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【おすすめ発酵調味料】堀河屋の径山寺味噌

昨年の話になりますが、老舗の調理道具メーカー「貝印」さんが料理家さん向けに開催されている勉強会で、伝統食品の担い手で構成されたユニットHANDREDさんのセミナーを受けました。

HANDREDとは、お酢、味噌醤油、日本酒、かまぼこ、みりん、お茶と、多種多様でありながら、日本古来の大切な伝統食品を造られているメーカーの後継者が集まり、自らその素晴らしさを世界に発信されているユニットです。

ハイセンスで知的な若きエース達が、このように団結して日本の伝統を伝えているのは、素晴らしいことですよね。しかも、全員シュッとしたイケメン揃い。
若い人や女性でもとっつきやすいですし、若者視点の革新的なムーブメントには、今後の日本のモノづくりに希望が持てます。

大ファンである3年熟成本みりんの白扇酒造さん、富士酢の飯尾醸造さんのお話も聴けるということで、大興奮!!
鼻息荒くセミナーを聴かせていただきました。
やはり、美味しいものには理由がある。
改めて、きちんと造られた調味料を使おうと思いました。

そこで出会った、堀河屋野村さんの径山寺味噌

堀河屋さんのことは、「三ツ星醤油」でその存在を知ってはいたのですが、実は醤油だけでなく、昔ながらの径山寺味噌を造られており、今なお鎌倉時代の製法を守っている蔵は、かなり珍しいそうです。

径山寺味噌の歴史、堀河屋さんの成り立ち、こだわりの製法を、お話ししてくださいました。

もともと堀河屋さんは廻船業を生業とされていたそうなのですが、船を難破で失ったことをきっかけに、味噌醤油の製造業に転向されたそうなのです。
紀州船漂流記に記されているように、伊勢鳥羽から遥か遠い択捉島まで漂流し、1年近くかけてようやく郷里に帰着したそうです。よく帰ってこられましたよね…。

しかし、船を失い、一年間も空白の時間を作ってしまった損失は大きく、廻船業を続けていく事が困難になり、これまで得意先へ配っていた味噌醤油の製造業を始めることになったそうです。へ〜〜!!

ちなみに、もっと遡ると、もともと径山寺味噌とは、鎌倉時代に中国へ渡り、径山寺というお寺で修行をしていた僧侶が、修行の合間に径山寺味噌の作り方を習得し、郷里である紀州でその製法を広めたという歴史があるそうです。その際に作った味噌の上澄みこそが、醤油の原型なのだとか。

…実はわたし、金山寺味噌って甘くてベトベトしていて苦手だったのですが、堀河屋の径山寺味噌を食べて、完全にその概念が覆されました。
もとい、これが本当の金山寺味噌なのですね!!
麦、大豆、麹、野菜の醸す複雑な旨みと、噛むたびに異なる食感が楽しい。
おにぎりに乗せるだけで絶品!

ちなみに原材料は、「米、大麦、大豆、うり、なす、しそ、しょうが、塩、砂糖」のみ。契約農家さんの野菜を使用し、麹はこだわりの「手麹」。
手間暇を惜しみません。

このような伝統製法の調味料が素晴らしいなと思うのは、やはりその歴史には「困難を乗り越えてきた造り手の努力と想い」があるから。
製造業全体がそうであったように、1970年代、味噌醤油市場も安価な脱脂加工大豆を使用した大量生産が溢れ、堀河屋では赤字が続いていたそうです。
しかし、現当主の野村太兵衛氏は、代々受け継いできた製法を守り、本物を造り続けました。

堀河屋野村の創業は1688年。
300年以上の歴史の中には、きっと様々な危機や困難があったことでしょう。しかし、伝統を守り続け、後世へ繋いできた先人の努力があったからこそ、このように今でもその形が残っているのですね。

変化することや、新しいものを生み出すことも良いですが、変わらないものの良さもある。そして、後者は一見単純なようで、とても難しいことだと想います。
私自身が変わりやすいからこそ(笑)、そのようなモノづくりや生き方をされている人は、本当にすごいなと心から尊敬します。

そして今、堀河屋さんは新たな危機に直面しています。
「種子法」が廃止されたことで、大豆の種子生産が利益優先の民間企業の手に移り、小規模栽培ながらもこれまで守られてきた日本の固有種が消滅してしまうかもしれないということなのです。
もしも効率的に大量生産できる種ばかりが作られるようになったら、日本の気候風土、文化が培ってきた大切な種が生き残れないかもしれない。

日本以外の国では、大豆を食べる文化がほとんど無いため、日本の大豆は食用であり、外国産の大豆は油用であり、種そのものも栽培方法も、まるで異なるそうです。

早くも、『三ツ星醤油に37年使ってきた北海道産「キタムスメ」は種子の生産がストップするということで、昨年度の収穫で最後になりました。』(次期当主・野村圭介さんの投稿より引用)とのこと。
この危機を、どう切り抜けていくのでしょうか??
私たちも、消費者として、応援していきたいですね。
野村さん、きっと乗り越えられる!!応援しています!!

…と、ついつい熱くなってしましました。

ということで、来週ケータリングがあるため、径山寺味噌を取り寄せました。新物は爽やかな味ですが、熟成物は、すごい!!
黒にんにくのような酸味、強い熟成香。これは、炒め物やトッピングに良さそう?妄想が掻き立てられます。

▼ネットからお取り寄せできますよ。
http://horikawaya.ocnk.net/product-list/7

セミナーでは、きゅうりに乗せた状態で提供され、飛び上がるほど美味しかったです。普通におむすびの上に乗せるだけでも、とびきり美味しい!!
その他、お豆腐に乗せたり、和え物にしたり、お肉やお魚につけたりしても美味しそうです。

美味しいものを通じて、「日本の伝統を守っていくことの大切さ」を学ぶ。径山寺味噌との出会いから、「なぜ私は伝統を伝えていきたいのか?」というところが明確になりました。

発酵食品に、今日も感謝。

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ありがとうございます!頑張ります!
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真野遥(発酵料理家)

日本酒と発酵が大好きな料理家です。 日本酒に合う料理のレシピ開発、地方創生事業アドバイザーなど、幅広く活動中。 新宿御苑前のキッチンで料理教室を主宰しております。 HP: http://www.harukamano-jozo.com

発酵料理家のメモ帳

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