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『インボイス制度と企業のDX』トークセッション開催レポ!

こんにちは!マネーフォワードビジネスカンパニーCCOの山本です。

突然ですが2023年10月から、普段使っているレシートや請求書に関して大きな法改正が入るのをご存知でしょうか?

新しい制度の名前は「インボイス制度」

会社経営する中で、売上や支払いに関わるレシートや請求書に関わる重要な制度ですが、まだまだ詳しくご存じない方も多いのではないでしょうか?

請求書を取り巻く環境が大きく変わろうとしている中、わたしたちは 「”紙の請求業務”に悩む人を応援し、請求業務をもっと前へ。」をコンセプトに、紙の請求書の電子化を推進する「 #インボイスフォワード 」というプロジェクトを発表致しました。

「#インボイスフォワード」プロジェクト開始の経緯や、そもそも「インボイス制度」について知りたい方はこちらをご覧ください。

今回は#インボイスフォワード プロジェクト発表時に「インボイス制度」にお詳しいお二人の対談を実施しましたので、開催レポートとしてお届けします。

そういうことだったのか!と新しい気付きや、制度理解が深まるキッカケになりましたら幸いです。

▼目次
・登壇者紹介
・なぜインボイス制度が導入されようとしているのか
・インボイス制度に関する各事業会社の取り組みをどう見ているか
・電子インボイスになると、請求書ソフトのデザインは特定のもので固定されるのか
・「インボイス制度」や「電子インボイス」に対して、企業からのフィードバック
・紙の請求書を一斉に変えるべきか、個別に変えていくべきか
・税法上の表現の解釈について
・請求書ソフトの価格はどう設定されることになるのか
・クラウドサービス提供側に期待することは?

ーー登壇者紹介

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財務省(主税局、主計局)、国税庁、外務省(在ベトナム日本国大使館)等での勤務を経て、令和3年4月より現職。財務省主税局税制第二課(平成28年7月~令和元年7月)や国税庁課税部消費税室(令和元年7月~令和3年4月)等において、軽減税率・インボイス制度について詳細な制度設計を担当。消費税制度関連のセミナー・研修講師・執筆も多数あり。現在、事業者のバックオフィス業務の効率化を目指し、「電子インボイス推進協議会」(代表幹事:弥生株式会社)と連携し、「電子インボイス」の仕様標準化、利用普及に向けた取組を行っている。

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2004年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。株式会社野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。 スタンフォード大学MBA、野村ホールディングス株式会社の企画部門を経て、2012年より株式会社マネーフォワードの設立に参画。 一般社団法人電子決済等代行事業者協会 代表理事 一般社団法人MyDataJapan理事金融情報システムセンター安全対策専門委員 経済産業省 認知症イノベーションアライアンスWG等メンバー。

ーーなぜインボイス制度が導入されようとしているのか

加藤:欧州などのVATを導入している国では、こういった疑問は出てきません(笑)。国際的に見ると、インボイス制度を前提としていない日本の状況がユニークなんです。

これは、日本社会がインボイス制度を前提にせずに商習慣ができ、あとから消費税制度を取り入れたという歴史的背景が関係していると思います。ちなみに、欧州はそれが逆です。VATのインボイス制度を前提に、商習慣が成り立っています。

インボイス制度では、インボイスの交付を受けることができない、例えば、免税事業者からの仕入れについては、消費税の仕入税額控除が制限されます。これが大きな変化です。

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これを突然実施するのはインパクトが大きいので、インボイス制度実施後6年間の経過措置を置いています。最初3年間は8割、3年は5割、免税事業者からの仕入であっても仕入税額控除してよいということになっています。しかし、これも6年で終わりです。それ以降は原則、免税事業者からの仕入れについては、仕入税額控除が制限されることになります。

ーーインボイス制度に関する各事業会社(クラウド提供会社)の取り組みをどう見ているか

加藤:これまで5年ほど消費税制度に関わっている中で、IT化が進んできていると感じています。また、自分自身、軽減税率やインボイス制度についてこれまでも相当数説明してきました。ただ、今日、改めて他の人から説明を聞くと「複雑な制度だな」と感じました。

瀧:民間企業が解説するのと、行政の皆様からの解説だと視点も変わってくるのでしょうか?

