笑顔と涙のうしろにあるもの

一緒に住んでいる彼は、とにかくスポーツ観戦が好きだ。オリンピック期間中は、テレビの放送スケジュールを事前にばっちりチェックして、毎日何かしらの競技を熱心に見ていた。

私はそこまで興味がないのだけど、自動的に一緒にいろんな競技を見ることになる。ながら見のつもりが、やっぱり見始めると一流の選手たちの素晴らしい活躍に目を奪われて、楽しそうな彼にもつられ、じっくり見てしまうことも多かった。

先日、カーリング女子の3位決定戦を見ていたときのこと。

カーリングは競技時間が長く、私は締め切り前の仕事も抱えていたので、ずっと集中して見てはいなかった。それでも連日見てきた中で、ルールも何となく分かってきて、正確なショットが決まったときの興奮や予測できない展開の面白さも徐々に感じ始めていたので、興味はかなり出てきていた。

何より私の心を掴んだのは、日本の選手たちの雰囲気だった。

彼女たちは、オリンピックという大舞台での試合中なのに、とにかく何だか楽しそうに見えたのだ。こんなににこやかに、いい意味で「普通に」しゃべりながら競技をするスポーツがあるのかと、最初は少し衝撃を受けた。でもその「ゆるさ」が、何だかすごくよかった。

試合中に「そだねー」などの和やかな声かけが飛び交ったり、ピクニックみたいなおやつタイム(1試合が3時間前後におよび、頭脳戦でもあるため糖分補給が必要とのこと)になると、あまりにも微笑ましくて何だか癒やされてしまった。カーリングって、いわゆる「競技」っぽくないなあ、なんて思っていたのだ。

あの瞬間までは。

イギリスの選手のミスショットで、日本の銅メダルが確定した直後。

試合中ずっと、あんなにしゃべって、笑っていた選手たちが、みんな言葉もなく長い時間抱き合って、ただただ泣いていた。お互いをひしっと抱きしめて、ぎゅっと目をつむって、静かに泣いていたのだ。言葉は聞こえてこないのに、彼女たちのいろんな感情が聞こえてくるようだった。

それを見てやっと、彼女たちの感じていたプレッシャーや、これまでの努力の重さを知った。そして、試合中にはそんな素振りを見せないようにしていた彼女たちの強さに気づき、もらい泣きしてしまった。

そのあとのインタビューも、最高だった。インタビュアーが1人1人に指名して質問し、誰かが答えているときも、ほかのメンバーが普通に相づちをうったりするのだ。彼女たちのそういう雰囲気を、やっぱりいいなあと思った。

インタビューの最後、まるでビデオレターのようにカメラに向かって笑顔で手を振りはしゃぐ彼女たちを見て、自然と笑顔がうつってしまった。あの笑顔のパワーはすごい。カーリングへの情熱と、仲間への信頼と、感謝の気持ちと…いろんなものが詰まっている強くて柔らかい笑顔だ。

すごくいいものを見せてもらって、胸がいっぱいになった。私ももっと、頑張ろう。そう思わせてくれる人を、私は心から尊敬する。

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明日はもっといいことがありそう
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はるのひ

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