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私の推し画家Vol.3(エミール・ノルデ)

最近、読んで面白かった本に作家の村田 喜代子(以下敬称略)の押し画家本
「偏愛ムラタ美術館」三部作があります。その二作目(発掘篇)にノルデが取り上げられています。以下引用、タイトル画↑「北フリースラントの夕暮」を彷彿とさせる文章です。北フリースラントは故郷のノルデ村に近くノルデが晩年に暮らした地です。

エミール・ノルデはドイツ表現主義の初期に登場した画家だ。1867年に北ドイツ、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のノルデ村に生まれた。この地方はあの乳牛ホルスタインの原産地である。広い草原が続く酪農地帯だ。この一帯は真っ平らな野と湖の広がる低地には山というものがまったくない。

エミール・ノルデの「北フリースラントの夕暮」は水彩である。しかしこの強烈な雲の赤は一体どうやって描いたのだろう。本当に何という赤だろう。
これはもう赤という色彩の事件ではないか。

ノルデは福永 武彦の押し画家本「芸術の慰め」にも出てきます。
この本は私の愛読書ですが1970年刊行と古いので、もう古本屋か図書館でしか読むことができません。その中にこの投稿vol.1で扱ったアンソールの影響を受けていると述べています。同じ表現主義の画家同士ですからね。「ノルデの強烈な表現の中に、やはり私たちの日常生活を乗り越えて、魂を熱狂させるものを含んでいる」と書かれていますが、これはアンソールの作品にも当てはまる感想だと思います。福永氏の押し絵はこちら↓「海」(油彩)1913年

ノルデ「海」

それから、村田 喜代子は以下の興味深い事を述べています。

ノルデは水彩に和紙を使った。吸水性に富んだ和紙に水彩の絵の具がよく浸透する性質を利用して、偶然に出来るシミや滲みなど様々な表現の実験をおこなったという。それに、日本の墨絵の技法を見ているような懐かしい感じもするのである。

以前、アメリカ、カリフォルニア州パサデナのノートンサイモン美術館に行った時もノルデの水彩画に沢山遭遇しました。色彩の魔術師とも言えるやはり知る人ぞ知る画家ですね。

第二次世界大戦が勃発した頃、ヒトラーに頽廃芸術家の烙印を押されて苦労したそうですが、ヒトラーは表現主義の絵画が嫌いだったようですね。
彼の押しは古典主義とアルノルト・ベックリン「死の島」↓1880年

ベックリン

違いは明瞭とも言えますが、共に陰気な点では共通点もありそうな・・・