FILE 11 決意  036

 あの日、洞窟から出てきたあと、あまりにも混乱して動揺した私たちはしばらくその場から動くことが出来ないままでいた。
「これから、どうすればいいんだろうか? 一体、何が起こったんだろうか」
 どこまで歩いても携帯はつながらず圏外のままだった。なんとか大きな道に出ると、キヨさんに電話をかけた。
 三回の呼び出し音のあと、回線は繋がった。

「はいはい」
「キヨさん?」
「ん? なんかー、あんたねぇ? なんね? 洞窟はどうね?」
 キヨさんのいつもののんびりした口調を聞いた途端、ホッとしたと同時に涙が出てしまった。
「時間のポケットに、落っこちたのかも知れないさ。どういう意味があるのかねぇ」
 電話の向こうで、キヨさんは面白そうに、楽しそうにつぶやいていた。

「私はなにをすればいいの? 世界の崩壊を止めるために、私はなにをするべきなの?」
「なぜ、お前たちがそのようなヴィジョンを見せられたのか、それを考えてごらん」
「キヨさん、私はその教団を探し出して、陰謀を止めなくちゃならないの。私はなにをすればいいの?」
「なぜお前にその夢が来たのだと思う? 直接的に止める行動をしてほしいからじゃないさ」
「でも、直接じゃない行動ってなに? わからないよ。」
「泣いてたって、なにもわかりはしないさ。夢はお前になにを語りかけている? 自分の中に深く入り、それを理解しなさい。
 お前にできることは、内なる存在と語り合い道を探し出すことだ。行動していることで、自己満足に陥ってはいけない。
 お前は沖縄を離れることを選んだのだろう?
 次は、なにをするんだい? うまれ育った土地で、お前の命をかけてでもやること、それをもうお前はつかんでいるだろう?」
 そこまでしか、私はキヨさんの話を聞くことはできなかった。電話を芳明に変わってもらい、座り込んでいた。芳明とキヨさんはしばらく話し込んでいたが、私の耳にはなにも入らなかった。

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