#34 指先から、頭まで

一週間前から同世代の学生10人くらいと石積みフィールドスクールでイタリアに来ている。今回の記事は石積みをして感じた感覚についてがテーマ。

石積み

石積みと聞くと、お城の石垣や段畑に積まれた石の擁壁などをイメージするのではないだろうか。

今回参加しているのは、お城の石垣のような隙間なくきっちりと積まれた石積みではなく、斜面地の段畑等で見られる土留めとしての”空石積み”を実践するフィールドスクールだ。”空石積み”とは、モルタルなどの接着剤を使わずに、石だけを使って積んだ石積みのことを言う。

斜面地に耕作するためにはある程度平坦な土地が必要になるが、段畑の石積みは、平らな土地を作る時に土から出てきた石を活用して積んでいるので、見た目の美しさというより土留めとしての機能が重視される。

空石積みの構造を理解して、いつくかのポイントを押さえれば誰でもできる(もちろん熟練した職人と素人ではだいぶ差があるが)シンプルで、ずっと昔から続いている技術だ。

簡単に構造を説明すると、図のようになっている。積み石の背後に小さなぐり石がある。積み石は重心が少し斜面方向に下がるように置かれている。

図1:空石積みの構造(今描いた)

雨が降るとぐり石のあいだを水が抜けるので、土圧がかかりすぎて崩れることもない。※コンクリート擁壁の場合は水の行き場がなくなってしまい崩れてしまうことがある。

写真1:二年前に積んだ所の現在の様子(2019)

写真1は前回のフィールドスクールの時に積んだところ。二年経って草が生え、自然に馴染んでいた。(きちんと積めていれば300年は持つらしい)

写真2:二年前に積んだ所の積み終わり直後の様子(2017)

手仕事の感覚

まだまだ色々書けることはあるが、石積みについて書きだすときりがないので、基本的な紹介はこの辺りにして(詳しくは下の参考リンクを見てもらうとして)、本題の「手仕事の感覚」について書いてみる。(「手仕事」と書いたが、身体全体を使う仕事といっても過言ではない)

”感覚”を言葉にするのは難しいのだが、石積みをしていると都会での日常生活では意識しない感覚をおぼえる。一言で表すなら、”集中”や”没頭”という言葉が当てはまるのだろうか。集中してやろうと意気込んで作業に取り掛かるわけではなく、いつの間にか集中している。(フロー状態に近いかもしれない)

実際に作業している時は常に頭と身体を”同時に”使っている。例えば、適当な積み石を探す・整形する、ぐり石を裏に詰めるのを忘れないようにする、作業しやすい場所に石や道具を置くようにする、全体の状況によって担当する作業を替えるetc.

恐らく、”同時に使う”というのがポイントなのだと思う。普段の生活では、何も考えていないつもりでも無意識に何かを考えていたり、頭の中で言葉をつぶやいていたりする。電車を待ちながら、歩きながら、食べながら...頭の中とその時の行動が一致していないことが多々ある。

石を積んでいる時に他のことを考えずに集中・没頭していられるのは、頭と身体の動きが一致しているからなのだろう。

頭でっかち

頭でっかちになると、視野も心も狭くなる。(大事なことを見落としていたり、余計なことに反応してしまっていたり)

普段の研究室と家を往復する生活は、座ってPCに向かっているか、本を読んでいるかがほとんど。いつの間にか頭でっかちな生活習慣になっていたみたいだ。週3くらいでランニングをするものの、たかが15分程度。時間がないなんて思うこともあったけれど、生活の大半を頭でっかちの状態で過ごしていることに対して危機感を感じた。

朝から夕方までずっと石を積んでいる今の生活では、以下のような気づき・感覚があった。

・日本にいるときと同じくらい、またはそれ以上にアイディアが浮かんだり、メモを書いている。

・前から心がけているつもりだけど、より一層目の前の自然を、小さな変化を見逃さないようになる。今日は雲の流れが速いなとか、雨のにおいがするとか、石積みがあるとことにはトカゲがいっぱいいるとか。

・全然わからなかったイタリア語が、少しづつ聞こえるようになってくる。(フランス語と似てるからというのもあるけど)

この状態がとても心地良い。

・・・・・・

これから論文を書き上げる時期になるにつれて、デスクワークが増えることは確実。頭と身体はつながっている。だからこそ、そのバランスを意識するように心がけよう。

頭と身体のバランスを心がける、といっても実際どんなふうに行動しようか。帰国後に振り返れるように行動指針としてメモしておく。

・朝昼夜、必ず一度は外の景色を見たり歩いたりして、頭をリセットする。
・毎日でなくても、料理をする。食べ物をちゃんと味わう。
・これらをやる気を出さずともできるように日々の予定や行動を管理する。

今日はこの辺で。明日はいよいよ石積み作業の最終日。ちょっと寂しいけれど完成が楽しみ!

参考リンク

詳しくはこの本を参照

前回の様子は、以下旅の記録としてまとめている



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

4

Haruna

ランドスケープ、農村景観、都市計画などに興味をもっている大学院生。2018-19年フランス・ベルギーにインターン留学していました。旅すること、写真、読書が好き。読書の記録:https://booklog.jp/users/harunabe18

思考のメモ

日々ふとあらわれ消えていく、感情・気づき・考えのストック
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。