加藤:そうですね、ファクトベースで見ると面白いですね。

先ほどご説明いただいた話では、請求書の作成において、4位が紙で、その割合は8.2%になっています。

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これだけ見ると、日本企業は意外とデジタル化進んでいると思いませんか?逆に約9割の方は、何かしらソフトを使っている状況というわけですよ。皆さん、自分の会社の中では、作業の「デジタル化」が進んでいるわけですよ。

一方で、作成した請求書を『どうやって届けているか』になると、6割以上が紙に印刷してしまっている。

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データ引用:請求業務についての課題調査(2021年時点)より

この残念な現実を変えないといけないですよね。

マネーフォワードさんが#インボイスフォワードプロジェクトの第一弾で行ったことは、請求書の出す部分をまず改善しよう(電子化しよう)と取り組まれたのかなと思いました。

「紙を印刷するんじゃなくて、送信ボタンを押しましょう。」ってことだと。

これは、デジタル庁でも取り組まないといけない重要なテーマです。

紙と電子が行き来する世界は中途半端で、非常に非効率。やるならエンドtoエンドでデータが繋がる、そういった社会を目指すのが重要と考えています。

瀧:仰る通りですね。

2014年に、当社は請求書作成ソフト『マネーフォワード クラウド請求書』を提供開始したのですが、その際に、中小企業の皆様から、認印の押印欄をココに入れて欲しい、ロゴマークは必ず左側に入れるようにして欲しい等、様々なリクエストをいただき、実に色んなデザインの請求書様式をつくったんですよね。

「お客様との唯一の接点が請求書だから」というコメントも有り、こだわりが強くなるのも当然と感じました。

お客様の手元に届くものは電子化したくないけど、社内管理のためにクラウドは使いたい。という声も多く、それが今の現状を生んでいるのでしょうね。

ーー電子インボイスになると、請求書ソフトのUI・使う側のデザインは特定のもので固定されてしまうのか

瀧:私個人の考えとしては、商慣習やタイミングや形式など、産業ごとに即した請求のあり方があるべきだとすると、データは裏側で標準化され、UI(デザイン)は自由でいいと考えています。

加藤:電子インボイス推進協議会設立時にも同様の質問を多く受けました。おっしゃる通り、業界ごとに標準化されるべき情報・データは違いますよね。その部分まで揃えていくことに必要性は感じていません。

使う側の見えるところは自由でいいが、少なくともインボイスの記載事項については裏では標準化していくべきだと思っています。どう見せるか、までスタンダード化とするのは難しいと思いますね。

ーー「インボイス制度」や「電子インボイス」に対して、企業からのフィードバックは?

瀧:加藤様は色々な所でインボイス制度についてお話されることも多いと思うのですが、実際、企業様からどの様なお声をもらうことが多いですか?

加藤:「何をしていいのかわからない」という声が大きいですね。

一方で、この制度は突拍子もないものではなく、いま事業者の皆様が従来より行っている消費税の税額計算の仕組みでしかないということを認識してもらうのが重要と感じています。

「インボイス」や「電子インボイス」という新しい単語が出てくると、難しく聞こえるかも知れませんが、実は単に、消費税の計算方法で取っておかなければいけない書類やデータが変わるだけだと、認識いただくのがスタートです。

書類やデータの保管を効率よく行うのにデジタルなりITを活用いただくのが良いのでは。と思っています。

瀧:よくある話ですが、サービスの売り手は買い手に対して頭が上がらないことも多いですよね。

先程例で上げた、請求書を紙で郵送しなきゃいけない問題も、よくよくヒアリングすると、お客様である、請求書を受け取る側の業務ルーティンを変えることまでお願いはできないという話が圧倒的に多いです。売り手も買い手も双方で、業務プロセスを変えにくい罠を感じています。

ーー紙の請求書を一斉に変えるべきか、個別に変えていくべきか

瀧:金融のEDI使うとか、色んな所に議論があると思いますが、紙の請求書に対して、皆が一斉に変わるべきものなのか、個別に変わっていくのでも及第点なのか、いかがお考えでしょうか?

