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心を遠くに飛ばす

ある物語に出てくるこどもたちの「心を遠くに飛ばす」というエピソードに、ぼくはこの数年、励まされながらいろんな仕事をしている(そんな気持ちになることがある)。

その物語はどんな小さなかたちでも発表されたことはない、未発表原稿の中にあるので、いまのところお読みいただけないのが残念なのだが…

そのこども(小学生)は、「遠心力」ということばを、夢の中で、昔、父親が飼っていたという犬から教えてもらう。彼は「遠心力」を理解するためには素振りをするのがいいと考えて、毎日夢中で素振りをするようになるのだが、放課後にやっている野球でいいバッティングができるようになって、「どうしてそんなに打てるようになった?」と聞かれて「遠心力」の話をする。彼は「遠心力」を「心を遠くに飛ばす力」だと考えた。

昨年(2018年)の年末、「天文学と印刷」という展覧会を観に行った。

コペルニクス理論(地動説)の普及は、活版印刷技術の登場を抜きには語れない、学者が印刷業者を兼ねていたり、云々、ぼくには知らないことだらけで観きれないほどだったが、少しだけ「日本における天文学と印刷」のコーナーもあった。その中にあった志筑忠雄(しづき・ただお/1760-1806)の著した『暦歴新書』の展示を観ていたら、「遠心力」という訳語をつくったのはその人だそうである。他にも「求心力」「重力」「引力」「加速」「楕円」といった訳語を生み出したと書かれていた。

よーく見てみると、面白いことばですよねぇ。どれも。

その当時には、まだなかったことば。"造語"だったのだろう。どんなことばも、最初につくった人がいる。ひとりでつくったのではないのかもしれない。訳だから、原文との共作、でもある。

「遠心力」「向心力」の「心」は「中心」の「心」だろうけど、いや、まてよ、「心」というのは「中心」ということなのだろうから、「心」でいいんだ。何を言ってるんだろう。

ぼくの「心」も、毎日、いろんなところへ飛んで行っているような気がする。きっと届いているだろう。

(つづく)

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「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"は、1日めくって、7月28日。 今日は、いんげんの描く線、の話。

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