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オトナのための文章教室⑨

オトナのための文章教室」9回目、4人参加(うちアトリエの学生さん1人)、そこにアトリエのスタッフが1人参加、私(案内人・下窪)も含めて6人で、読んだり、話したり。

お題は、「平凡なもの、ありふれたものに敬意を!」なんて言って、書いてきました。

まずは若い人による「平凡とは?」から読みました。抽象的な、観念的なことばに終始していますが、その手触りは具体的で、だから読んでいて素通りできないことばがあちこちに仕組まれています。

あとの原稿は、どれも具体的です。

病と「髪の毛」の話、「性」の話(さまざまな性のあり様の話)、『平凡』という雑誌の話(そういえばどうして平凡なんだろう、でもウェブで調べたくないな、想像していたいな)など。

どれも、原稿からはみ出してくる、書き手の話がとても面白い。

ずっと聞いていたい感じですが、そこは文章修行(?)の「教室」です。

「どうやって書くか」
「書いて、何に気づいたか」

などを考えて話します。

私も毎週、分量にはバラツキがありますが書いてます。今回は、「平凡なもの、ありふれたもの」を思いつくだけメモして、その中のいくつかについて書いた「平凡に支えられて」を読んでもらいました。

「平凡な、ありふれたもの」について書けば、それはもう「平凡」とは感じられなくなりますね。

と話してくれた方がありました。そうですね!

「「取るに足らないもの」の強者は、おそらく、その名が知られていない、あるいは名づけられてすらいないものかもしれない。
 どんな文章でも、それを支えているのは、ディテール(細部)だ。ディテールに支えられることで、ようやく文が立ち上がり、表現になる。想像力が介在する。それは身の回りにあるものに、違う見方を与える。平凡と非凡はいつでも背中合せだ。」

それから、小川国夫さん(私の若い頃の「ことば」の師匠)の10回目の命日の2日前だったので、「おまけ」に、小川国夫自身の短い文章(書簡)と、私たちの雑誌『アフリカ』で10年前に追悼特集をやったときの文章ふたつをお渡しして、少し話しました。

ここに載っている小川国夫追悼文は、守安涼「どの窓からも海と島々が見えます」、片山絢也「ある人間らしさへの誘い」、下窪俊哉「沈黙のざわめき──小川国夫という旅」の三篇。久しぶりに読み返しましたが、熱い。80歳で亡くなった作家(しかも身近に付き合いのあった作家)への追悼文からは、悲しみというよりも熱さを感じる(10年後の自分は)。バトンを受け取ったランナーの気分で、さぁ走り出せ! という感じ。実際、この号をつくったことが、『アフリカ』にとっては大きな一歩になったという気がしています。

この中で、守安くんが書いている、小説を書くにあたっての「小川国夫の教え」を読んで、少し話しました(守安くん、このnote読んでるらしい。どうもありがとう)。

いくつかあるんですけど、

「書いたあとの自己嫌悪に耐えること。芭蕉は『文臺 引下せば即ち反古なり』といったけれど、たとえ紙くずにみえた としても、とっておかなければいけない」

というのは、実感をともなってわかりやすかったみたいですね。ただ、そのあとの一文、

「それがすなわち推敲す ることにつながる」

については、この「教室」ではまだ全く話してないことなので、わかりやすくなかったかもしれません。

さて、次回のお題ですけど、「謎をめぐって」です。

書いていると、「よくわからない(不思議な)こと」にひっぱられて、ことばが出てくる、ということがあります。

そんな、ことばをひきだす最強の光源(?)とも言える「謎」。日々の生活の中にある謎、幼少期の記憶とか…自身の過去の中にある謎、社会の中で、自然(宇宙)の中で、ふと見えてくる謎、どんなことでも構いません。何らかの謎に迫るでも、謎を並べるでも、謎とは? を考えるでもよし。自由にペンを動かして(キーを叩いて)書いて、ご持参ください。

これはいつもの文言ですけど、「まとまった文章でなくとも、断片(文章の切れ端)で構いません。パソコンで書いてプリントアウトしたものでも手書きのものでも何でもOK。なお、何も書いてなくても参加はできます。ご興味ある方はこの1回だけでもお気軽に!」

「オトナのための文章教室」、詳しくはこちらをご覧ください。次回も(どんな文章が読めて、どんな話が聞けますか)たのしみにしています。

さいごにお知らせ、私たちの雑誌『アフリカ』の、小川国夫追悼号からは10年後の、2018年4月号(28号)ができました。写真・右、です。「教室」でも販売しています。いつもの珈琲焙煎舎でも数日中には販売開始されるはずです(府中の皆さまお待ちください)。

今回は少し新しい顔ぶれが見えます。『アフリカ』という雑誌は今年で12年目ですが、こういう小さなメディアをつづける秘訣は無理せず、マイナーチェンジを繰り返して変わり続けてゆくことだという気がしています。今回の号はちょっとした転機になるのではないか? と密かに思っているところですが、その話は、また。

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