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遠くの雷鳴、橙の日差し

風が強く吹いてきた。自分自身には風は当たらないが、木々は激しく音を立て始める。

強く差すオレンジの日が私のものともわからぬくらい、影を細く長く伸ばす。

遠くの雷鳴がくぐもった音で聞こえてくる。
だんだんと薄暗くなって、グレーとオレンジが混ざって濁る。

雨の匂いがし始める。水を含んだ重い空気が肌にまとわりついて、皆の帰路の足を速める。

この瞬間がとても好きだ。
晴れも雨も心底嫌いだが、晴れと雨の僅かな狭間には心が躍るのを感じる。
ワクワクして、いつもなら避ける、日が差すバスの右側座席に飛び乗ってしまった。
暴れる街路樹と見え隠れする太陽を交互に見つめている。

そういえば、幼い頃から雨の日の外出は嫌いだが、大雨の日に大きな窓から外を眺めるのは好きだった。
嫌な雨を、雨から守られた極めて安全な部屋の中で楽しむのだ。不思議な優越感に浸れる。風邪をひいた日に学校を休んで9時台のテレビを見るのが好きなのも同じ理由かもしれない。

遠くの雷鳴が楽しいのもそういうことだろう。

でもこんなことを書いているうちに、雨が強く降ってきて、バスもあと2分で降りなければいけないから今はもう地獄みたいな気分だ。

#エッセイ #雨

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