加藤:難しい問題ですね。

インボイスの電子化や業務のDX化を進めたいけど、紙の請求書が届いてしまうケースも一定数は残ってしまうのが現実だと思います。電子化・デジタル化・DX化はすべて別の問題と捉えています。

業務のDX化は内部だけ進めていくこともできますが、インボイスの場合は自分の企業だけで完結しないですよね。自らの意思に関係なく、売り手は「紙」のインボイスを交付してくることもあるでしょうし。ただ、自社が電子で出せば、受取側にも効果を与えていくのではと思っています。

点での取り組みが面で広がっていくのが理想です。面に広がる時に「このフォーマットでなきゃだめだ!」などの、従来の方法に捕らわれると、面ではなく、線になってしまう。

事業者の皆様は、まず自社のできることから始めていくことで、他社にも影響を与え、面で広がる効果が出てくるのではと考えています。

瀧:加えて、大きい会社に対して、遠慮なく動きを与えられることが大事だと思います。

インボイスが電子化されると、請求サイクルが早まるなど、企業にとっては運転資金を減らせる可能性あります。

加藤:支払サイトをいかに短くするかが大事ですね。

今、大企業と取引する際は、大企業側の「理屈」で動いている場合が多いですよね。
請求してから支払まで270日かかったりするようなケースも有るようです。270日ですよ?信じられます?

なぜ、こんな事態になるかというと、大企業が受け取る請求書の数が膨大で、その処理作業に時間がかかるからだそうです。でも、デジタル化したらもっと早く出来るようになると思います。

紙を前提とした実務からデジタルを前提にした実務に移行した際にどういう効果があるのかを考え、そのうえで、大企業の「理屈」やビジネスのありかたをどうするのか考えていくべきと感じています。

瀧:「もらいは早く、払いは遅く」ということを家訓にしている企業もあるそうです。
今の仕組みを変えていけたら良いですね。

加藤:そういう意味でも、電子インボイスは非常に重要です。

電子インボイス推進協議会で、月締めの請求をどうするのかの議論がありましたが、日本人は月末にまとめて請求を行いますが、これはデジタル・電子請求ではナンセンスです。

インボイスのベースとなるPeppolの仕組みでは「取引都度の請求」が基本のプロセスになっています。取引をしたら、お金を払ってもらうために直ちに請求する。シンプルな話です。電子にすると請求の方法が変わり、結果的にバックオフィスの効率化も実現できるのではないでしょうか。

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瀧:業務の中で発生量が多いものはルーティン化やアルゴリズム化したいのが人間なので、「月締め」という概念ができるのだと思います。

あと、「月締め」には手数料の問題も考えられます。しかし、送金手数料の自由化などが進み、デジタル化が進む上での外堀は埋まって来つつあるため、緩やかにでも変化することを期待したいですね。

ーー税法上の表現の解釈について

加藤:クラウドは何かものを送る時、“提供する”じゃなくて、“共有する”と表現すると思いますが、「税法上、“共有”という言葉が記載されていないが、クラウドを使って“共有”しても税法上問題ないのか?」というご質問をよくいただきます。

まったくもって問題ない。加えて、クラウドだとデータに対して相互監視が生まれますよね。それ故、クラウドを使うことによって、なりすましなどの解決手段にもなれる可能性があります。

