誕生日に神様から帯状疱疹のプレゼントをいただき、一度はこの会社を辞める決意をしたけれど、新しいポジションを上司から提案され、まだこの会社にいると決断した私。

いつから新しい部署に異動するかというと、それは2011年4月とのこと。

あと5ヶ月は営業マンで走り抜く。
そして引き継ぎをして新しい部署の立ち上げから参加する。

終わりが見えた。
毎月毎月同じパターンの繰り返しの生活に終わりが見えただけでも心境が全然ちがう。
とっても清々しく、そして前を向ける。

ずーーーっと光が差さない暗闇のトンネルの中だったから。

・・・・・・・・・・

さぁ今月で営業職ともおさらばだ〜！と思ってその日も数字を追いつつ、引き継ぎをしていた3月11日。私は浅草橋のベローチェにいた。

次のアポは浅草。
浅草橋から浅草まで都営地下鉄浅草線で行こうと思って、アポ時間まで待機していた。

次のアポは老人ホーム。

少し大きな提案になるので、医療系スペシャリストの女性営業マンに同行してもらう約束を取り付けていた。

アルバイトの求人広告ではあるけれど、社員系の案件も掲載できるようになった我々首都圏事業本部は、受注率アップのため、当時、医療案件系スペシャリストや正社員案件系スペシャリストを営業マンに同行させる施策を行っていた。

3月11日14時30分。
浅草橋駅近くにあるベローチェの2階に席をとった。古いビルに入ってるベローチェだ。

14時46分。
地震が来る。

少し待ってればやがておさまる。
それが地震に対しての経験値だった。

だけどこの時はいつもとは違った。
いつもならこのくらいでおさまるという時間からどんどん激しく揺れ始めた。

上から吊り下がっている大きな照明が、ブランコのように揺れ、今にも落下してきそうだった。

ベローチェが入っているこの古びたビルも、強烈な揺れに耐えきれないような音を立て始める。

（あっ、、、きっとビルの下敷きになって死んでしまうんだ、、、）

と、人生で初めて命の危険を感じた。

私はその場から動くことができなかった。

その場にいるのがいいのか、逃げるのがいいのか、次の行動が全くわからず、その場にいるしかなかった。

何分くらい経ったのだろう。
ようやくおさまり、改めて席に着いた。

（ビルが潰れなくてよかった、、照明が落ちなくてよかった、、無事でよかった、、）

2階にいたお客さんがワンセグを繋ぎ、テレビを見てこう言った。

「宮城の方が震源地らしいぞ。」

外はどうなってるのだろう。
同僚のみんなはどうなってるのだろう。
北海道の家族は？？
お客様は？？

そしたら会社用携帯がなった。
直属の上司だ。

「お前、大丈夫か？どこにいる？」
「無事です、ベローチェにいます。」
「とりあえず校了が無事にできるように進めて。だけど命が優先な。」

と、そう言ってくれた。

その日は金曜日。
来週から掲載される求人広告の原稿締切日（＝校了日）。
要は来週掲載の売上が確定する日でもある。
営業部としては大切な金曜日。

その電話のやり取りの後、電話が通じたり通じなかったりした。地震の影響だ。

次に同行してもらう方にはかろうじて電話が繋がり、アポより大分早いが一緒にいた方が良いと思い、浅草で落ち合う事にした。その方は妊娠中だったのだ。

浅草まで行こう。
恐る恐る表に出る。

外には人が溢れかえっていた。
JRも地下鉄も止まったからだ。

（こんな人がごった返す光景、映画でしか見た事ないな、、、。）

その内交通網も再開するだろう。
浅草までは歩いて行くしかない。
浅草橋からは約20分くらいかかる。

待ち合わせ場所で無事会えて、アポ先を訪ねてみた。

そのお客様の老人ホームももちろんごった返していて、ご老人を避難させているところだった。

もちろん商談ができるわけはなく、お手伝いも必要がないということで、私たちはその場を後にした。

オフィスは池袋。
まだ交通網は再開しない。
だけど歩ける距離ではない。
一緒にいる方は妊婦さん。
オフィスへ電話も通じない。

とりあえず二人で浅草のサイゼリアで待機する事にした。交通網が再開する待機。連絡が通じるまでの待機。

サイゼリアに入るのも待たされた。
みんな考えることは同じだ。
外は寒いので暖を取りながら待つしかない。

電話も通じない。
世の中がどうなってるのかがわからない。
原稿の締め切りもどうなるんだろう。
追いかけてる数字（売上）はどうする？
この方は妊娠しているから守らなくては。

そんなことを考えていたら
心細くなってきた。

前代未聞すぎる事態。
これからどうしたらいいのか、、、。

〜つづく〜

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