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第3話 クレイジーなボーイ ミーツ クロワッサン

前回の話はこちらから💁‍♀️

第2話 出来立てクロワッサンとおばあちゃんのお話


「行ってきまーす!」

今日もいつも通り、バタバタとしながら1日のスタートを切る。

いつもは一個しか持っていかないパンを、今日は3つも持っている。朝ごはん用の食パン一切れに、クロワッサンが2つ。

クロワッサンは、昨日おばあちゃんがつくってくれたもの。
今日の放課後でっちゃんに会うから、そのときに渡すのだ。


でっちゃんと私は同い年。だけど、でっちゃんは高校に通っていない。
たくさん本を読んだ結果、高校には行かなくていいという結論に達したらしい。そして今は、お菓子会社を起業しようとしているらしい。
なかなかクレイジーなボーイだ。


私は授業時間の大半を妄想に費やし、昼休みになったので中庭へと向かう。
ここで日光浴をするのが日課だ。
中庭の真ん中に植えてある楠木が、今日もサワサワと揺れている。
「あなた、今日も美しいのね。」
そう語りかけると、楠木も、ざぁーっと揺れて答えてくれた。


午後の授業の大半も、やはり妄想に費やした。




ー放課後ー


「んー、事務所兼家。 トイレが2個あるんだぜ!」

「そう、トイレが2個あるからなー。」

「いやもうトイレ2個だからさ!」

「……分かったよ!!!」

さと子は今、お菓子会社の方はどうなっているのかでっちゃんに聞いていたはずなのだが、いつのまに事務所にする予定の家にトイレが2個あるという自慢を永遠と聞かされていたのであった。

「で、その家の最寄りはどこなの?」

「いや、わかんない。」

「…わかんないの?」

なんなんだろう、このクレイジーなボーイは。


とりあえず、クロワッサンを渡す。

「はいこれ。おばあちゃんが作ったクロワッサン。」

「ありがとう!いただきまーす!…うゎっうっっっま!!!これはお店出せるって〜」

「あ!それね!私も昨日おばあちゃんに言ったんだ。そしたらけっこう乗り気でさ♬」

「ほうほう。」

「キャンピングカーで旅しながら売ってもいいね〜♡とか、お店はツリーハウスにしちゃってもいいよね!とか、色々妄想が膨らんでたんだ〜♬」

「それめっちゃいいね!!」

「でしょ??この妄想で何ヶ月かは生きていけるわ♬」

「それ、本当にやろうよ。」

「え?」

「クロワッサンは焦げやすいのにこんなにうまく焼けてるってことは他のパンも相当美味しいはずだから、いけると思う。キャンピングカーで旅とか、俺昔ユーチューバーやってたからその様子を動画で撮ってあげることも出来るし。」

「……え?」

「やろうよ。さと子のパン屋さん。」


…目の前の人は、何を言っているのだろうか。さっきまではルンルンとしていたのに、今は驚きで言葉が出ない。
でも、お腹の下で何かがぐつぐつとしているのを感じている。これは、ワクワクというのだろうか…?

感情が忙しく動くこの状況で言えることは1つ。

やはりでっちゃんは、クレイジーなボーイだった。。。



つづく

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パンをこよなく愛する高校2年生のさと子さん。パンを作るのが趣味なおばあちゃんと二人暮らし。それが、ある日、パン屋さんをやることに…?!気まぐれ更新中🍞

望月遥菜が書く初の小説です。

「さと子のパン屋さん」一覧はこちら

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