続・子役はかわいそうですか

昨夜Twitterを見ていたら、呂布カルマさんの「NGTの一連の事件で自分の娘をタレントだのアイドルだのにしようとする馬鹿な親が少しでも減るといいな。子供が勝手にやりたがる場合はどうしようもないけど。そうならない様に教育するのも必要か。」というツイートがタイムラインに流れて来ました。

僕も今回のNGTの事件については、激しい憤りを感じています。あの会見を見ていた山口さんの事を思うと、たまらない気持ちになります。けれど子供の夢や、やりたいことを快く応援してくれている多くの芸能人の親たちについて「自分の娘をタレントだのアイドルだのにしようとする馬鹿な親」だの「子供が勝手にやりたがる場合はどうしようもないけど。そうならない様に教育するのも必要」だのという言い方は、ちょっとないんじゃないでしょうか。

というか、今回の事は「しっかりした優良企業だと思って就職させたら、実はブラックでした!!」というような案件です。山口さんにもその親御さんにも、全く落ち度はありません。あくまで悪いのは加害者と、加害者からタレントを守りきれなかった大人です。だから被害を受ける側に対し「馬鹿な親が自分の娘をタレントやアイドルにするために、こんなヤクザな業界に娘を入れようとしたから・・・」「芸能界が汚いのなんて周知の事実なんだから・・・」とも取れるニュアンスを出して、被害者の自己責任論が盛り上がるような流れに持っていくのは、僕は違うと思うんですよ。

芸能の世界でプロを目指す子どもや、その親御さんも、最初はやはり「芸能界は怖いところなんじゃないか」と、とても不安な気持ちを持っています。でも、その心配を無くすためにずっと努力しているのが多くの事務所や多くのマネージャーさん達です。その人たちの誠意により、志望者も徐々に芸能界の人間を心から信頼してくれるようになります。そして何度も話し合いを重ね、お互いの信頼関係が築けた上で、両者は契約に至っているのです。

僕は何度も事務所を転々としているのですが、どの事務所も僕や保護者と何度も話し合い、タレントの身の安全を守りしっかりとマネジメントすることを条件に、丁寧に所属契約を交わしてくださいました。余程の悪徳事務所でない限り、契約書にはその旨もきっちりと明記されているはずです。そして、大半のまともな事務所はその契約通り、アンチやストーカー等の攻撃や、クライアントの無茶な要求、肉体的精神的にキツい仕事など、様々な危険からタレントを守って、来る日も来る日も多方面から嫌われ者になりながら、タレントの代わりに矢面に立って闘ってくれています。

今回はそういった信頼や契約を裏切り、山口さんの身の安全を守りきれなかった大人達が悪いのであって、運営を信頼して働いていた本人や、そこに子どもを預けた親御さんを馬鹿にするような発言があってはならないのです。子どもを芸能界になんて入れるから怖い目に合うんだ、夜道を歩いていたから殺されたんだ、スカートをはいていたからレイプされたんだ、etc.....それは完全なる「被害者へのセカンドレイプ」に他なりません。

カルマさんはカルマさんなりに、山口さんやアイドルの女の子の事を心配しての発言だと言うことは承知しています。女の子が危ない目に合うのは可哀想だから芸能界なんて入れなければ良いのに、そう思う気持ちも分かります。でも、僕はやっぱり罪を犯した加害者よりも、被害者の落ち度を探して責めるような言葉だと思うんですね。

以前もいじめで自殺した子どもの親に「いじめられている子どもを学校になんて行かせるからだ」とか、先輩芸能人に自宅に呼び出され性被害にあった女の子の親に向かって「娘を夜に外に出すからだ」と言っている人が大勢いて、僕はその時も同じように悲しくなりました。なぜ人は犯罪行為をした加害者そっちのけで、被害者やその家族にばかり、ああすれば良かったこうすれば良かったと言ってしまうのでしょう。「つらかったね」と声をかけ、原因を追及し、再発防止につとめるだけで良いではないですか。今回の件でも、糾弾すべきはあくまでも加害者と加害者を守っている人々であって「芸能界に娘を入れる親」でも「芸能界で頑張っていた女の子」でもないはずなのに。

