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娘から母へ 10/14 オーディションと女による女のためのR18文学賞

だいぶ時間が開いてしまいました、ごめんなさい。
何はともあれ「地獄谷温泉 無明ノ宿」のフランス公演大成功おめでとう&おつかれさま!!
3年半で11都市、全58公演なんて、まさに大いなる旅ですね。悲しいお別れもあったけど、数々の素敵な出会いやハプニングもあって、齢70を超えた母親がこんな経験をしてるなんて、娘としてもちょっと誇らしいし、嬉しいです。

 あなたが「地獄谷温泉…」のオーディションを受けるか躊躇していたのは、私が文学賞に応募しては予選落ちして、どうしたら最終選考やその先へ行けるのだろうと悶々としていた時でした。半分が湯治場シーンという舞台で「こんな裸は見苦しいし…」と悩んでいたあなたに、「演出家が欲しいのはまさにその見苦しい、シワシワの老いた裸でしょ。本気で女優をやる気なら脱げなくてどうするの?」と言いましたね(今こうして書くとセリフっぽいな…)。

 あの時の私は、オーディションに呼んでもらえるということは、編集者に作品を読んでもらえるのに等しいと思っていて、そのためなら恥も外聞もかなぐり捨てていかんかい、という気持ちでした。恵まれた状況を活かさないお母さんにちょっとイラついていたわけです。
 頭だけでストーリーを作っても、かっこいい比喩を気取っても、まったくうまくいかなかった。掘り下げてさらけ出して、やっと予選を通ってもその先に進めない、進める可能性があるのかもわからない。
チャンスがある人が死ぬほどうらやましい。
チャンスを手にしているのに、それをみすみす棒にふる人が腹立たしい。
「じゃあ私にくれよ」ってしょっちゅう思ってました。

(だからこそ、今せっかくもらっている沢山のチャンスを活かしきれていない自分がもどかしいんだけど…2年前の私が鬼の形相でこのアホー!って睨んでる気がする…)

 10月末は新潮社の「女による女のためのR18文学賞」の応募締め切りです。3年間応募していたから、この時期になると色々蘇るものがあるのです。毎年締め切り時間ギリギリまで書いてたなーとか、受賞作を応募した年は3本出すつもりだったのが、3本目を締め切り30分前に断念したなーとか。  
 最近「新潮45」問題があったけれど、私の単行本に携わってくださった新潮社の方たちは、掲載された内容を絶対に支持してないと思う。
 単行本の企画中に、主人公がトランスジェンダーの、昔書いた短編を編集者に読んでもらったことがありました。彼女に「特異な設定として小説の装置にしていないか」と問われてハッとしたんですよね。あの言葉は、たぶん今後もマイノリティを書く上で私の大事な道しるべになると思います。
 「いまは、空しか見えない」では色んな形の抑圧や暴力のサバイバーを描いたけど、彼女たちの痛みや苦しさに徹底的に向き合うよう引っ張ってくれた編集者の方々が、あのおぞましい優生思想や痴漢レトリックを許容するわけがない。新潮45以前に、そもそも杉田氏のBBCでのセカンドレイプ発言は、第4章を書く時のエンジンになったしね(思い出すたび怒髪天をつくので燃費は最高でした)。
 社としての対応についてはまだ色々な議論がありますが、私は担当してくださった方々のお仕事を信じてます。
 そういうわけで、お母さんの若いお友達の、R18文学賞を目指してる方々も安心して応募できるといいなと思います。受賞すると二次会で三浦先生と辻村先生と呑めます(^^)とお伝えください。

「大地の芸術祭」見応えがあって面白かったですね(一緒に行けなくて申し訳なかったけど)。車があっても3日じゃ全エリアはとても無理でした。清津峡渓谷トンネルを写真でおすそ分け…残念ながら曇り空だったけど。
 途中何度か遭遇したSちゃんとは「いつかタレルの光の家にみんなで泊まれるといいね」と話してました。
 T家とは飯舘村の稲刈りも一緒に行って、Rってつくづく反抗期もなく、あの年代に珍しいほど穏やかな子だなぁと思いました。Kちゃんは元気に稲刈りしたり走り回ったり、久々の弟ポジションを楽しんでいたようです(MちゃんやSちゃんが一緒に行けなかったのは残念だったけど)。

ふー。時間があくと書くことがありすぎ。というか私が書かなさすぎ。
改めてごめんなさい。

 次はいよいよ「民衆の敵」だね。まさか実母をシアターコクーンで見る日が来るとは!(オペラグラス必須だとは思うけど)
くれぐれも体調に気を付けて。楽しみにしてます。

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