あなたに早く会いたくて、
わたしは生まれてきました。

あなたの顔を早くみたくて
あなたに早く抱きしめられたくて
わたしはみんなより
すこしだけ早く
あなたに会いにきました。

約束よりも早すぎたから
あなたは驚きましたか？

こころの準備ができなくて
あなたは不安を感じましたか？

すこし体が小さいから
あなたは心配になりましたか？

もしかしたら
責任を感じていたりしますか？

生まれてすぐ
わたしたちは離ればなれの
部屋にいるかもしれません。

生まれてすぐ
いっしょにいられなくて
淋しい想いをさせるかもしれません。

いろいろなことが
みんなと少しだけちがっていて
とまどうかもしれません。

でもね、
わたしはだいじょうぶです。

わたしは自分で選んで
あなたのもとに生まれてきました。

そして生まれるタイミングも
わたしが選んで生まれてきました。

あの日、
どうしても、わたしは
生まれたくなったのです。

あの日、
どうしても、あなたに
会いたくなってしまったのです。

すこしでも早く
あなたに抱かれたくて、
すこしでも長く
あなたと一緒にいたくて
みんなより早く
生まれることにしたのです。

ほんとうは
わたしも
怖かったです。

小さなわたしを
抱きしめてくれるだろうか。
小さなわたしを
愛してくれるだろうか。

すこし早く生まれることで
迷惑をかけてしまわないだろうか。

約束を破ってしまったわたしは
嫌われたりしないだろうか。

ほんとうに
不安でした。

でも、
あなたはわたしを
受けいれてくれました。

やわらかな手で
わたしの頭を撫でてくれました。

やさしい声で
わたしの名を呼んでくれました。

あたたかいまなざしで
わたしの姿を見守ってくれました。

それだけでわたしは
生まれてきてよかったと
こころから感じられるのです。

何度もおなかに語りかけてくれる
あなたのささやきにみちびかれて。

ときには不安で泣いている
あなたを少しでも元気づけたくて。

どうしても、あの日、
あなたに会いたくなりました。

たとえ早く生まれても
わたしが知っている
あなたといっしょなら
きっと素敵な毎日になる、
そう信じられました。

だいじょうぶ。
そんなに心配しないで。

あなたを選んだ
わたしを信じてください。

一秒でも早く会いたくて
一秒でも長くいっしょに生きたくて
わたしは生まれてきたのです。