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なぜ彼らは空を飛んだか?

昨日は息子(5歳)はママと近所の図書館へ行ったらしくて、借りてきた本を読んでくれと言って持ってきた。

彼はいま、ひらがなとカタカナを学んでいるところなので、ひらがなとカタカナは自分で読んでみよう! と言っているが、昨日借りてきた本をよく見ると、タイトルからして漢字だらけだし、彼にはちょっと難しいな… しかも『広島の原爆』ですよ。これに興味を持ったらしい。

本を開くと、戦前の広島について、その街並みについて、詳しく書いてあるページや、原子爆弾とは? を解説しているページなどもあり、小学生向けにはよさそう。

しかし彼にはまだ早いかな… と思って、絵がメインのページだけ音読して、一緒に見ていく。

透き通ったような感じの人が、時おり空を飛んでいる絵がある。彼にはそれが何やら可笑しいらしい。なにこれ〜? とか言ってる。なんだろうね? とパパは言う。

絵がメインのページは、ことばは少ないのだが、たとえば、「戦争」を読むと、彼は「せんそう?」と疑問符をつけて返してくる。

「せんそう」とは何なのか、どんなものなのか、説明しなければ話が進まないのだが、「せんそう」とは何か、簡単に説明しようと思うと、その簡単な説明についての説明をまたしなければならなくなる。

タイトルの「原爆」についても、「げんばく」「げんしばくだん」とサラッと言ってみたところで、何になるんだろう。「ばくだん」はわかる? と聞いてみたりして。

悲惨なシーンもたくさんあるのだが、あくまでも街を俯瞰するように描かれていて、悲惨さは細部にあるので、よーく見ない限り、人が殺され死んでゆく悲惨さは強調されない。そのかわり──空を飛ぶ人が出てくるのである。

後半、原爆から数年たった広島が、"復興"してゆく様が絵に描かれて、ことばで説明がつけてある。息子と一緒にそれを見ながら、ぼくは何だかその史実が妙なことのように思えてくる。あたりまえのことじゃないというか。死んでいった人たちの時間、生き残った人たちの時間、後からそこに立った人の時間、いろんな時間がそこには感じられるから。

で、その"復興"した広島の上空を、夥しい「当時」の人びとや馬や犬たちが飛んでいる。その絵を見て、しばらく息子と語り合った。

これなんなの〜? おっかしいねぇ。なんだと思う? わかんない。みんなどんなふくきてる? う〜ん。うまやいぬはふくきてないからいまとかわんないね。そうだね。なんでみんなとんでるんだろう? ちょっとかんがえてみよう。

(つづく)

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"、1日めくって、7月7日。 息子(5歳)曰く「こちらは異常なし、大丈夫だ」

※"日めくりカレンダー"は、毎日だいたい朝に更新しています。

ようやく完成する『アフリカ』最新号については、とりあえず目次をアップしています。画像の表紙は作業中のもの(部分)。予約受付中です。掲載しているいろんな文章やら何やらについて、近々ここで書くつもりです。

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