それに、僕もカルマさんも、NGTのメンバーも、外の人達から見れば同じ芸能界の人間のうちの一人です。だから自分が、たとえ事件とは何の関わりも無い人間だったとしても「この度は私共の業界の者が、とんでもない不祥事を起こしてしまって済みません。芸能の道を志すお子さんや、未来ある若者たちを安心してお預かりできるクリーンな業界になるよう、芸能界の一員として努力して参ります。」と、全員で深々と頭を下げなくてはならない事案なんじゃないでしょうか。決して「俺らは強いからいいけど、娘を酷い目に合わせたくなければ夢をあきらめるように教育しろよ」と、蚊帳の外から格好つけていて良い立場ではないと思うんです。

芸能界を目指す子供たちが減る。それは長い目でこの国の文化芸術に取って、多くの損失になります。これからも芸能界で恐ろしい事件が起きてニュースになるたび、無理やり親に夢を妨害され、強引にあきらめさせられる子供たちが増えてゆくでしょう。

「大人になってから自己責任でやればいいじゃないか。」と思う方もいるでしょうが、才能は才能だけで華開くことは少なく、どんな才能も磨かなければ錆びてゆきます。特に芸事やスポーツは幼いうちにやればやるほど上達することが出来るので、大人になってから活躍するのは本当に、針の穴よりも狭き門です。先日も、鴻上さんの記事で読みましたが(←クリックで読めます)せめて、高校を出てから・・・大学を出てから・・・親を安心させる企業に就職してから・・・と、親の言いなりになって夢をあきらめて、いざやりたい事がやれる大人になって、才能も情熱も枯れてから努力しても、もうどうしようもなく遅いことだってあるのです。

ここ数日テレビでフィギュアスケートをやっていましたが、全国的にスポーツで若い選手が才能を発揮できるのは、幼い頃からスポーツに打ち込むことが世間的に「良いこと」とされているからだと思います。子供がスポーツをやりたいと言って、「せめて高校を出て就職して、自立してからにしなさい。」と言う親はほとんどいません。スポーツ選手も芸能人と同じくらいプロで食べていくのが難しい職業なのにもかかわらず、です。スポーツをやりたいと言って、レッスン費や送迎など経済的・時間的な理由以外で、親や世間から頭ごなしに反対されることはあまりないと思います。

けれど、芸能界でも最近・・・ちょうど僕の世代に加藤清史郎くんがブレイクしたあたりから、子供を子役事務所に入れる親が急増し、その後の子役の演技の全体的なレベルが年々上がっていると言われています。それまでも天才子役と呼ばれる人はたくさんいて、トップ子役の実力自体の差は今も昔もそんなにないのですが、昔は子役業界全体として上手な子はそこまで多くはありませんでした。ここ数年でも(特に芦田愛菜さん以降)はかなり変わって来ています。これはやはり昔は「子供を芸能界で働かせる親は酷い親」というイメージが強かったせいで、良い人材がたくさん他のジャンルに流れていたのだと思います。それが今では近所の習い事感覚で事務所のレッスンに来る子も大勢いますし、下手な子供を見かけると「珍しい!!」と思うくらい全体のレベルが上がっている。それは子役を預かる事務所がしっかりと子供たちを支え、怪しい仕事や無茶な要求からも徹底的に守り、つらい思いをした時も精神的にサポートし、業界のイメージアップに努め、多くの親御さんを安心させてきたからだと思います。少なくとも僕のいた事務所のスタッフはそうしてくれていましたし、他の事務所の友達もそうでした。みんなが裾野を広げる努力を続けてきた。これは、今後のその業界の未来に取って、僕は一番大事なことだと思うんですね。

