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世田谷美術館でアフリカ現代美術コレクションを観る

世田谷美術館で、「アフリカ現代美術コレクションのすべて」という展示を、今度の日曜までやっている。

数が多いわけではないが、ある程度まとまったコレクションで、見応えがある。アフリカといっても西アフリカの作家が中心で、ほとんどは初めて知る作家だけれど、エル・アナツイだけは知っていた。

その、エル・アナツイの個展を観たのは、2011年の春、3.11の10日くらい後だったかな、計画停電が行われるかもしれないとアナウンスされている中、当時住んでいた府中から葉山の神奈川県立美術館まで訪ねて観に行った。

川口幸也さんの名前を初めて知ったのも、そこで、だった。

日本語によるアフリカ現代美術にかんする情報は多いとは言えず、美術館の図書室で本を漁っていたら、川口さんの名前がたびたび出てくるので、その名前をメモして覚えておいた。

作家の名前ではなく解説者の名前をメモするあたりが自分らしいのかもしれない。

川口さんが世田谷美術館の学芸員をしていた時代(1995年)に、「インサイド・ストーリー:同時代のアフリカ美術」という展覧会を開催していて、それが、アフリカ20世紀美術の歩みをたどる日本初の試みだったそうだ。

今回、展示されているコレクションは、その時に収集されたものだという。

その中には、川口さん自身が西アフリカを旅して、撮ってきた写真もあり、その写真を前にすると、そこにある"色"に、目が吸い付いてゆくのを感じる。

葉山でも観たエル・アナツイの「あてどなき宿命の旅路」は世田谷美術館の所蔵作品で、今回、それ以来の再会を果たした。

エル・アナツイといえば、あの、ビール瓶のふたか何かを大量に使った織り物のような大作で、それに比べると、地味な作品だけれど、彫刻という手法を使って"物語"を紡いでゆこうとした初期の作品、と認識してる。そういう知識も、川口さんの解説によるものではなかったか。

2011年の3月にも、あの晴れた日、葉山の穏やかな海を前にした美術館で、エル・アナツイの作品の中を歩き、そのあと、彼のインタビュー映像を観て何か後々に効いてくるだろう影響を受けた。

今回、世田谷美術館で流されていた映像は、その時観たものではないかもしれないし、その時観たものも含まれていたかもしれない、思い出せないが、エル・アナツイは廃品を使って作品をつくることにかんして、「さまざまな人の手に触れたものだから、それだけ(作品が)力をもつ」というようなことを言っていた。

いまは貨幣を使わずとも買い物ができる時代になり、たくさんの人の手を渡ってきた貨幣を「汚い」と思う感じ方もあるらしい。でも、エル・アナツイの作品の精神はその真逆にある。たくさんの人の手に触れてきたものには、それだけのパワーが宿っている、と。

今回、世田谷で観ることのできたソカリ・ダグラス・キャンプの「私の世界、あなたの世界」からも、似たようなことを感じる。「汚い」というふうに見ようと思えば見えるのかもしれないが、そこには力強さを感じる。

サカ・アクエの彫刻からは、とてつもない大きなスケールの動きを感じたし(止まっている作品なのにネ)、アブラデ・グローヴァーの絵画からは抽象的なかたちと色の中に行ったことのない場所の喧騒、音を感じた。

(つづく)

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