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音楽のテスト

高校2年生の音楽のテストで「課題曲を先生の前で弾く」というのがあった。
課題曲は「いつも何度でも」。『千と千尋の神隠し』の主題歌だったかな。

私も一応はピアノを習っていたから、楽譜は読めるし、指も動かせる。楽譜は初心者向けのやさしいものだったから、私にとっては普通に練習すれば普通に弾けるレベル。

音楽の教室は、机の代わりに一人一台電子オルガンになっていて、ヘッドホンで自分の音だけを聴きながら各自練習する。テストは出席番号順で、呼ばれたら先生のグランドピアノで弾く。だから、テストの演奏はクラスの子に聴かれちゃう。

で私は、練習してやっぱり普通に弾けるようになったんだけど、普通に弾いたのを披露しても私がつまらないので、まるで自分が木村弓さんになったつもりになって、心の中で歌いながら弾いてみようと思った。

私は出席番号が一番最後なので、最後に呼ばれる。待つ間、次々とクラスメイトがテストを受けていく。他の子の演奏を聴いて思ったのは、ピアノが出来る子は「ピアノが弾けます」って弾き方をする。ピアノを指で弾いてる、だけ。テンポはめっちゃ速い。たぶん、木村弓さんを心に宿して演奏しようとしてるのはクラス中で私だけだな…と思った。

私の番になった。チャイムが鳴って授業時間が終わってしまった。みんなが続々と帰る中、私は先生と一対一でテストを受ける事になった。

休み時間なんですけど、という不満は浮かばなかった。私は木村弓さんなので。心を込めて演奏致します。
1音目から上手くいった。そしたらそのままずーっと上手くいった。ピアノを弾いてる事を忘れて、だけど心の中で歌ってるものがそのままピアノの音になって出てきている、と思った。凄い集中モードの中、ともに居残ってくれた友人がパタパタしながら応援してくれてるのが目の端に映った。

テストでは、一曲すべては弾かない。一番が終わったあたりの間奏で「そこまで」と言われて、クラスメイト達は終わってた。なので私はその間奏部分までしか練習してなかった。しかし先生は、私の演奏をその部分になっても止めなかった。そこで私の集中が切れて、チラッと先生を見たら「あぁ、はいそこまで」と、終わった。

先生が「いやぁ〜、落ち着いてるねぇ〜。う〜ん。」と、言った。その反応が、他のクラスメイトの時には無いものだったので嬉しくなった。

自分が卒業する卒業式の時、退場の列に並んで歩く私を見つけた音楽の先生が、笑顔で握手をしてきた。一年以上前にやった「いつも何度でも」の演奏が、先生の記憶にも残ってるんだな、と思ってまた嬉しくなった。


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