これからもこの良い流れを止めないようにするには、私達が少しでも多くのご家庭の信頼を得るために、業界内で自浄努力しなければならない。何としてでも安心安全に、一心不乱に芸事に打ち込める場を、未来の子供たちに提供してゆかなくてはならない。それは子役であれ、アイドルであれ同じ事ですし、未成年を預かる大人としては当然のことです。もしも今のアイドル業界の環境が子役業界よりも悪くなっているのなら、他のジャンルからも協力し、監視し、全体で変えていかなければいけません。でないとここは、豊かな才能を持ち、芸事に長けた子どもたちが誰も憧れることの無い枯れた世界になる。

だから「傷つきたくない奴は来るな」「ヤクザな世界だから、子供に夢をあきらめさせろ」ではなく

この世界で胡散臭い事をやらかす人には全員で厳しい目を向け、時と場合によってはどんな権力者であっても業界の更なる発展のために排除し、芸能で働く私たちひとりひとりが「誰でも安心して働ける芸能界」をつくらなくてはならないと思うんですよ。



春名風花



追記

カルマさんは、芸能界で苦労するより一般人のアイドルでいた方が女の子達に取って幸せだと思われているようですが、何が幸せかはその人にしか分かりません。

僕も長い間、子供なのに働かされて可哀想!と、良く知らない人たちに同情されてきました。でも、その時に書いたツイートはこれです。

子役はかわいそうですか https://togetter.com/li/264433

(当時の文章がひどいので一部修正しつつ、ここに転記します。)

「子役はかわいそうですか」2011年02月8日 ぼくはきのう、ちょうむかっぱらなツイートを見つけてしまって、ほのおのように怒っています。ぼくは虐待されてツイッターをやらされてるかわいそうな子どもで、まわりの大人にあやつられて、じぶんの意志なんかもってないんだって。スポーツでしごかれてる子はさわやかながんばりやさんで、ドラマの撮影に打ちこんでる子は虐待されてかわいそうなんて、いみわかんないです。ぼくも運動がすきだったらよかった。でも、お芝居がすき。仕事がすき。野球がんばってる友だちと、なにがちがうの。きょう中休みのときかんがえてたんだけど、子役は頑張ってけいこしたら、すぐ虐待とか、かわいそうとかいわれるのに、野球とか卓球とか、スケートで毎日朝早くとか夜おそくに、とっくんしてる子はなんでえらいとほめられるんだろ。(中略)「ステージママの分際で」をよみました。ぜんぶよくわかる。ぼくよくわかる。デブキャラの子が、ひどいことばかしゆわれて、いやじゃないって聞かれて、いやじゃないよ、仕事がこないのが一番いやだから、って答えるところとか。すごいよくわかるから涙がざあざあ出ます。笑われてもばかにされても、現場がすきなんです。テレビで子役をみると、かならず、かわいそう、はたらかされてかわいそうと、いう人たちがいる。ぼくたちの気持ちをわかってくれて、はたらかせてくれる家族や、スタッフさんのことを、子どもをこき使う悪魔みたいに、ひどくいう人がいる。ぼくはそれがずっといやでした。ぼくたちには、意志がないとゆわれてるのとおなじだから。いわれた通りに笑ったり動いたりするだけじゃ、いいものはできないです。そんなに甘くない。演技になやんで、たち直れないくらい落ち込んだり、きれいな子や才能のある子をみてなさけなくなって泣いたり、歯がぬけて仕事がなくなったり、背がのびて仕事がなくなったり、どうしようもないくらいつらい時いっぱいあるけど、そんなことは、カメラが回ればみんなどうでもよくなっちゃうんです。本番!の声がかかったとき、カメラチェックをドキドキまってるとき、しばらくたって、監督のオッケーの声が聞こえたとき、たましいがプルプルする。ぼくはこの仕事がすきだってはっきりわかる。じぶんでここまでやってきた、カメラの前に。もう一度ここにたつためには何でもやる。ぼくは仕事がすき。ぼくは現場にいないときに何をかんがえてるかをたくさんの人に見てほしい。やらされてできた仕事じゃないことを。ぼくがここがどんなにすきで、どんな気持ちでカメラの前まできたのかを。ぼくがかわいそうかどうか決めるのはぼく自身であって、他人が勝手にぼくの気持ちを決めつけてさわぐことじゃありません。みんなそれぞれのやり方で、人生をがんばってる。そのやり方に正解も、まちがいもないのに。(後略)

