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#美しい髪 コンテストでグランプリを頂きました

金メダルを取ったことが、これまでの人生で一度だけあった。

あれは中学2年生のとき、縄跳びの持久跳び大会だった。私は運動が得意なタイプでは決してない。チームワークが求められる球技や、記録の優劣を数字で突きつけられる陸上競技や何かも苦手。体育の授業は好きじゃなかったし、それまで運動会や体育祭などで活躍したことなんて一度もなかった。

だけど、自分のペースでできる縄跳びはそんなに嫌いじゃなかった。とはいえ、得意と呼べるほどの実力があるわけでもない。

だから、その年の持久跳び大会で、最後のほうまで運動神経のいい子たちに混じって跳び続け、ついに自分が最後の1人になったとき、自分も含めて周りの誰もが驚いたと思う。

残っている人数が少なくなるにつれて、自分がいつもの自分じゃないような感覚になった。注目されたり目立ったりするのは苦手で、ごくごく平凡な私が残っていることに居心地の悪さも少し感じていた。

それでも頑張りたい気持ちが勝って跳び続けた、あのときの私。

最後まで競っていた相手が脱落して1人になると、本当はもう少し頑張って跳べそうな気がしていたけれど、私は限界より少し手前で、跳ぶことをやめた。みんなが私だけを応援してくれている状況がもったいなくて、体力的なことよりそっちのプレッシャーに耐えられなかった。

表彰式では、自分に不相応な金メダルを首に掛けられ、何で私がここにいるんだろう、と不思議な気分がずっと抜けず、どうにもばつが悪かった。

今回のグランプリ受賞について何か書こうと思ってnoteを開いたら、そんな昔の自分を久しぶりに思い出した。

「美しい髪」というテーマを見て、今お世話になっている美容師さんと出会えた喜びについて書きたいと思い、自分なりに気持ちを込めて「魔法の手」というタイトルのエッセイを書き上げた。

私の投稿作品はテーマも文章的な技巧も至って普通だし、読んだ人が全員スキを押したくなるような面白い読み物ではない、ということは重々承知している。もっと感動的な作品も、展開に引き込まれる作品も、文章が巧みな作品も、他にたくさんある。

期間中、PICK UP作品の1つとして取り上げてもらえてはいたものの、特にスキの数が爆発的に増えるようなこともなかった。締め切り直後のスキの数は20数件。それでも私にとってはかなり多いほうで、読んでもらえて、スキまでもらえて、それだけでも本当に嬉しかった。

コンテストの結果発表を知る直前、noteからの通知がハイペースで届き、ふだんはそんなことがないので何事かと思った。一体何が読まれてるんだろう…と確認すると、コンテスト参加作品へのスキの通知だった。

そういえば12月中旬に結果発表だったと思い出し、まさか入選できたのかな…とドキドキしながら結果を見に行くと、自分の作品がトップに現れ、本当に驚いた。そんなバカな、何かの間違いでは、というのが最初の感想だった。

特別賞には選評があり、審査員の方がなぜその作品を選んだかがよく分かる。でもグランプリと準グランプリには個別の選評がなくて、結果発表の記事を最後までスクロールしても、なぜ自分が選ばれたのか分からなかった。

驚きと、混乱と、嬉しさ。その気持ちを率直にツイートすると、ありがたいことにミルボン公式さまより、こんな返答やご紹介を頂いた。

まずタイトルの評価がすごく高かったとのこと。もしこのタイトルにしていなかったら、選考対象にすら選ばれていなかったかもしれない。応募総数851作品…という数を考えると、タイトルで引っかかって(?)読んでもらえて、本当によかった。

文章を褒めていただけたことも、元気になると言ってもらえたことも、飛び上がるほど嬉しい。今回のコンテストの審査員の方々が、私の選んだテーマや文体を好ましく思ってくださったことが、本当にありがたいなと思う。

一方、内容的により多くの人の心に刺さった作品は間違いなく他にたくさんあって、そういう作品を書き上げた人たちはきっと書き手として注目され、これから周りがどんどん動いていくのだと思う。

私は、あの持久跳び大会で金メダルを掛けられたときと同じだ。今回だけ、たまたま、ラッキーで。

それでも一人、静かに嬉しさを噛みしめる。

書きたいことをなるべくシンプルに、伝わるように、そしてできれば1人でも多くの人に読んでもらえるようにと書き上げた作品を選んでもらえたことが、純粋に嬉しい。だから、数々の素晴らしい作品を前にしても、自分を卑下せず、素直に結果を喜べる。

中学時代の私は、あまり自分のことを認めてあげられなかった。だから今回の自分自身の反応に「ああ、大人になったなあ」と少し感慨深くもなったりしている。実際、たまたま結果発表の日に、私はまた年を重ねて1つ大人になった。そんな日に頂いた今回の受賞。本当に、忘れられない贈り物を頂きました。

あの持久跳び大会で、自分も含めて誰に期待されることもなく、それでも跳ぶことをやめなかったからこそもらえた金メダルも、本当はやっぱりすごく誇らしかった。

これからも、自分なりに表現したいことを丁寧に書くことを、やめないで続けていこう。

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