スニーカーの白

ついに終わりが来た。新卒、引っ越し前々日に届いた新品のスニーカーが履き潰されたのだ。靴にとっても終わりだが、私にとっても終わりだった。

生まれて初めての一人暮らしの準備が終わらずもゆったりしている中スニーカーは届いたのだ。懸賞で当たった久しぶりの大物だった。白いスニーカーだが水を弾くために汚れにくいのがお気に入りだった。

新卒で入った会社はスーツ必須なために使わなかったがその後の派遣生活ではほぼスニーカーがOKだったためよく履いていた。白いスニーカーと黒いスニーカーしかないためにおしゃれのためどっちにしようもなくどちらを履いても特に困らない。

そのスニーカーが終わったのだ。水を弾く素材だからなのか爪先立ちしたり曲がってしまうとすぐにひび割れのようなシワが入っていた。そんなもんかと履いていたが、今朝バイト先でシワが緩んでいることに気がついたのだ。そっと触ると爪先側が捲れている。内側の灰色のところが見えそうになっていた。

今日で終わりだと確信した瞬間だった。しかし頭にあったのは家の黒いスニーカーのことである。黒い方は踵部分がすり減っているし、ひさびさに履くと足の裏が痛いと感じていたのだ。給料日前だしスニーカーは買えない、なんなら入っても支払わなきゃいけないリストの上位にはこないだろう。

どうしたものかとスニーカーを思っている。

白いスニーカーとはどこへでも行った。まだ同じものを買えばとも思うのだが懸賞で当たった同じ型の靴はそこそこ高い。私の1日分の給料では賄えないのだ。理不尽なことを言われてそっとトイレに行って悔しいなぁと落ち込んだ日だってきっとあのスニーカーだったのだろうなぁと思う。

しかし思い出よりも今は新しいスニーカーをどうするかなのだ。水を弾いてくれなくては雨の日に履くものがない。困ったなぁと思いつつやはりあのスニーカー好きだったなと思い出すのだ。

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