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どちらが先?──変わってゆく吃音

数日前から書いている「地域の編集」のこと。会場を出ようとしたら、全国各地で発行されている少し前の新聞が、たくさん並べてあり、ご自由にお持ち帰りください、とあった。

見ていたら、1面に「吃音」とあるのに目がついた。ぼくはいま吃音のことをいつも考えているとは言えない状況にあるが、やっぱり「吃音」の文字を見ると近づいてゆきたくなる。

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『市民タイムス』、松本市で出されている新聞らしい。トップ記事、ですね?

梓川診療所というところで「ことばの外来」を担当する言語聴覚士・内藤麻子さんによる、教員むけの吃音研修、子供たちむけの出前授業の様子が伝えられている。教員たちへは、

内藤さんは、吃音をまねしたり指摘したりする児童がいてもその児童を叱るのではなく、「きちんと説明し、クラス全員が吃音について正しい知識を持つための、教育の機会と捉えてほしい」

と話しているそう。こういうことは、あらゆる問題にかんして、言える。お互いに理解を深めてゆくための機会と捉える、ということ、ぼくもそうしてゆきたい(いろんな問題にかんして)。

実際に県内の教員から寄せられた相談などを紹介しながら、吃音は重症化するにつれて逆に目立たなくなっていくことなどを説明した。

この書き方では、吃音を知らない人にはよくわからないんじゃないか。じつはぼくも(吃音のことはある程度知っているつもりだが──自分のこととしても、他人のこととしても)一瞬、何を言っているんだろう? と思った。

次の文章で、何を言わんとしているかは、わかった。

最初の音を繰り返す「連発」が当事者にとって一番自然なしゃべり方で、内藤さんは「この話し方で安心して暮らせる環境にしていければ」と語った。

吃音の症状(表に現れる様子)には大きく分けて「連発」と「難発」と「引き伸ばし」があると言われる。──なんてことは、吃音の本を見ればほとんどにそう書いているだろう。中でも「連発」と「難発」は吃音の二大巨頭(?)と言っていい。

内藤さんは、(少なくとも子供の吃音の場合)「連発」が"重症化"して難発になる、と考えている、ということだろう。最近の研究では、そんなことがわかっているのだろうか? 果たしてそうだろうか。

繰り返すのが嫌だから、ためらって、最初の音からして出にくくなる、というふうに考えているのだろう。

そうかもしれない。そうじゃないような気もする。わからない。

思うように声が出ないから、無理に出そうとして、同じ音を繰り返してしまう、ということは考えられないか(ぼくはそんなふうになることがよくある)。

しかしそれは「どちらが先」というものではないんじゃないかという気もする。

ぼくもスムーズに話そうとする工夫をやめて、遠慮なく、し、し、しししししし、しもく、くくく、ぼーです、おげ、げげげげげん、げんきですか? とか言って過ごせたら、たしかに楽なような気もする。そんなことを明るく考えてみたことも実際にあった。しかし、そこでもやはり、ほんとうに楽かな? と後ろの方で疑問符をもって考えてしまっている自分を感じてもいるのだった。

しかしそうやって、学校の中で吃音がどういうものか、知られてゆく(関心をもってもらえる)というのは、嬉しい。

その『市民タイムス』のウェブサイトで、内藤さんが吃音にかんする記事を連載しているのを見つけたので、それも、あとで読んでみます。

(つづく)

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