほとんどなかった。唯一、ユミちゃんの部屋にだけ、小説や図鑑などの書籍だけがたくさんあった。 「これは斉藤のお