Haruka Noda

プロダクトマネージャー・リサーチャーとして働く作業療法士です。大学では自閉スペクトラム…

Haruka Noda

プロダクトマネージャー・リサーチャーとして働く作業療法士です。大学では自閉スペクトラム症の感覚特性について研究しています。

マガジン

  • 発達障害について考える

    発達障害に関連した記事をまとめてあります。

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発達障害の診断は本当に必要なのか

昨今、発達障害というキーワードが様々なところで飛び交っています。 「あの人発達障害っぽいよね」 「そういえばクラスにいたかも」 「私ってもしかして発達障害なんじゃないか・・・」 しかし、耳に飛び込んでくるわりに、その本質はよくわからない。その実体が捉えられないまま、「発達障害」という言葉だけが広まっているように感じます。 僕は発達障害の中でも自閉スペクトラム症(以下ASD)を専門に研究しています。また、様々な障害を持つ方を支援する作業療法士でもあります。 そのことを知

    • いつもの道を一本外れる勇気

      元ネタのラジオはこちら 先日、行きつけのカフェから帰る時に、いつもと違う道から帰ってみた。 というのも、少しでも坂道を避けたいという僕の怠惰さを背景として、行きと帰りで少し違うルートを通ることが定番となっているのだ。カフェに行くときには「いつもの道」なのだが、帰りに同じ道を通ったことはなかった。 すると、何度も通っている道のはずなのに、僕の目には全く違う景色に映った。振り返ると何度も通った「いつもの道」が広がっているのに、だ。 夜薄暗かったこともあり、「同じなのになに

      • 選択肢は持っているだけで価値がある

        交渉には選択肢が必要だ文章で書くとあまりにも平凡な訴えに見えるが、この構造が腹落ちしていないために困っている人は意外と多いのではないだろうか。 極端な例を使って説明してみる。 例えば、僕が砂漠の真ん中で喉が乾いて今にも死にかけている旅人だとする。 その時目の前にミネラルウォーターを持っている商人が現れた。見渡す限り他の人はおらず、街やオアシスが見える見込みもなさそうだ。 このとき、商人が提示する金額はいくらになるだろうか。 この答えは間違いなく、僕の所有財産全額だ。

        • インプットばっかりしてると病むぞ

          先週の僕は、なぜかずっとイライラしていた。些細なことでもいちいちムカついていたし、モヤモヤした気持ちが消えなかった。 原因を考えてみると、思い当たる節がいくつかあった。 体調が悪かったせいで、ずっと横になっていたこと。SNSや動画を見てばかりの生活が続いていたこと。頭の中に浮かぶ嫌な記憶を何度も反芻してしまい、しんどい時間が増えていたこと。 結果的に、目に見えてわかるくらい気分が落ち込んでいた。 いわゆる「病み期」というやつだろうか。 過去にも似たような状況になった

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        • 発達障害について考える
          4本

        記事

          思考を再起動させるのって結構大変だよね

          研究をしていると、当然だが考える時間が必要になる。 深く考えずに手を動かせばいい事務的な作業も少なくないが、論文を読んだり次の実験のネタを検証したりといった、「考える」ことの比重が非常に大きい。 もちろん研究者以外でも、事業企画を考えたり、営業先にアプローチするための戦略を練るなど、考える時間はあるはずだ。 このような知的生産と呼ばれる活動を行う中で、時間は総量が多いことよりも、塊として存在することが重要だ、と考えている。 例えば、職場や大学にいくと、机の上で実験のア

          思考を再起動させるのって結構大変だよね

          オーストラリアで感覚に関する講義をしました!

          先日,オーストラリアで働く専門職の皆さんを対象に,感覚処理や感覚統合についての講義を行いました! 平成セラピストの会を一緒に立ち上げた沖田勇帆くんから,彼が所属しているクリニックで感覚に関する講義をしてほしい,という依頼を受けたのがきっかけです. OTさん以外もたくさん参加してくれて,多職種向けに話せる貴重な機会でした. 講義30分,質疑応答30分というちょっとチャレンジングな時間設定でしたが,正直なところ時間があればもっと話したかった! クリニックの皆さんが積極的に

          オーストラリアで感覚に関する講義をしました!

          平成セラピストの会を立ち上げます!

          こんにちは、野田遥です。 平成が終わり、気づけば令和も2年目になりましたね。 僕は平成6年生まれの作業療法士で、最近26歳になりました。僕と同世代である平成生まれのセラピストもどんどん増えているかと思います。 同世代の方の中には、学生として勉強や実習を頑張っていたり、セラピストとして日々の臨床に向き合っていたり・・・いろんな立場の方がいると思います。 そんな若手セラピストの皆さんの中でこんな悩みを抱えている方はいませんか? 臨床や研究のことを気軽に相談できる同世代の

          平成セラピストの会を立ち上げます!

