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客が消えたミャンマープラザ

ヤンゴンで最も人気のあるショッピングモール、ミャンマープラザを訪れたが、客が異様に少なかった。これからのクリスマスセールに向かって多くの店舗は開いていたが、客よりも店員のほうが多いほどだ。陽気なジングルベルのメロディーが人のいない不気味さを余計に引き立たせていた。

店内で抗議活動の若者たちを拘束

ベトナム資本のショッピングモールであるミャンマープラザはヤンゴンで最も人気のあるショッピングモールと言っていい。悲惨な地方でのニュースをよそに、最近のヤンゴンは一見日常を取り戻しつつあるように見える。その中でもミャンマープラザはクーデターのことなどすっかり忘れてしまったような特殊な空間だった。

異変が起きたのは11月25日だった。買い物客で賑わうミャンマープラザで女性を含む数人の若者たちがプラカードを持って店内を歩いていた。クーデターを起こした軍への抗議活動だった。それを咎めた警備員たちが彼らを捕まえ暴行を振るった。彼らはその場で一時拘束されたが、しばらくして解放された。

動きは早かった。若者たちの拘束のニュースがたちまち広がり、くすぶっていた人々の怒りに火を付けた。ボイコット運動が自然発生的に生まれた。タクシーでミャンマープラザに行こうとしても、運転手は乗車拒否をする。ミャンマープラザに出店している店も次々と一時閉店を発表した。ミャンマープラザはFacebookページに謝罪のメッセージを発表したが、人々の怒りは収まらなかった。

事件が起きてからもう1ヶ月近い。Facebookページに出した謝罪メッセージもいつの間にか消えていた。ボイコットがまだ続いているのかミャンマープラザを訪ねることにした。

客が消えた店内でクリスマスソングが響き続ける

大通りに面した入口は閉じていたので正面玄関へ向かった。そこには兵士の姿は見えなかったが、どこかで監視しているかもしれない。ちょっと緊張しながら入口に向かった。そこに警備員がいたので、店が開いているのか尋ねた。

「はい、多くの店が開いてます。はい!!」
警備会社あるいはミャンマープラザからの指導であろうか、客への対応がちょっと行き過ぎではないかと思えるほど丁寧だった。

一歩足を踏み入れて驚いた。客がとても少ないのだ。普段の1割もいないのではないか。店内はクリスマスを控えてサンタクロースも応援に来ていた。店舗も8割くらいは開いている。しかし、人の声が聞こえてこない。ゴーゴーと唸る空調に、カタンカタンと鳴り続けるエスカレーター。そこに、陽気なクリスマスソングが響いている。人が突然消えてしまったSF映画の世界に入ってしまったような気がした。

日本人の中にはヤンゴンは日常が戻ってきたと言っている人がいると聞く。しかし、その日常はミャンマープラザのようにかりそめの日常だ。

参考
The Irrawady
Shoppers Boycott Myanmar Plaza After Attack on Anti-Regime Protest


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