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日本酒と和菓子のマリアージュ@千駄木「薫風」

先日、仲良しのフォトグラファー・瀬野芙美香ちゃん(私のプロフィール写真も撮ってくれています)と、ぶらり谷根千旅をしました。

同じ東京ではあるものの、私の住んでいる中野区からは電車で40分。
ちょっとしたショートトリップ気分です。

お昼頃に千駄木駅に到着し、"コロッケを食べながら谷中銀座をぷらぷらする"という王道コースを満喫し、鰻屋さんでランチ。

表面はこんがり、中はふっくら、上品なうな重でした。
お漬物も、肝吸いも美味しかったです。

しかし、谷根千エリアは水曜日定休が多く、大半のお店が閉まっていました。
ふらっと立ち寄ったギャラリーのお兄さんには、「ここは水曜日に来てはいけない場所だよ」と言われるほど…!!

まあ、おかげで人も少なく、ゆっくりお散歩することができたので結果オーライ^^

この辺りはお寺が多く、ところどころに梅が咲いていて可愛かったなあ♪
お天気の良い小春日和で、久しぶりにオフ感を満喫しました◎

……て、単なる「ほっこり谷根千女子散歩♪」の報告ではありません!!

今回、谷根千に来た目的は、他でもない。
和菓子と日本酒のマリアージュを楽しめるお店、薫風さんに訪問するためなのです。
テレビや雑誌で常に取り上げられている、超人気店です。

今でこそ、日本酒に合わせる料理は和食にとどまらず、フレンチ、イタリアン、中華、果てはエスニックまで、幅広いジャンルの料理と楽しまれていますが、甘味に合わせるってどういうこと!?

これまでも度々雑誌で見かけたり、周囲で話題に上がっていたりと、ずっと気になっていたのですが、あいにく私は甘いものがあまり得意ではなく、伺うのを躊躇していたのです。

しかし、「日本酒マリアージュを勉強するためには、絶対行ってみるべきだ!!」と思い、今回初めて伺ってみました。

お店に入ると、店主のつくださちこさんが、笑顔で出迎えてくれました。
つくださんは、和菓子プランナーとして、企業向けに出張和菓子教室を行ったり、オーダーメイドで和菓子を作ったりと、幅広く活躍されているそうです。

「当店にはメニュー表が無く、内容は口頭でお伝えしております。本日は、3種類の和菓子をご用意しており、日本酒は和菓子にあったものを冷・燗それぞれご用意しております。お酒が飲めない方には、中国茶もございます。」とのこと。

噂で聞いていたスパイス羊羹(正式名称は忘れてしまいました…)をオーダーすると、三千櫻が出てきました。

ほんのりピンク色の羊羹に、可愛い桜ラベルの三千櫻。
女子悶絶のルックスです。

白あんの羊羹を、一口パクり。

な、なるほど〜!!
これは、、これは美味しいです…!!

まず、ベースの羊羹が、甘さ控えめで豆感がしっかりしており、絶品。
私、「豆はいずこ?」と言いたくなるような、ツルツルして甘々な羊羹が苦手なのですが、薫風さんの羊羹は、もはや豆そのもの。豆の美味しさがギュっと凝縮されています。

そして、ふわっと香るのは、カルダモンの香り。
白あんとカルダモンが合うなんて…。
ドライフルーツもごろごろ入っていて、一口食べるごとに味が異なる面白さ。

うーむ。。
早くも「悶絶美味」認定!!

また、肝心の日本酒とのマリアージュも、これまた秀逸。
さらり、ふわりとした上品な三千櫻の酒質は、羊羹の口どけと一緒。
羊羹と日本酒がすぅっと溶けつつ、そこにスパイスのパンチと、ドライフルーツのアクセントが重なり、絶妙な口内調味が楽しい。

それはそれは、抜群なマリアージュでした。

そして、同じく気になっていた、薫風さんのどら焼き。
レモン、文旦、紅玉、金柑など、数種類の味があり、わたしは文旦を頂きました。

ぱっくりちぎってみると、中から文旦ピールが!!
爽やかな香味と皮特有の苦味が、大人の味です。

というか…もう、どら焼きそのものが凄く美味しい!!
齧ろうと顔を近づけると、まるでバターのような香りでうっとり。(白胡麻油の香りのようです。)気泡が綺麗に入った生地は、ふわっふわ。

そして、これまたあんこが上品なこと…。甘みも美しく、なんでしょう、旨味のような感じもあり、非常に滋味深い。
「甘さ控えめで美味しい〜♪」という定型文だけでは片付けられない、何か凄みを感じるどら焼きです。

そして、合わせたのは、静岡県の「英君」。
とろり、蜜のような美しい舌触りに、雑味のない綺麗な味わい。
白い花のようなほのかな香りで、まるでシロガネーゼのよう。

これがもう、どら焼きと合う合う。
何一つ喧嘩する要素がなく、とっても仲良しのコンビ。
互いに甘みが綺麗なので、文旦の苦味も、より洗練されて感じます。

はぁ…。完全にノックアウトです。

「信頼する生産者の食材を使っている」という、つくださん。
日本酒も、蔵元まで足を運び、時には酒造りのお手伝いにも入られるそうです。
「造りに入ることで、酒蔵見学では分からないことまで見えてくる」のだとか。

つくださんとお話をしていて、「薫風」というお店は、単なる「斬新な日本酒マリアージュを発信するお店」ではないことを、実感しました。
ついつい、「日本酒×和菓子」という話題性が先行してしまいますが、その裏には「本物の和菓子を伝えて行きたい」という想いと、「真摯な生産者を応援したい」という強い気持ちがあることが、分かりました。

経済優先の時代、大量生産に移行してしまったのは、なにも日本酒だけの話でなく、和菓子の業界も同じことだったのですね。
生産効率と保存性を重視した和菓子の大量生産により、子供の和菓子離れが進み、和菓子職人の高いプライドから、「和菓子は家庭では作れないもの」というイメージが定着してしまったそうです。

しかし、昔から日本人が慣れ親しんできた和菓子は、洋菓子と比べて体に優しく、季節感ごとの楽しさがあり、ほっと心が安らぐような存在。
そんな和菓子の素晴らしさを再認識してもらえたらと、つくださんは話します。

薫風がオープンした2012年頃は、ちょうど日本酒新時代の黎明期。
その頃、つくださんは「仙禽」に出会い、衝撃を受けたそうです。
仙禽と言えば、蔵の息子さんが潰れかけの蔵を立て直し、「酸」という、これまで忌み嫌われていた要素を前面に押し出した味が話題を呼び、一躍スターとなった蔵元です。

「このように挑戦している蔵元がいるのなら、和菓子と日本酒に可能性はある!!」と奮起し、お店を立ち上げたそうです。

縮小傾向にある日本酒業界と和菓子業界に、新風が吹いたのですね。

つくださん、本当に熱い方で、ここには書ききれないほど色々なお話をしてくださいました。
「日本酒と和菓子のマリアージュをお勉強しに行こう〜♪」なんて、呑気に言っていた自分が恥ずかしいほど。。

世の中、表層だけ見て分かることなんて、ほんの一部ですね。
ネットの情報だけ見ていたって、本当の部分は分からない。

足を運ぶこと、話をすること。
とにかく、行動することを、これからも大切にしていきたいです。

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