          聴覚過敏への対処法 - グッズ紹介編

          以前書いた聴覚過敏に関する記事を見て、たくさん方から反響をいただきました。 他にもいいグッズがあれば紹介して欲しい、という連絡をいくつか頂いたので、新しく発見した対処グッズに関する続報をまとめました。 前回は対処グッズとして、イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドフォンなどの紹介をしました。 ただ、「普通のイヤーマフだと色や大きさのせいで目立つのが嫌」という意見が聞かれました。やはり見た目の問題というのは大きいですよね。 また、これを読んだ当事者の方から「騒々しい場所

          聴覚過敏への対処法 - グッズ紹介編

          心のモヤモヤを晴らすには、「作業」をすること

          今日は重要なタスクを一気に片付けることができて、とてもいい日だった。 でも、家に帰る途中で急に落ち着かなくなって、心のモヤモヤが晴れなくなった。 空腹だから?あまり人と話していない日だったから? それとも明日からの講義が憂鬱だから? 色々と理由を考えてもわからなかったので、とりあえずカフェに駆け込んだ。 僕の場合、本気でコミットしないと頭を切り替えることができないので、とりあえず本やPCを全て鞄にしまい、頭の中に浮かぶ思考をつらつらと書き出してみた。 わかったのは以

          心のモヤモヤを晴らすには、「作業」をすること

          僕は考えてなかった、悩んでたんだ

          パスカルは「人間は考える葦である」と書いた。 小学校でも大学でも会社でも、僕らはよく考えることが大切だと言われる。 現代を生きる僕らにとって、考えることの重要性は誰もが認めるところだ。 昔、僕はよく考えているつもりでいた。考えることも好きだった。 けど、一向に進まない物事にイライラしながら、どうすれば良いのかと頭を捻らせることも多かった。 「なんでこんなに考えているのに、前に進まないんだろう?」と。 そんなことを考えていた僕に、転機が。 随分前のことだが、ヤフー

          僕は考えてなかった、悩んでたんだ

          「ちゃんと書く」の呪縛に囚われていた数ヶ月のこと

          ありがたいことに、随分前に書いた発達障害のnoteを経由して色んな方から連絡をいただきました。そこでここ数ヶ月、色々なネタを探して記事を書き溜めていたんですね。 しかし、殆どの記事がボツになりました。 その理由は簡単です。 「正しい」内容を届けないと、と思っていたからです。 僕が主に書いていた記事は「日常生活の困りごとにどう対処するか」とか「研究の視点から見た国試突破法」とか、実際に試す人に影響があるものばかり。 せめて、自分のできる誠意として嘘のない内容にしたいと

          「ちゃんと書く」の呪縛に囚われていた数ヶ月のこと

          聴覚過敏への対処法

          「突然の音にびっくりして動けなくなる」 「周りで音がしていると気が散って集中できない」 「運動会のピストルの音が怖い」 「赤ちゃんの泣き声が苦痛で我慢できない」 このような音に関する困りを抱えている人は少なくないと思います。 特に、僕が専門に関わっている自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の方は、聴覚過敏を持っていることが非常に多いことで知られています。ある研究ではASD者の77.6%が聴覚過敏を有していると報告されています(Tomchek&Dunn 2007)。

          聴覚過敏への対処法

          人は知らないものを単純化する

          先日,大好きな星野源さん(以下敬称略)のアルバムを買いに行きました. POP VIRUS,最高でしたね. 語り出すと3万字レポートみたいになっちゃうので今回は割愛しますが,売り場近くで偶然すれ違った男子高校生がこう言っていました. 「星野源の曲って似たようなのばっかりだよな!」 「ちょっっっっと待て一度手にとって冷静になってよーーーく聞いてみよう?ね?」と個人的に問い詰めたい気持ちを一旦横に置き,少し考えてみたのです. 彼は星野源のどの部分を切り取って抽象化し,「同

          人は知らないものを単純化する

          ひとりでは長所に気づけない僕ら

          「あなたの長所は?」 学校や入試,就活など,誰もが一度は聞かれたことがある質問だと思います. この質問に,あなたは迷いなく答えられましたか? 以前,同じ質問をされた僕は困りました. 頭に浮かぶ自分の長所のほとんどが他人から指摘されたもので,本当にそれが強みになっている自信がなかったからです. 例えば・・・ 「物事に熱中できるのは素晴らしい」 →好きなことしかまともに出来ない分,リソース投下が集中的になり,気づいたらハマって深堀りし続けていただけ. 「物怖じしない

          ひとりでは長所に気づけない僕ら

          好きなものを「好き」と言えること

          自分の好きなものが何なのか、随分言いやすい時代になったと思う。 日本がある種の社会主義的なパッケージとして機能していた頃、僕らに触れる情報はマスメディアの発信と身近なコミュニティがほぼ全てだった。 「これが好き」 「この人は面白い」 「これが正義だ」 国民の殆どがテレビという同じメディアを見ていたころは、個人の意思は自由なように見えて、実は情報の流れによってある程度コントロールされていたように思う。 しかし、インターネットが出現して、どんどん個人同士が繋がれるよう

          好きなものを「好き」と言えること

          わからないことをわかることがスタートなんだ

          どうしてこんなに説明してるのにわからないんだろう。僕は十分わかりやすく話したはずなのに。 普通こう考えるはずなのに、なんでそんなことをするの?どうしてわからないの? こんな思考回路になることはありませんか。 しかし、僕は感覚の研究をしてる身として思うのです。 他人に見えている世界の全てを理解するなんて不可能だ 僕らは人間の身体という一見似通ったメディアを持っているが故に、同じ時空間を共有していれば同じ感じ方をするはずだと勘違いしがちです。 僕らは本当に同じような感じ方

          わからないことをわかることがスタートなんだ