瀧:本当に上手くいけば、今後、送金する際に、全銀ネットの上で添付ファイルで送ることもできるようになる。そうしたら、送金だけで監査ができるようになりますね。

加藤:本当にそうですね。政府も今、クラウドに対して取り組まねばならないという姿勢があります。

また、電子インボイスは出すだけじゃなく受領し、仕入税額控除を受けるためには保存が必須。この保存の方法を電子帳簿保存法でガチガチに縛っていると使われなくなり、結果として紙に印刷してしまうのでは本末転倒。そうならないために電子帳簿保存法は改正されて続けています。

なお、令和3年の税制改正で、電子取引に関わる電子データを受領したら印刷して保存することが禁止になりました。

これは賛否両論いただいてますが、電子帳簿保存法は電子データを保存する方法を決めているので、紙での保存を規定しているのがおかしなこと、今までがイレギュラーな環境だったと思っています。

制度的にも色んな方法論は示しつつも、データでもらったらデータで保管し、データで提出することが当たり前になってほしいと感じています。

ーー電子インボイスを共有したり送付する機能だけであれば、請求書ソフトの価格はどう設定されることになるのか

加藤:電子インボイスを送ることや共有するだけで料金は発生するのかという議論は、政府でも話題になっています。

外国を見ていると、そこに付加価値に見出すのではなく、DX化が進むにつれて、請求に関わるデータを分析するツールをつけて、お金を払ってもらうようなサービスが広がっています。早い段階で、電子インボイスの部分は大衆化(コモディティ化)していくと思っています。

瀧:海外のbill.comなどがインボイスを送れる・受け取れるとかではなく、早く送金回収するという送金オペレーションのスムーズさに付加価値をつけていますよね。

わかりやすくいうと、今はメールを送るということだけにお金は取れませんよね(サーバー等の費用はかかりますが)。請求書を送る、受領するサービスについても今後は同様になると感じています。

加藤:そこに早く日本のベンダーにも気づいてもらいたい。今後、保管と合わせてどうするのかを考えていくことが重要です。

ーークラウドサービス提供側に期待することは?

瀧:今後、インボイスに関するキャンペーン等が民間企業で活発になっていくと思います。クラウドサービス事業者に期待していることはありますか。

加藤:税額計算の方法をいかにシンプルに行っていくかは、どんどん工夫していってほしいです。前述の通り、法律上、“共有”という表記はしていないが、電子データを送らなくても共有するだけでいいということを広めてほしい。そして、売り手・買い手がお互いで電子データを保存するコストを下げていく発想を持ってほしいですね。

今回のキャンペーン第一弾は請求書の“送付側”を無料にするものだが、第二弾は保管する方を無料にするなど、発行したものをどうするのかに目を向けるのは面白いと思います。そうすればインボイス制度が始まる頃には、送付側も保管する側も電子化されているのが当たり前になっている世界が近づくと思います。

瀧:当社でも請求書支払の承認と受領をサポートする『マネーフォワード クラウド債務支払』というサービスを提供しています。これからは、クラウドの保管スペースを買うという発想ではなく、バックオフィスの承認の作業負荷をいかに下げていくのかを考えてほしいですね。

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加藤:クラウドだとお互いに同じタイミングで見ることができるので、承認作業の効率化が出来ますよね。

瀧:そうですね。アメリカだと電子メールをクラウドアカウントに自動転送をしたり、現物で届いた手紙もクラウドにアップするサービスが広まる等、受領したありとあらゆる情報をクラウドへ情報移動を早くするところが多い。

そういうことをクラウドサービス提供側としては実現していきたいですね。

ーー編集後記

「インボイス制度」にお詳しいお二人の対談から、制度の意義や、これからのバックオフィスの姿を垣間見ることができました。

2023年のインボイス制度開始までまだ少し時間はありますが、インボイス制度を適用するのに重要な、適格請求書事業者登録の申請は今年の10月からスタートします。

制度の正しい理解を深め、事業者としてどの様にアクションすべきなのかヒントとなるような情報発信をこれからも続けて行きたいと思います!

”紙の請求業務”に悩む人を応援し、請求業務をもっと前へ。

#インボイスフォワード


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