どうか、良かったら読んで下さい。きっとアイドルの皆さんも、傍からどんなに可哀想だと思われていても、そんな仕事しなくても、学校や会社でもっと楽にチヤホヤされればいいのに!と思われても、その人にはその人にしか分からない幸せがあると思うし、歌やダンスが大好きなんだと思うし、

ましてや一番自分のことを理解して欲しい親からそれを頭ごなしに否定されたり、「教育」と称して取り上げられるほど、辛い事はないと思うのです。


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春名風花

春名風花さんのノート

応援している、春名風花さんのノートをマガジンとしてまとめた内容です。 使い方がわからず更新順でなくて ごめんなさい。 春名風花さんの考えを伝える言葉は、 心をうち、 忘れてはならないものを心に呼びかけ、 今、あたりまえに考えいること、 目を背けていることがどんなことなの...

コメント3件

風花さんの今の気持ち、
子役の頃の気持ち、
それぞれがすごく伝わって心にささる。

スポーツ業界は、ほんとそう!
歌舞伎とかも、一門として、
赤ん坊から芸を仕込まれて舞台にたつのに、
なぜ、同じ子役でもメディア上では認められないのか。

当事者の意見無視して第三者がしゃしゃり出る。
しかも一部の情報を肥大して。

夢、ルーキー、アイドル、業界は違っても皆一生懸命に仕事、責任をこなしてる。
むしろ、えらい!お疲れさま!よく頑張ったねって、労いの言葉をかけたい。
見守らない親がどこにいる。
成長する姿、その人の輝きを見れば、どれほど愛され見守られているかわかるはず!いい加減、色眼鏡を外して!

業界人としてでなく、人としてこのような大人がいることにほんと申し訳ない。

社会人の大人ならほんと言い方があるはず。
影響力がどうのじゃない。人として。

同じ大人として恥ずかしいです。
ほんとごめんなさい。
続き>>

業界違いであっても、夢を追う人たちを心から応援したいです。

大人につれて夢は狭き門。
ただ夢は持ち続けたいなとも思います。

あと積み重ねてきたもの。
いっけん無駄に見えて応用すると実用的なものがある。

経験ははいうちに。
それによって自分のやりたいものが見えてくるよ思うし!

夢を安心して追えるように、
がんばるわ!大人として!
素晴らしい記事だと思います
自分も山口さんの件には憤りを感じていました。
親の言いなり学校の先生の言いなりで芸能を始める(本人の意思はなく)のはどうかと思いますが、それでデビューしている人がいるのも現実なので、一概に押し付けられる意見ではないと思っています。(芸能を始めるきっかけとして)本人がやりたくてやる。事務所も結局は入ってみないとわからないというのもあるので、情報を事前に入れたからといい、安心しできるわけじゃないですし、学校やら養成所に通っている本人ですら芸能の世界を知れていないのに、親が知れるわけがありません。それを事務所に入れたから安心と自分が安心したいが為に、押し込むのは良くないと思います。
ネットの情報やソースがわかりませんが、ちょっと調べたからと言ってわかる世界じゃないですし、調べることができないくらい広い業界だと思います。噂や眉唾物まで話を聞いてしまっていたら。
なので、周りがどうこうではなく自分の身は自分で守るしかないです。
そして、一人でも相談をできる人を作っておけたらと思います。
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